今となっては秋葉原の大通り沿いのでかい店でもフィギュアを買い求めることができるようになった。
フィギュアは一般人でもすぐ目にするところに置かれるようになった。
しかし!
そうなったのはさほど昔の話ではない。
フィギュア趣味の意味も大きく様変わりしたし、フィギュアそのものも今と昔では全く違ったものが売られていた。
今日はそんなかつての過ぎ去った時代のことについてだ。
かつてフィギュアはかなりマイナーな存在だった。
かなり重度のオタでなければ手をださなかった。
あるとき、それが突然くつがえる時がやってくる。
それは、ときめきメモリアルというゲームによるものだ。
このゲームは恐らく登場人物の女の子に惚れるということを第一のプレイスタイルとした史上初めてのソフトだろう。
そしてこのプレイスタイルは今まで美少女オタでなかった多くの者たちを転落させることに大成功をおさめた。
かくいうわたしも転落した1人である。
さて、ときメモはキャラクターグッズが多いのでも有名だった。
そして今でいうベタな展開の1つとして、キャラクターフィギュアも販売された。
それまでアニメやゲームのキャラクターフィギュア市場は大して大きくはなかった。
ところが、それまでとは桁違いのファン層を誇るときメモがフィギュア化されたことで事情が変わる。
オタとしてはライトユーザー程度の者の間でもフィギュアが突然有名な存在として輝くようになったのだ。
ところが、突然市場が急拡大したおかげで、市場ではこれまで起こり得なかったトラブルが続出することになった。
今はフィギュアを買うとちゃんとしたものが手に入る良き時代であるが、実はかつてはそうではなかった。
当時は、フィギュアの箱を買うと色も塗っておらず手足がバラバラで梱包されている半完成品が入っている時代だった。
それがあたりまえだった。
(ちなみにそれは、見慣れていないとショックを受けかねないほど不気味なシロモノである)
しかし、ときメモから目をつけたユーザーたちはそんなこととは毛ほども思っていなかった。
フィギュアの箱を買えばちゃんと塗装されて組みあがった完成品が梱包されているのがアタリマエだと思っていた。
そして箱をあけたあと、色も塗っていないバラバラ死体が入っていることにビックリ仰天し、
「なんだこの色も塗ってない未完成なもの売りつけやがって!」
と、光の速さで買い求めたフィギュア屋に文句を言いにいくのである。
さらに時代をさかのぼると、これと全く同じことが実は既におきたことがあった。
ガンプラ黎明期である。
あたりまえだがガンプラとはモビルスーツの半完成品を組み立てて遊ぶ漢の趣味である。
ところがガンプラ黎明期にはそうは思わない人たちも少なからずいた。
そうは思わない人たちとは、シャア・アズナブルが大好きなオタ女(いまでいう腐女子)たちである。
彼女らは、シャア専用ザクのガンプラを買うと、シャア専用ザクとシャア・アズナブルの両方が入っていると信じて疑わなかった。
そして買い求めたあと、
「シャア様が入ってないわよ!」
と模型屋に文句を言いにいく。
わたしの記憶によれば、すでに当時のシャア専用ザクのガンプラの箱にも
「シャア・アズナブル少佐は入っていません」
との注意書きが記されていた。
それが書いてあるのを見つけた少年たちの間では
「入っていると勘違いするヤツがいるのかよ(笑)」
と笑いのタネになっていたが、実はそうではなかったのだ。
先のフィギュアの事件もそれに近いものがあるような気がする。
(次回は半完成品をどうするのかについて、続く・・・)