教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

AIJ投資顧問の詐欺にあっちゃった

2012-02-26 00:04:08 | 経済/経済/社会
「俺の会社の年金、投資詐欺にあっちゃったんだけどwww」

とある男から電話がかかってきた。
↓これである。

AIJ投資顧問の巨額損失 企業年金もう戻ってこない?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120224-00000008-jct-bus_all

解説を求められたので私見を述べたい。



出した銭はもう戻ってこないのか?

ほぼ全損なのは間違いない。

とはいっても、ふつうの年金は大半を債権で運用するので、AIJ投資顧問の持分まるごとふっ飛ばしたところで年金の大半が消えてなくなるわけではないはずだ。



AIJ投資顧問というのはいったいどんな集団なんだろうか?

公式サイトは↓これである。

AIJ投資顧問 - 会社案内
http://www.aim-ij.com/

いたってシンプル。
いや、手抜きと言われるくらいシンプルすぎる。

しかし、ヘッジファンドの大概はこんなもんだ。
これは変ではない。

第22期事業報告書というものがある。
これを見てみる。

http://www.aim-ij.com/20120224-22rep.pdf

4ページ目の上のほうを見よう。
ニュースにあるように、たしかに国内の年金だけで1800億円も預かっている。
1人あたり15億円相当だ。

しかし、それより目につくものがある。
海外の客が2人しかいないのに、合計で2000億円もつっこんでいるヤツがいることだ。
1人あたり1000億円だ。

1000億円のうち900億円もふっ飛んだら、よっぽど大きな会社でないと会社傾くはずだ。
いったいどこだろう・・・。
ニュースではアドバンテストと安川電機の名前が出てきてはいるが、1000億円つっこんだ海外の客のほうがむしろ気になる。



AIJ投資顧問はいったいどんな運用をしていたんだろうか?

4ページ目の下のほうを見よう。
ポジションの2/3をオプションで運用している。
しかしそれ以上はわからない。

債権のオプションで運用していたことだけしか書いていない。
ポジションの詳細は不明である。

ふつうの投資信託なら月1でポジションを公開しているし、ヘッジファンドの多くも顧客向けにはポジションを公開しているところも多いらしい。
しかし、この運用報告書には債権のオプションで運用してることがわかるだけで、ポジションについてそれ以上の情報はない。

しかし!

オプションはヤバい。
ヤバさはガチだ。

ヘタすると100万円取りにいって1億円の借金になることもありうる。
オプションはFXなど比ではないほどヤバい。

オプションがどんだけヤバいのかというのは過去にちょっと書いたことがあるので、そちらの記事を参照されたい。

オプション怖ぇ・・・
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/d/20110318

実はわたしもオプション買ったことがあるのだが、怖くて売りはようしきらん。



オプションで資産運用するとどうなるのか?

オプションで運用すると、株や債権や不動産とは違う値動きをする資産を持てる。
そういう意味では資産を分散することでのリスクヘッジにはなっている。

しかし!

オプションはある日突然にドカンと勝ったり負けたりするものなので、ふつうはコンスタントに収益を上げ続けることなどできやしない。

ところがウワサによるとそうではなかったらしい。
常に悪くない一定額の収益を上げていたらしいと聞く。

これはあきらかにおかしいだろ!

企業側の年金運用担当者ならそこで気付いてしかるべきだ。



この手口、どっかで見覚えがないだろうか?

そう、史上最大級の巨額詐欺事件と言われたアレである。

バーナード・L・マドフ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BBL%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%95

ヤツもオプションで運用しているらしいことを匂わせているだけで、ポジションを公開してはこなかった。

マドフがポジションを公開しなかった言い訳は
「素人にポジション戦略を説明しても理解できないから」
だった。

たしかにオプションはわかりにくい。
我輩のところに電話かけてきた男にオプションのしくみを説明したが、
「う~ん…、わかったような…」
だった。
それくらいわかりにくい。

実はそれは中でやっていることをバレないように隠すのに好都合でもある。

たとえば
「今はNASDAQの某テクノロジー株のオプションをベアスプレッドで持っていて、かつS&P100指数オプションをブルスプレッドにしてアービトラージしている」
と説明されても、ふつうの人には意味がわからない。
つまりそういうことだ。

そして実際に詳細を開示していない。



AIJの浅川和彦は初めっから騙す目的だったのか?

ただ、初めっから騙す目的のねずみ講(正確にはポンジスキーム)だったか、
それとも運用にしくじったのを隠していたのか、
それは現段階ではわからない。

だが先に説明したように、隠すのに好都合だったという状況証拠はある。

オプションはヘタに運用するとある日突然にとんでもない大損が発生して速攻くたばりやすいという性質がある。
なので、東日本大震災やリーマンショックで資産のほとんどをふっとばして、それを今まで黙っていた可能性もある。

だが。

それよりもっと気になるところがある。
運用報告書のpdfがスキャナ取り込みで、しかもひん曲がっている件だ。

いくらなんでもこれはいかがなものか。
最初っから詐欺目的で誰かにダミーの報告書を作ってもらって、それをスキャナで取り込んだだけなんじゃないかという気がしてならない。

正直なところ、「マジメに仕事しているのかこいつ…」と思うレベルだ。
いや、マジメに仕事していなかったことが昨今明らかになったわけだがね。



あらかじめ詐欺だと見破る方法はなかったのか?

事前に詐欺だと特定できるだけの証拠はない。
しかし、ヤバいニオイを嗅ぐことはできた。

1つは、報告書の体裁が変なこと。

1つは、オプションで運用しているくせに常に悪くない一定額の収益を上げていること。

1つは、運用方法がほとんど公開されていないこと。
少なくともわたしなら、投資信託にしろヘッジファンドにしろポジションを見せてもらって、自分の考えと同じほうを向いているものにしか投資しない。

わたしなら、詐欺だと見破れなかったにせよ、これに多額の投資をすることなどないはずだ。



企業側の運用の責任者は寝てたのか?

企業側の運用の責任者とはいっても金融工学の専門家ではなく、たいがいは人事や経理の人が片手間で担当しているにすぎないのではなかろうか。
運用の責任者を自前で雇うコストのかわりにファンドに運用手数料を払っているのだと言ってもいい。

企業側もそれなりに大変だ。
地方銀行みたいに民間からほぼゼロ金利で銭を集めて国債を全力で買って寝てればいいような商売だったらラクチンなのだが、そうはいかない。
そこまで運用益が低いと年金に穴が空くので、ある程度リスクを負って利回りを追求しなければならなくなる。
そしてそれなりに利回りがあって株とは違う値動きをする金融商品というと、実はそんなに選択肢は用意されてはない。
だから何も考えずにただ銭をつっこんだわけではなかろうと思う。

ただし。
最低でもファンドが何をやっているかを理解するだけの知識は必須だ。

まちがってもオプションって何なのか知らないヤツが決めたわけじゃないよな?

ヘタしたら我輩より知識ないかもしれないし。