紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

詩の中の風景

2007-09-03 23:57:08 | 読書
 近年、詩の世界の大御所が相次いで亡くなった。茨木のり子、吉行理恵、吉原幸子、そして石垣りん。詩の世界は月世界のように、ぼこぼこと穴だらけの世界になった。

 石垣りんさんが編んだ詩のアンソロジーで『詩の中の風景 ーくらしの中によみがえるー』(婦人之友社)という本がある。上段1/3くらいに小豆色の文字で詩が並び、下段2/3くらいに、上段の詩に対する石垣さんの感想や思い出や解説が書かれている。薄めのあっさりした本だが、中味は濃い。ときどき思い出したように、職場の図書室で借り出して読む。

 中でいちばん好きなのは、山村暮鳥の『ある時』という詩。

わたしはうやうやしく
いつものやうに感謝をささげて
すうぷの椀をとりあげました
みると
その中におちて
蠅が一ぴき死んでゐるではありませんか
おお神様
じやうだんではありません


石垣さんは、「なんべん読んでもおかしい」詩として紹介されているが、私もなんべんよんでもわらってしまう。

ものすごく質素な食事に対し、慇懃に感謝の祈りをささげ、いただきます、と敬虔な気持で空腹を満たす心の準備をし、清らかな気持で箸をとると・・・

ん? 

ハエじゃん!?

作者の後ろに「こまわりくん」のような顔をして、いまにも爆笑しそうになるのを必死で堪えている「神様」がいるような。

おれのせっかくの「うやうやしい感謝の祈り」をどうしてくれる!?と、いう気持をぐっと押さえて「じやうだんではありません」と控えめに非難する作者がまた可笑しい。

でも神様はすずしいカオをして、「まだまだ信仰が足りんのう~」とか言ってたりして。「ヨブを見よ」とかね。

笑えて深い。山村暮鳥、えらい!