モンゴルのバーベキューはミルクポットで作る。
まず、羊の解体から始まる。
一滴の血も流さずに羊をさばくのは、芸術的でさえある。
血を入れない肉は、くさみが少ない。
スフバータル号の乗組員は、驚くほどこの技がうまかった。
彼らは生きた羊を船に乗せてやってきた。
さっそくお腹を薄く切り、手を入れて心臓の大動脈を軽く握る。
為されるままの羊は、こうして安らかに昇天する。
皮をはぎ、身を解体し、肉を細かく切り、玉ねぎと水と塩と一緒にミルクポットの中に入れる。
たき火で熱した石を数個、ポットに放り込む。
ふたをして足でけると、しっかり締めたふたから蒸気が噴き出す。
ミルクポットの圧力鍋である。
数分もすると、すべてが柔らかくなる。
モンゴルバーベキューの出来上がりだ。
我々は焼き肉のたれを持参していた。
野趣あふれた豪快な宴も、最近、できる人が少なくなってきた。
モンゴルに住む真の遊牧民の数が、次第に減ってきているようだ。
古い友人たちも、他界してしまった。