賢治の六歳年下の弟による評伝です。
肉親が書いたにもかかわらず、感傷的にならずに淡々と賢治の誕生から臨終までを描いています。
賢治の生涯については様々な形で書かれていますが、近親者でしか知ることのできないエピソードも描かれていて興味深い内容です。
文中にも書かれているように、著者は生前からの賢治の理解者であり協力者(賢治の原稿を「婦人画報」に持ち込んだのも筆者です)であり、死後は賢治の膨大な原稿の散逸を防ぐとともに、様々な全集などの編纂にも関わりました。
生前はほとんど無名であった賢治が、死後日本の児童文学者の中でも最も著名な作家になったのは、賢治作品自身の魅力はもちろんですが、筆者の献身的な努力も大きく貢献したと思われます。
他の記事にも書きましたが、1974年3月14日に、友人たち(早稲田大学児童文学研究会宮沢賢治分科会のメンバー)と賢治の生家で著者にお話をうかがう機会を得ました。
大勢で押しかけた若い学生たち(当時の賢治研究の第一人者であった続橋達雄先生の紹介はありましたが)にも、丁寧に対応してくださり、賢治の想い出話を語っていただいた帰りには、この復刻版の「注文の多い料理店」(角川文庫)を記念にいただきました。
兄のトランク (ちくま文庫) | |
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