前の記事の続きですが、字数がオーバーしたので、別にしました。
6)何が間違っているのか
これまで見てきたように、本来的には企業が派遣労働力に対して、正規の同じクラスの労働力よりも一時的には多く払わねばならないということです。企業が負担するべきコストは、タイムラグ減少分、育成に関する手間暇分、新卒の中途退職リスク分、仲介手数料分、などです。労働者側からすると、同一店舗のコンビニのレジと商品陳列のような「移動障壁の殆どない場所」を移動するのではなく、異なる企業間の移動となるので移動障壁は高くなるでしょう。その分は「多くもらえなければならない」ということになります。更に、投入された場所で短期間に成果を挙げねばならないので、期間が長い場合に比べるとやや不利ではあります。成果が大きい場合であっても、報酬が増えることは殆どないでしょうからね。成果が小さくなるとすれば、自分の評判や評価が低下する恐れがあるので、そのリスクに見合う上乗せが必要ということになるでしょう。
弁当屋で「完成品」を購入する場合には、自分で作る手間暇とか時間を購入するのと同等であって、例えば「カレー弁当」みたいなのを作るとすれば弁当屋で購入すると500円かかるが、自分で作れば100円で作れてしまう、というようなものです。完成品というか、既に出来上がったものを調達するということになれば、割高になるのですね。派遣を利用している企業は、自前で作るのを止めたのに、割高な完成品を求めるのではなく、「自前で作る100円よりも安いカレー弁当を買わせろ」というようなことを求めている、ということです。工業製品みたいに、ネジのようなものを自分でたった一つだけ作るよりも、大量生産の恩恵を受けた市販品を購入する方が安く済む、ということも有り得ますが、労働者はこうした工業製品とは異なるのだし、大量生産も難しいので自前で作るより完成品購入の方が割安ということにはならないでありましょう。
企業というのは、戦線に敵が押し寄せてきていても、「何処に余っている砲兵がいるか」ということを発見し難いのです。発見するにも時間がかかるし、その間も戦闘は続いているわけですから、自力で探してきて増援部隊を戦線投入するとなればタイムラグが生じてしまうことになるのです。一方労働者側は、自分は手が空いていても「何処の戦線で自分が必要とされるのか」ということとが正確に判りません。なので、自分で必要とされそうな戦線を探し当てるとなれば時間も労力もかかってしまいますが、紹介屋の指示に従えば必要とされている戦線が容易に見つけられるのです。「伍長クラスの狙撃兵(=労働者個人)」も「戦線に張り付いている正規部隊(=企業)」も、戦線全体を見渡せるわけではないので、どこに行けば互いを発見できるのか判り難い、ということです。
紹介屋は戦線全体を見渡せるので、必要とされている戦力、必要な地点、余っている戦力、の双方がわかっているのです。なので、マッチングを行いやすい、ということになります。
間違いの元になるのは、こうした紹介屋は「情報の差」や「交渉力の差」につけこんでいるということです。企業もそれに便乗していると言えます。
発注側企業は、「多くの紹介屋がいるから、他に頼むよ」ということを暗に交渉力として利用している、ということです。「支払う給料は1等兵、でも曹長の働きができる人材を」ということを求めるか、派遣会社に「仲介手数料を下げろ」と求めるということです。仲介手数料がどういった仕組みなのか判りませんけれども、例えば「派遣する人材の月給の○%」みたいになっているならば、手数料引き下げは自動的に「月給引下げ」に直結してしまいがち、ということです。なので、派遣会社の競争激化によって、仲介手数料の引下げ競争が起こってくると、派遣労働者の「月給引下げ」とか、仲介手数料減少分を派遣する労働者の取り分(賃金)からピンハネしてしまうことが有り得る、ということです。
