日本児童文学1987年12月号に発表された、当時流行していたミヒャエル・エンデの「モモ」と「はてしない物語」を取り上げて、この「大人向けの童話」と言われていて作品が、実は古典的な「童心」を作品の核の部分に備えていると指摘しています。
そして、大人にも読まれるファンタジーや児童文学が増えてきている現象をとらえて、「ファンタジーや児童文学を読んで感動しているうちはあたしも大丈夫だな」と、大人にとって自分の想像力や感受性の一種の踏み絵の働きをファンタジーや児童文学がしているとしています。
作者がどのくらい意識的に使っているかわかりませんが、この文章の「あたし」という主語に、その大人が主として女性であることを示しています。
1987年にはこのように捉えられていたファンタジーや児童文学が、その後加速度的にL文学(女性の作家が女性を主人公として女性読者のために書いた文学)化をはたして、現在では児童文学は子どもから大人までの広範な女性のためのエンターテインメントとなっていき、女性編集者、女性評論家、女性研究者も含めて、児童文学はほとんど女性だけの閉鎖的な世界になってしまいました。
「現代児童文学」をふりかえる (日本児童文化史叢書) | |
クリエーター情報なし | |
久山社 |