駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

多様性を味わう

2019年02月23日 | 町医者診言

                          

 

 一時醤油顔とソース顔と見た目で分けるのが流行った。七三か六四で醤油顔のほうが多いようだ。違いには遺伝子的な要素が大きいと思われるが、それが何時頃何処から来たかはよく知らない。南から北からそして中ほどからやってきた人たちが混在しているはずだ。おそらく相当詳しいところまで分かっていると思うが、微妙なところがあるのか定説となっていないのかさほど世間には知られていない。

 系統混血があるにしても、日本が同質的で同調を志向(嗜好)する社会なのは間違いない。しかし、それでも実は地方の特色というか県民気質というか微細で細々した違いが溢れている。テレビラジオで言葉の違いは少なくなってきたようだが、地域地方で色々な違いがあり、みんなそれを認め楽しんでいるところがあると思う。私は美濃で育ったので蕎麦にはあまり馴染みがなかったのだが、長じて東京で十年ばかり暮らし蕎麦好きになった。しかし味噌だけは八丁味噌から抜けられない。八丁味噌が天下を制していると思っていたのだが、実はマイナーなのを知って愕然としたものだ。今でもよくまあこんな味のない味噌汁をみんな飲んでいるなあと心の底では思っている。

 科学的根拠などと言いだすと飛躍しすぎで行き過ぎかもしれないが、違いがあるからこそエネルギーが生まれ生命が生まれてきた。勿論、俺の考え私の選択を認めるけれども他人にも同意を強いるのは行き過ぎで争いの始まりと申し上げたい。

 五十九歳になられた皇太子殿下が多様性を認める次代をとの見出しを読んだ。こうした規範に恵まれたのを僥倖と感じている。

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秘伝相伝で伝わるもの

2019年02月22日 | 医療

            

 

 一子相伝とか愛弟子への秘伝とかいうものがある。その内容には実は戒めが多いのではと思う。

 もう五十年近い昔のことだが親父に老人の浣腸は慎重にするんだよと教えられた。多分問題を起こした経験があったのだろうと推測している。それで高齢者の浣腸は炎症や閉塞のないことを確認して少量で行うようにしていた。その他にもいくつか注意しなければならないことを教えてくれた。それを憶えていたために研修医の時に子宮外妊娠を診断して、若いのによく分かったと上司に褒められ、婦長に絶賛されたことがある。今のように画像診断のない時代には気が付かないと診断が難しく、見逃すと大変なことになる病気だった。

 高齢者に立位で浣腸するなどというのは論外の不手際だが、高齢者の浣腸に伴う事故は今までも時々あったのではと思う。三十数年前、総合病院時代に外科系の若い医師が浣腸で事故を起こしたのを看護婦情報で聞いたのを憶えている。上司の目が行き届いていなかったのか、忙しすぎたのか、自信過剰だったのか、よく分からないが経験不足だったのは確かだ。

 最近の臨床研修をよく知らないが、昔は研修医の仕事ぶりには上司が目を光らせて、しばしば厳しく指導したものだ。実は臨床で一番大事なことは教科書には書いてない。それは初歩的な間違いの数々で、こういうことをしてはいかん、こういう時にはAやBを忘れるなと頭に叩き込むことなのだ。そして公言できない失敗を後輩にはそっと教えてくれた。七,八年前から低血糖は脳機能に不可逆的な損傷を与えると、糖尿病学会も高齢者の血糖コントロールは緩和してきているが、そんなことは私は四十五年前から知っていた。研修医の時N先生がこういう経験をしたと低血糖の怖さを教えてくれたからだ。以来自分も低血糖には細心の注意を払い、回ってきた研修医にも教えてきた。

 こうした上司から手足を添えた相伝というべき教えは、教科書で学ぶ何倍も有効で臨床というものはそうやって伝え磨かれてきたと確信している。こうした人間が人間に相対して伝える知恵と経験はこれからもその価値を失わないと思うが、なんとなくこれからの現場ではそうした伝承は希薄になってゆくのではないかと危惧している。

 不肖私にも私を師と慕ってくれる後輩が何人も居るのは有難いことだ。今の時代にもそうした関係は失われて欲しくないと思う。

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文脈ではまやかせない

2019年02月21日 | 小考

     

 