次に労働者と派遣会社との交渉力を考えると、派遣会社は全ての情報を得ているので有利な立場ですし、最大の理由としては労働者側が「仕事にありつけないと生きていけない」ということを知っている、ということだろうと思います。本来的には、派遣される人は、戦線(企業)から次の戦線(企業)へと空白が少なく移動できるというメリットを享受するはずでしたが、派遣会社は「次がないと困るでしょう?」という足元を見た交渉を行うことが可能になってしまうのです。同じ軍曹でも、「安すぎて引き受けられない」と全部の軍曹が断れば値崩れするのを防げるかもしれませんが、安い水準を提示されたとしても背に腹は替えられずに応じてしまう抜け駆け者が現れると、軍曹の報酬はみるみる下がっていき、伍長とか1等兵レベルの報酬でも引き受けざるを得なくなってしまうのです。派遣される労働者がバラバラではなく、一個の意思決定しか持たないとすれば「軍曹として引き受けられる水準の報酬」ということがたった一つだけ決まります。本来的にはそれが「妥当な水準の報酬」ということのはずなのですね。そこからの若干の上下はあるにせよ、大きく下がるということにはならないはずなのです。株価の変動みたいなものかもしれません。「安く売ってしまって損した」と思う人もあれば、「安く買えて得した」と思う人もある、ということです。株価ならば、「同一の市場」で他の価格交渉の様子が概ね判る、ということになっていますが、労働者と企業の交渉は外部の人たちからは判りません。そこに問題があるのですね。「軍曹の現在の相場」というのが、労働者側にもはっきりとは判らない、ということです。
もしも不当な条件しか出さない企業があるとして、そこに誰も戦力が手当てされないとなれば、困るのは最前線で戦っている人々であり、防衛作戦は失敗して敵に突破されてしまうでしょう。レジの例で言えば、慢性的に列になってしまい、客の不満度が大幅に上昇して客が次第に離れていくということです。不当な条件しか提示しない企業であれば、戦線を維持できなくなって退却を余儀なくされる、という「しっぺ返し」を食らうことが望ましいのですが、競争の激化した紹介屋たちの中からは「目先の仲介手数料」に目が眩んだ業者が現れるので、どうにかして戦力が調達されてしまう、ということなのですね。これが良くないのです。
結局、交渉力の差を見れば、「企業」>「派遣会社」>「労働者」、という順になっていて、それぞれの交渉条件の情報が不透明になっていることが問題だろうと思います。株式市場のように、価格の状況が双方ともに正確に把握できるとか、オークション方式みたいになっているとか、労働者の能力について正確に分析し序列化できるとか、そういったことでも達成できない限り、交渉力の差がモロに出てしまっているということかと思います。
あとは、5)でも述べたように、企業は大きな勘違いをしているのではないかと思います。「正規雇用よりも、派遣社員は安く済む」ということを、トータルの費用ではなく「月給」という目の前の賃金が下がるものだ、と思い込んでいる、ということですね。
例に書いたコンビニの「店長」、「パートさん」、「バイト君」という労働者がいる時、「店長」が正規職員で他の非正規の人よりも賃金が高く、店長にしかできない業務があるというなら、「パートさん」や「バイト君」からは「まあそうだろうな」とか「仕方がないかな」と考えるかもしれません。ところが、「バイト君」が新卒で正規雇用、「パートさん」がもっとベテランの非正規雇用、ということで、業務内容も実力も大差ないとなればどうでしょうか。いかに「バイト君」の将来性に先行投資をするといっても、「バイト君」と「パートさん」の業務にも働き方にも何ら違いがないとすれば、「パートさん」から不満が出てくることは容易に想像できますね。今の企業の多くがやっているということは、まさしくこのような格差を意図的に与えている、ということなのです。
長期的にこうした雇用慣行が継続されていけば、いずれ派遣される側からの不満が募っていき、派遣市場そのものが壊れる可能性がありますね。労働者が疑心暗鬼にかられてしまい、信用しなくなるからです。増援部隊の士気は落ちていき、戦果は格段に悪くなっていくでしょう。そうなればよい人材は来なくなり、「下士官クラスを」とか「将校クラスを」と頼んでも、新兵レベルの完成度しか持たない人しか来なくなるでしょう。企業側も、頼んでも仕方がないな、となれば、誰も頼まなくなり派遣会社は潰れるだろう。
別な書き方をしてみます。
