現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

馳星周「不夜城」

2019-01-06 09:12:58 | 参考文献
 1996年に発表されたノワール・ノベル(暗黒街を舞台にした犯罪がからむ小説)の傑作です。
 暴力、殺人、セックス、ドラッグなど、なんでもありのアクション小説なのですが、今までの同種の作品と違う点がいくつかあります。
 まず、安易なハッピーエンドにせず(一緒にピンチを切り抜けてきた主人公の愛人は、ラストで主人公自身によって射殺されます)に、主人公は最後まで悪党のままで、誰も信じずに生きていく姿勢を貫いています。
 また、登場人物たちが属するのは、従来のやくざ組織ではなく、中国人マフィア(台湾、上海、北京、香港など、出身地ごとにグループを作っています)で、彼らのメンタリティが非常にドライで新鮮に感じられました。
 主人公(台湾人と日本人のハーフ)と主人公の愛人(中国人と残留日本人のハーフ)が、「半半」と呼ばれて中国人にも日本人にも差別されている存在であり、彼らが誰も信じないで生きていくことにリアリティを持たせています。
 舞台は1990年代半ばの新宿歌舞伎町で、バブル崩壊によってかつての繁栄がなくなった場所に、さまざまな場所から中国人マフィアが流れ込んでいたころ(中国が経済発展する前です)の歌舞伎町の殺伐とした雰囲気をよくとらえています。

不夜城 (角川コミックス・エース)
クリエーター情報なし
角川書店

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