ウクライナ民話をもとにした絵本の古典です。
おじいさんが森の中で落とした手袋に、森の動物たちが次々に入っていくお話です。
手袋に入ったのは、くいしんぼねずみ、ぴょんぴょんかえる、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし、のっそりぐまと、七匹もいるのです。
最初のねずみの時点で、手袋と動物たちの大きさの比がすでにおかしかったのですが、百歩譲ってかえるまでは何とか入ってもいいでしょう。
しかし、うさぎ以降はどう考えたって無理です。
おじいさんは巨人なのでしょうか?
でも、そばに落ちていた小枝と手袋の大きさの比率を考えるとそうではなさそうです。
とても入るのは無理だと思われる動物たちが、次々に手袋に収まっていく様子を、子どもたちが大好きな繰り返しの手法を使って描いていきます。
しかも、増えていくのは絵の中の動物たちだけなく、文章の方でも繰り返しごとに一匹ずつ増えていくので、読み聞かせをすれば子どもたちは大喜びでしょう
ラチョフの絵も、作品世界を余すところなく伝えていて秀逸です。
前出したように、動物たちにはその特徴を示すネーミングがされているのですが、ラチョフの絵はそれを十分に生かしています。
また、動物たちの大きさを自在に変えて手袋にうまく収めています。
ただし、最後の熊だけは、絵にするのが無理だったようです。
また、手袋に土台やはしごを取り付けたり、窓まで開けてしまって遊び心満載です。
もちろん、最後に、おじいさんが拾いに来たときには、元の手袋に戻っています。
児童文学者の瀬田貞二は、「幼い子の文学」(その記事を参照してください)の中で、この作品について、「手袋の中に熊なんか入るもんかというふうな理屈の上での議論は抜きに、子どもの想像力の中では、熊でも何でも入っちゃうと思うんです。その手袋がいろんなものを際限なく入れるということになれば、それだけ面白いじゃありませんか。」と述べていますが、まったく同感です。
てぶくろ―ウクライナ民話 (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本) | |
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