作者は、この雑誌の連載を始めるに際し、初めにサル学者になるにはどういったプロセスがあるかを紹介しています。
対象が現役の大学院生でしかも乳児のいる女性であるがゆえに、長期の原野でのフィールドワークが必須のサル学者になるのが、いかに困難なのかがよくわかりました。
ただし、この連載が始まってからすでに三十年以上がたち、短期的な実利の少ない学問への世の中の理解が得られなくなっている風潮を考えると、「サル学者」の誕生はますます難しくなっていることでしょう。
人文学的な実利だけでなく、一般の人たちの知的好奇心を満たすこのような学問は、人間が人間として生きるために大事だと思うのですが、残念ながら世の中の傾向は違うようです。
児童文学の世界でも、大学の文科系の学部の縮小に伴い、「児童文学者」の誕生もまた難しくなっています。
サル学の現在 (上) (文春文庫) | |
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