現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学における「旅人」と「定住者」について

2024-11-14 11:13:29 | 考察

 児童文学における物語のパターンとして有名なものに、「旅人」と「定住者」があります。
 一番わかりやすく有名なものは、イギリスファンタジーの古典であるケネス・グレアムの「楽しい川辺(THE WIND IN THE WILLOWS)」の第9章「旅びとたち」でしょう。
 トールキンの「ホビットの冒険」や「指輪物語」、それらに影響を受けたと言われている斉藤惇夫の「冒険者たち」の冒頭部分も、このパターンを踏襲しています。
 普段の平凡だけど安定した生活に満足していた「定住者」は、いつの世も、不安定だけど常に何かを求めて移動し続けている「旅人」に憧れを持っています。
 ホビットのビルボやフロドも、ネズミのガンバも、「旅人」たちに刺激を受けて、住み慣れた居心地のいい我が家を離れて、冒険の旅へと出発します。
 ある者ははるかかなたの遠い世界へ、そしてまたある者は異世界へと、いづれも旅立つ先は芳醇な物語の世界です。
 いえ、物語の世界だけでなく、現実世界でも同様でしょう。
 沢木耕太郎の「深夜特急」が、いつの時代でも「旅」を夢見る若者のバイブルであるように、我々も機会さえあれば日常から旅立ちたいのです。
 一般文学でもこの「旅人」と「定住者」のパターンは使われているのですが、特に児童文学で有効なのは、「旅人」が成長して変化し続けている「子ども」の、「定住者」が成長を終えて同じところに留まっている「大人」の比喩になっているからでしょう。

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