企業は増援部隊を頼まなければ戦線が維持できないということを最初から知っていながら、敢えて正規軍の配備を減らして「増援を頼む」ということを求めているのです。家庭の夕食を作る時、本当ならば4人分作らねばならないのに、初めから判っていながら3人分しか作らずに、残った1人分の夕食を「出来合いの弁当を、今作った料理よりもちょっと安い値段で買わせろ」と求めているということです。4人分を自力で作れば400円かかる夕食を、3人分の300円にしておいて、残り100円分で「80円の弁当を買わせろ」と言っている、ということなんですよ。20円浮かせられる、って自慢しているんですよ。これは違うでしょ?おかしいでしょ?こんな話がありますか?出来合いの弁当を頼む時点で、高いコストを覚悟するのは当たり前、ってこと。いつも4人分は自前で作っていて、急に来客があって一人分足りない、ってなった時には、「しょうがないから、出来合いの弁当を一つ頼む」というのなら判りますね、ということなんですよ。その弁当は、自前で全部作った場合よりちょっと割高になってしまったとしても止むを得ませんね、ということなんですね。自前で作れば100円なのに、150円とか200円とかになってしまうかもしれない。でも出費になるのは今だけで、明日からも毎日5人分(500円分だね)をずーっと作るよりは「安く済みますよね」ってことなんですよ。派遣を利用している企業は何を吐き違えているのか、正規軍には高給を払い、非正規の増援部隊には「正規軍よりもずっと安い給料だけしか払わない」ということを、仲介者(=派遣業者)にも増援部隊の兵士たち(=労働者)にも強いている、ということです。
こうして派遣社員たちは、苦しい状況に陥ってしまったのではないかな、と思います。それは景気動向が悪かったから、ということも大きく影響しているでしょう。発注者である企業側に交渉の優位性が強まったのです。労働力は過剰感が蔓延し、苦しい立場に追い込まれた兵士たちは「どこでもいいからとりあえず食い扶持にありつければいい」ということで、不利な条件を次々に受け入れてしまったでしょう。そうせざるを得なかったからです。そうした派遣される側の心理につけこんで、派遣会社も企業も搾取したのです。派遣会社がなければ、確かにもっと困っていた労働者たちはいたかもしれない。企業が自力で探すにはタイムラグがある。互いに最適な相手を特定でき難いからです。そうではあるけれども、搾取した側に責任はあるでしょう。雇用契約も金銭貸借契約もちょっと似ていて、弱い立場というものがあるのであって、そうした部分にはそれを是正させる「ルール」の導入・制定が必要になるでしょう。借り手は貸し手と対等な立場である、などという寝言を言っているのは、世間知らずのお坊ちゃんか、人に頭を下げたことのないような偉い学者大先生さま(笑)くらいではないでしょうか。それと同じようなものだ、ということですね。
6)何が間違っているのか
これまで見てきたように、本来的には企業が派遣労働力に対して、正規の同じクラスの労働力よりも一時的には多く払わねばならないということです。企業が負担するべきコストは、タイムラグ減少分、育成に関する手間暇分、新卒の中途退職リスク分、仲介手数料分、などです。労働者側からすると、同一店舗のコンビニのレジと商品陳列のような「移動障壁の殆どない場所」を移動するのではなく、異なる企業間の移動となるので移動障壁は高くなるでしょう。その分は「多くもらえなければならない」ということになります。更に、投入された場所で短期間に成果を挙げねばならないので、期間が長い場合に比べるとやや不利ではあります。成果が大きい場合であっても、報酬が増えることは殆どないでしょうからね。成果が小さくなるとすれば、自分の評判や評価が低下する恐れがあるので、そのリスクに見合う上乗せが必要ということになるでしょう。
弁当屋で「完成品」を購入する場合には、自分で作る手間暇とか時間を購入するのと同等であって、例えば「カレー弁当」みたいなのを作るとすれば弁当屋で購入すると500円かかるが、自分で作れば100円で作れてしまう、というようなものです。完成品というか、既に出来上がったものを調達するということになれば、割高になるのですね。派遣を利用している企業は、自前で作るのを止めたのに、割高な完成品を求めるのではなく、「自前で作る100円よりも安いカレー弁当を買わせろ」というようなことを求めている、ということです。工業製品みたいに、ネジのようなものを自分でたった一つだけ作るよりも、大量生産の恩恵を受けた市販品を購入する方が安く済む、ということも有り得ますが、労働者はこうした工業製品とは異なるのだし、大量生産も難しいので自前で作るより完成品購入の方が割安ということにはならないでありましょう。
