紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

らもと道連れ

2007-09-27 23:54:38 | 読書
 中島らもの最新刊『ャPットが一杯だった頃』(白夜書房)を注文買いした。らものファンでもないのに、なぜ単行本未収録原稿のエッセイや対談を集めた本を買ったのか?

 それは山岸涼子先生との対談「超大作『日出処の天子』は何だったのか?」があったからに他ならない。もちろん私は超大作『日出処の天子』は繰り返し読んだクチである。最後の方は単行本になるのが待ちきれず、少女漫画誌『LaLa』に掲載されているのを毎月出るのを首を長くしては買って読んだ。

 しかも、主人公である厩戸王子(うまやどのおうじ=後の聖徳太子)の悲劇的な結末に納得できず、山岸先生に「先生が甘いハッピーエンドをお嫌いなのは知っておりますが、そこをなんとか王子を幸せにしてあげてはいかがなものでしょうか」と懇願する日本中の『LaLa』読者のひとりでもあった。

 対談を読めば、あのシビアな山岸先生も王子はせめて恋愛面だけでも成就させてあげればよかったかも、というようなことをおっしゃっていたので、それだけでもうれしい。たとえハッピーエンドに描き直されることがなくても、ハッピーエンドもありか、と作者が思っているとわかっただけで「王子、よかったねっ!!」と幻の結末を思い描いて喜んだのである。

 中島らもがこの本で対談しているのは山岸涼子先生の他に、藤原新也、南伸坊、石毛直道、田村隆一という、錚々たるメンバーである。文句のつけようがない。誰一人外れないどころか濃いキャラばかりなのに、すごいバラエティである。凹凸のはげしい山道をマウンテンバイクで疾走するようなエキサイティングな対談のかずかずである。

 だが私が思うに、中島らものファンがこの2千円以上もする本を買うのは、付録目当てかもしれない。私のように見境無く注文してから、げっ、2381円プラス税!?とかいう、うかつなことはしないだろう。それも、よくわからないままに購入した高額な本に付録がついているのを知ったのは、購入した翌日という迂闊さである。

 その目玉らしき付録とは、CD。それもタダのCDではない。秘蔵音源・FM大阪『月光通信』らものラジオコント30本収録、というものらしい。うっかり迷い込んだ小径の果てに、偶然心そそられる建築物に行き当たったようなラッキーさである。

 ところで3年前、中島らもが階段から落ちて亡くなった、そのほんのしばらく後に、イシオカ書店の店長も亡くなった。中島らもと前後して亡くなられたという偶然は、実はすこしばかり私の心を軽くした。旅立ちの道連れに中島らも、というのは、いかにも店長に似合ってる気がしたからだ。

 そういえば、世を拗ねた感じ、とことんゴーイング・マイ・ウエイな生き方、突き放すような醒めたような、それでいてピュアで、「あかんやろ~そんなことしてたら」といつまでも言われそうなとこ、似てるのかもな。意外に天国の方が合っていて、打って変わってにこやかに上機嫌で過ごしてるのと違うやろか? なんせ「酒はうまいしネーチャンはきれい」なとこやからな、天国っちゅーとこは。