 四十代を過ぎてからは若く見られることが多く、自分でも年齢よりも若いと感じていたのだが七十に手が届いた途端、見た目は若くても体力は年齢相当に落ちてきたと感じている。何とか体力を維持すべくあの手この手を構想しているのだが、気力も衰えてきて机上の空想に留まっている。暖かくなったら何とか一歩を踏み出したい。

 詭弁というか俺は悪くない病というか旺盛な敵愾心からポロリと出た本心を文脈の中ではたった十秒、大した意味はないと言い張る人が居られる。私は外遊業だからそれこそ旅行バッグには百種類を超える細々した品々が詰まっている、底の方に鋭い千枚通しが入っていてもそれは数多い備品の一つに過ぎない、別室に呼んで取り調べるとは何事かと怒る人を、あら捜しばかりする奴が居てと取り巻く人達に三分の理があるとしても、失礼しましたと見過ごしてよいとは思われない。

 確かにこの国には異論悲観非難を嫌う傾向があり、それが有用有効なことも有るのだが、過ぎると大間違いが起きるのは歴史の教えるところ、夏蜜柑やポルノ写真ならともかく千枚通しともなれば、百五十の品の一つと見逃すわけにはゆかない。大騒ぎすることではないが、茶番とお茶を濁すことではないと思う。本心が出たと読める。

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何故公表するのだろう

2019年02月20日 | 世界

      

 

 芸能人やスポーツ選手が「がん」を公表する。何故だろう。芸能人はともかくスポーツ選手もプライバシー公開を仕事の一部としているのだろうか。「がん」は二人に一人が罹り、三人に一人は「がん」で死ぬ時代だ。珍しい病気ではない。それに「がん」は多種多様で、「がん」と言われても旅行に行くとか試験を受けると同じくらい漠然としていて、特定の反応や対応は難しいように思う。多くの人に知ってもらい応援や慰めを力に闘病生活を頑張ろうということなのだろうか、贔屓や応援してくれた人に報告するのが礼儀と感じるのだろうか。

 個人的には病気はプライベイトなことなのでそっとしておいてあげるのがいいように思うし、自分であればそっとしておいて欲しいと思う。家族や本当に親しい友人だけに知らせたい。

 骨髄バンクが急に注目を集めているようだが、骨髄バンクがどういうものかちゃんと理解しているのだろうか。好意を逆なでするわけではないが、骨髄バンクに関わってきた人達の仕事や実際に骨髄を提供した人達の重みや深みに気付き慮った上でのことだろうかと聞きたくなる。

 アメリカは欠点や問題が多い国ではあるが、アメリカに渡って臓器移植を希望する日本人にも提供してくれる。それを日本の人はどう考えているのだろう。例えば韓国の人が日本に骨髄移植のためにやってきたらどのような反応が起きるだろう。骨髄バンクへの興味が一過性の言葉はきついが浅薄なものに終わらないように願う。

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みんなで考えたい近未来

2019年02月19日 | 小考

     

 

 ちょっと下火?のようだが十年後二十年後にはAIが世の中を動かすようになっているというような報道意見が多い。果たしてどの程度かは難しいが、AIが今の何倍何十倍もの仕事をするようになることは、新井紀子先生もお認めになるだろう。

 そうなった社会がどんなものか、自分の目で見届けられるか覚束ないが、ある程度の予想は可能だ。それは過ぐる三十年を思い出して辿ってみればわかる。コンピュータ関連の進歩は加速度的だから三十年で起きたことがこれから十年くらいで起きる可能性は大きく、二十年三十年後の予想は難しい。

 ただまあ確かなことは人間は大して変われないということと、おそらく十年後もAIと人間の主従関係は辛くも逆転していないだろうということだ。唯、主従関係は保たれていてもAIの能力が数多くの分野で人間を凌駕しているだろう。
 人間が優位を保てる分野もいくつかあると思うが、残念ながらそれは一部の人だけで多くの人間はあらゆる場面でAIに敵わなくなっているだろう。過去の歴史に学ぶことのできない変化が起きてくる可能性もある。そうした近未来で人の能力と価値がどう変わるか社会がどう運営されるようになるか懸念している。これは有識者だけの問題ではなく、すべての人が考えたい問題だと思う。

 閑話休題、二階さんというのは融通無碍に過ぎると思うことも多いが、政治判断に長けた政治家だと思う。韓国の議長の暴言というか空言などまともに反応する必要がないというのは真にその通りだと思う、

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