息子が中学生になった時に、宮城谷昌光氏の「晏子(あんし)」という本を買い与えた。
このことが彼の読解力を決定的に変えた。
彼が京都大学に入学できたのもこの本のおかげだった。
爾来、多くの友人にも推薦してきた。
宮城谷氏の著作は語彙が豊富であるばかりでなく、用法が正確である。
その学識の深さにはいつも敬服する。
最近読み始めた本は、「湖上の城」という本だ。
紀元前5世紀頃に中国で活躍した伍子胥(ごししょ)という人の話である。
伍子胥は、兵法を完成させたことで有名な孫武(孫子)と交誼があった。
文中に以下のような記述がある。
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孫武は自分で発見したこと、研究したことを、隠さず、弟子、門人だけではなく多くの人に伝えてゆこうとしている。
ほんとうの偉大さは、開かれていることにある。
孫武にそう気づかされた。
それを政治におきかえれば、最高の善政とは、もっとも分かりやすい政治、臣民がなぜと問わない政治であり、それが開かれた政治であろう。
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ひるがえって今の衆愚政治を見るに、情けないとしか思えない。
無能力な政党の後に登場したのは、傲慢を振りかざす独裁政治だ。
この国には、仁徳というものがないのか。
薄っぺらい政治では、今の東アジアに横たわる困難に立ち向かうことは出来ない。
困ったことだとため息をつく日々が続いている。