一般的には1959年に始まり2010年に終焉したと言われている(私自身は1953年に始まり1990年代半ばにはすでに終焉したという立場をとっています(詳しくは「現代児童文学の始まり」と「現代児童文学の終焉」という記事を参照してください))現代児童文学は、一種の文学運動でもありました。
そこには大きく分けて、「少年文学宣言」派と「子どもと文学」派があったと思われます。
「少年文学宣言」派はその申し子ともいえる後藤竜二の死とともに2010年に完全に終焉したと言えますが、「子どもの文学」派が主張した「おもしろく、はっきりわかりやすく」という主張は一見今でも有効なように思えます。
しかし、現在の夥しく出版されている児童書の「おもしろさ」は、明らかに「子どもの文学」派が主張していた物からは変質しています。
「子どもと文学」が発表されてすぐに「少年文学宣言」派から批判されたように、彼らの主張は多くの安易なステレオタイプの作品を生みだしました。
現代の児童文学の多くは、この「安易なステレオタイプ」の再生産にすぎないのではないでしょうか。
そして、長く子どもたちの財産となるような恒久財としての「文学」ではなく、短期間に読み飛ばされる消費財にすぎません。
すでに文学運動体をなくした児童文学において、それらを正しく評価するには、いわゆる文学論ではなく、マーケティング理論に基づいた消費財としての評価方法が必要になっていると思われます。
残念ながら、現状ではマーケティングをきちんと勉強した児童文学研究者や出版関係者は見あたりませんので、それらが正しく評価されることは困難でしょう。
そのため、同じ子ども向け消費財マーケットを競っている、マンガやアニメやゲームに対抗していくことは困難で、児童書のマーケットサイズは今後も縮小を続けていくことでしょう。
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