「能く、世間の立派な人は未来は自分で選ぶんだと云いますけど―――未来なんてものは選べないんだと思うんです。自分で決められるものじゃない。でも、過去は選べるんですよ、きっと。どの過去を選ぶかで、今が変わる。今を一番良くする過去を、きっと京極堂は選ぶんです。こうするべきだ―――とか、こうしなければいけない―――とか、それって思い込みであって、別に真実じゃないです。正しいとか間違っているとか、それは全部一定のルールの中でしか通用しないことじゃないんですか。だから、社会の中の正義はあっても、個人の中に正義なんてない。皆、思い込みを信じて自分勝手に生きてるだけなんです。なら思い直せば別の世界にいける。過去なんてものは、もうないんです。未来がないのと同じように」
「だから―――今が大事なんだな。だから俺達の納得出来る今を―――作らなきゃいけないんだよ関口さん」
(京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』)
今までの京極堂シリーズとは異なり、洋風(?)の雰囲気漂う本作。
わりとお気に入りの作品です。哀しいストーリーですが…。
でもアマゾンの評価はあまり高くないみたいですね。京極作品らしくないというのが理由のようです。
私はなんといっても『塗仏の宴』で散々な目にあった関口君の無事な姿を見られたことが嬉しかったです(元気とは程遠いけど)。
京極堂も榎さんも格好いいけど、このシリーズはやっぱり関口君あってこそ!
また前作で色々な経験をした彼が少しだけ成長、というか前向きな方向へ向かっていっている変化を感じられたのもよかったと思う。
「未来は選べないけれど過去は選べる」
「社会の中の正義はあっても、個人の中に正義なんてない」
一般的な常識とは別の道をゆくこのシリーズの、独特の「優しさ」が表われていますよね。