連作短編集の巻頭作なので、主人公のゆきやたつやのキャラクター設定がなされています。
ゆきは、心がやさしくよく気がつく女の子です。
たつやは、ガサツなとことはありますが、これもまたやさしい所のある男の子です。
ふんだんに描かれている長谷川知子の挿絵も、二人のキャラクターの魅力をよく表していて、ゆきはかわいいし、たつやは元気いっぱいです。
作者や画家の子どもたちに対する観察眼は定評がありますし、この作品でも十分に発揮されていると思います。
しかし、これらのキャラクター設定はいささか古い感じもします。
女の子は「やさしく気がきいて」、男の子は「元気だけどやさしい所もある」、こういった設定の本はもうたくさん書かれているでしょう。
また、少し大げさに言えば、ジェンダー観の固定化にもつながり、子どもの自由な成長を阻害しかねない気もします。
作者には、従来のパターンを壊すような冒険をしてもらいたかったなと思いました。
ストーリーは、登校前にたつやが子猫を拾い学校へ連れて行くことで起こるドタバタを中心に進み、大きな破綻もなくきちんとおさまるところにおさまります。
ここでは、低学年の読者が読む上で問題だったと思った点を指摘しておきます。
まず、お話の起承転結が弱い気がしました。
読者が低年齢になればなるほど、ストーリーのメリハリがないと読者は飽きてしまいます。
この作品では、障害をクリアする個所があっさりしすぎていて、読者が主人公たちに感情移入しにくいと思いました。
このお話の場合、障害として考えられるのは、「猫を教室に持ち込んだことに対する先生の対応」、「子猫の行く末をどうするか」だと思います。
しかし、このお話では、前者は先生が物わかりが良すぎて障害にならず、後者は偶然その子猫のことを知っている上級生のおねえさんと出会う事であっさり解決してしまいます。
これでは、どうなることかとドキドキしていた読者(彼らは主人公たちと一緒に問題を解決したいのです)は肩透かしを食った感じがしてしまいます。
年少の読者のための配慮として細かいことを指摘すると、「学校のシーンからゆきの家のシーンに場面転換する箇所が行空きされていない」、「上級生のおねえさんの最初のセリフが誰が話したのかわかりにくい」など、ひっかかるところがいくつかありました。
この作品は同人誌の合評会に出されたものではなく、一つの商品なのですから、作者と編集者は細心の注意を払うべきでしょう。
もちろんこの作品には、ゆきが教室で子猫の鳴き声をごまかしたり、子猫がうんこ(小さい子たちは大好きです)をしてしまい騒動になったりと、作者ならではの楽しいシーンがたくさんあって魅力的なのですが、この二人が年少の読者たちにとってかけがえのない「友だち」になるためには、より一層の努力がいるように思いました。
ゆきは、心がやさしくよく気がつく女の子です。
たつやは、ガサツなとことはありますが、これもまたやさしい所のある男の子です。
ふんだんに描かれている長谷川知子の挿絵も、二人のキャラクターの魅力をよく表していて、ゆきはかわいいし、たつやは元気いっぱいです。
作者や画家の子どもたちに対する観察眼は定評がありますし、この作品でも十分に発揮されていると思います。
しかし、これらのキャラクター設定はいささか古い感じもします。
女の子は「やさしく気がきいて」、男の子は「元気だけどやさしい所もある」、こういった設定の本はもうたくさん書かれているでしょう。
また、少し大げさに言えば、ジェンダー観の固定化にもつながり、子どもの自由な成長を阻害しかねない気もします。
作者には、従来のパターンを壊すような冒険をしてもらいたかったなと思いました。
ストーリーは、登校前にたつやが子猫を拾い学校へ連れて行くことで起こるドタバタを中心に進み、大きな破綻もなくきちんとおさまるところにおさまります。
ここでは、低学年の読者が読む上で問題だったと思った点を指摘しておきます。
まず、お話の起承転結が弱い気がしました。
読者が低年齢になればなるほど、ストーリーのメリハリがないと読者は飽きてしまいます。
この作品では、障害をクリアする個所があっさりしすぎていて、読者が主人公たちに感情移入しにくいと思いました。
このお話の場合、障害として考えられるのは、「猫を教室に持ち込んだことに対する先生の対応」、「子猫の行く末をどうするか」だと思います。
しかし、このお話では、前者は先生が物わかりが良すぎて障害にならず、後者は偶然その子猫のことを知っている上級生のおねえさんと出会う事であっさり解決してしまいます。
これでは、どうなることかとドキドキしていた読者(彼らは主人公たちと一緒に問題を解決したいのです)は肩透かしを食った感じがしてしまいます。
年少の読者のための配慮として細かいことを指摘すると、「学校のシーンからゆきの家のシーンに場面転換する箇所が行空きされていない」、「上級生のおねえさんの最初のセリフが誰が話したのかわかりにくい」など、ひっかかるところがいくつかありました。
この作品は同人誌の合評会に出されたものではなく、一つの商品なのですから、作者と編集者は細心の注意を払うべきでしょう。
もちろんこの作品には、ゆきが教室で子猫の鳴き声をごまかしたり、子猫がうんこ(小さい子たちは大好きです)をしてしまい騒動になったりと、作者ならではの楽しいシーンがたくさんあって魅力的なのですが、この二人が年少の読者たちにとってかけがえのない「友だち」になるためには、より一層の努力がいるように思いました。
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