女の子たちの感覚(美しい年上の同性への憧れ、イケメンの年上の異性との恋、同性の同年齢の友人たちとの日常など)をビビッドに捉えた作品は、今でも少女小説の王道です。
他の記事でも書いてきましたが、現在の児童文学の読者の主流は女性です。
それも、子どもや思春期の女の子たちだけでなく、若い独身女性やママたち、さらには、アラサーは当然として、アラフォー、アラフィフ、アラカンまでの幅広い年代の女性を対象としたL文学(女性作家が女性を主人公にして女性の読者を対象とした文学。最近では、女性編集者、女性児童文学評論家(研究者)、女性書店員、女性司書、女性教員なども含めた完全に女性だけで閉じた世界になっています)へと変貌を遂げています。
そのため、こうした少女小説は一定のマーケットを維持しています。
少女小説という戦前の吉屋信子にまで源流を遡れる伝統芸に、どうしたら新しい衣を着させることができるかが、作家の腕の見せ所です。
文学が古典のような恒久財と、その時代に合った娯楽としての消費財に分けられるならば、少女小説は明らかに消費財でしょう。
そのために、その時代に女の子たちの間ではやっている風俗を取り入れることは必要です。
しかし、いくら消費財的文学とはいっても、本あるいは作品よりも短命な風俗、特にディジタル技術や通信技術に関するものを作品に取り込むことにはもう少し慎重になった方がいいと思われます。
タブレット端末も、スマホも10年と持たないでしょうし、ましてやアプリにすぎないラインなどは、5年後も流行っているかどうかの保証はありません。
そういったものを安易に作品に取り込むと、すぐに陳腐化して作品の寿命を短くしてしまうことでしょう。
少女小説事典 | |
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東京堂出版 |