風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

木内 昇 『茗荷谷の猫』

2009-01-09 01:10:46 | 



「今日の日の魂に合ふ
 布切屑をでも探して来よう。」
ひとりになってから、さっき健坊から聞いた言葉を口の中で繰り返した。

(木内昇 『茗荷谷の猫』)



今年の初読書^^
去年Amazonからのメールで新刊が出たのは知っていたのですが、当然ロンドンでは手に入らず、拷問のような思いをしたものです。

木内さんの本をよむのはこれで4冊目だけれど、はずれがありません。
独特の空気をもってる素敵な作家さんだとおもいます。

好きな本の趣味がわりとわたしと似ていて、この方が書く書評を読むとうんうん、そうそう~とうれしくなるのです。

木内さんの本はいつも装丁のセンスがいいのだけれど、今回もとーってもきれい。
表紙カバーは薄ピンクの桜の樹。
本体の表紙は濃い紫に散る薄桜色の花びら。

この本の登場人物の多くは、現実世界の一本となりの道をあるいているような人たち。
まわりから見たら全く意味がないようなことに強いこだわりを持っていて(いわゆる変人)、読んでいるうちに、でも意味がある生き方ってなんだろ?みたいな変な気分になってくる。
そんななので当然孤独。
そんな彼らも、時間や空間を超えて誰かとつながってる。
でも、そのつながりはとてもささいで儚くて、きちんと意識されることもないまま、時の流れのなかへ消えてゆく。
うすぼんやりとした夢の中をただよっているような、ふしぎな余韻が残る
連作集です。

ちなみに上に引用した中の「今日の日の・・・」のくだりは中原中也の詩集『山羊の歌』の一節。
言葉ってほんと芸術だ。鳥肌たつもん。。
登場人物の一人に「好きな言葉があればご飯もいらない!」みたいな男の子がいるんですが、わかってしまう、その気持ち。
もちろんご飯はいりますが(いま夜中の一時半。おなかすいた。。。)。

精神科医の春日武彦氏による読売新聞の書評はこちら→click!
ここに書かれている「取るに足らないけれども痛切な心情の連鎖」ということば、すごくよくこの物語をあらわしてると思います。さすがだなぁ。

最後に、"プロフェッショナルな仕事"にこだわる木内さんらしい一文を本文からご紹介^^

「手作り風」でなにかするくらいなら、いっそなにもするなかれ

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