企業というのは、戦線に敵が押し寄せてきていても、「何処に余っている砲兵がいるか」ということを発見し難いのです。発見するにも時間がかかるし、その間も戦闘は続いているわけですから、自力で探してきて増援部隊を戦線投入するとなればタイムラグが生じてしまうことになるのです。一方労働者側は、自分は手が空いていても「何処の戦線で自分が必要とされるのか」ということとが正確に判りません。なので、自分で必要とされそうな戦線を探し当てるとなれば時間も労力もかかってしまいますが、紹介屋の指示に従えば必要とされている戦線が容易に見つけられるのです。「伍長クラスの狙撃兵(=労働者個人)」も「戦線に張り付いている正規部隊(=企業)」も、戦線全体を見渡せるわけではないので、どこに行けば互いを発見できるのか判り難い、ということです。
紹介屋は戦線全体を見渡せるので、必要とされている戦力、必要な地点、余っている戦力、の双方がわかっているのです。なので、マッチングを行いやすい、ということになります。
間違いの元になるのは、こうした紹介屋は「情報の差」や「交渉力の差」につけこんでいるということです。企業もそれに便乗していると言えます。
発注側企業は、「多くの紹介屋がいるから、他に頼むよ」ということを暗に交渉力として利用している、ということです。「支払う給料は1等兵、でも曹長の働きができる人材を」ということを求めるか、派遣会社に「仲介手数料を下げろ」と求めるということです。仲介手数料がどういった仕組みなのか判りませんけれども、例えば「派遣する人材の月給の○%」みたいになっているならば、手数料引き下げは自動的に「月給引下げ」に直結してしまいがち、ということです。なので、派遣会社の競争激化によって、仲介手数料の引下げ競争が起こってくると、派遣労働者の「月給引下げ」とか、仲介手数料減少分を派遣する労働者の取り分(賃金)からピンハネしてしまうことが有り得る、ということです。
次に労働者と派遣会社との交渉力を考えると、派遣会社は全ての情報を得ているので有利な立場ですし、最大の理由としては労働者側が「仕事にありつけないと生きていけない」ということを知っている、ということだろうと思います。本来的には、派遣される人は、戦線(企業)から次の戦線(企業)へと空白が少なく移動できるというメリットを享受するはずでしたが、派遣会社は「次がないと困るでしょう?」という足元を見た交渉を行うことが可能になってしまうのです。同じ軍曹でも、「安すぎて引き受けられない」と全部の軍曹が断れば値崩れするのを防げるかもしれませんが、安い水準を提示されたとしても背に腹は替えられずに応じてしまう抜け駆け者が現れると、軍曹の報酬はみるみる下がっていき、伍長とか1等兵レベルの報酬でも引き受けざるを得なくなってしまうのです。派遣される労働者がバラバラではなく、一個の意思決定しか持たないとすれば「軍曹として引き受けられる水準の報酬」ということがたった一つだけ決まります。本来的にはそれが「妥当な水準の報酬」ということのはずなのですね。そこからの若干の上下はあるにせよ、大きく下がるということにはならないはずなのです。株価の変動みたいなものかもしれません。「安く売ってしまって損した」と思う人もあれば、「安く買えて得した」と思う人もある、ということです。株価ならば、「同一の市場」で他の価格交渉の様子が概ね判る、ということになっていますが、労働者と企業の交渉は外部の人たちからは判りません。そこに問題があるのですね。「軍曹の現在の相場」というのが、労働者側にもはっきりとは判らない、ということです。
もしも不当な条件しか出さない企業があるとして、そこに誰も戦力が手当てされないとなれば、困るのは最前線で戦っている人々であり、防衛作戦は失敗して敵に突破されてしまうでしょう。レジの例で言えば、慢性的に列になってしまい、客の不満度が大幅に上昇して客が次第に離れていくということです。不当な条件しか提示しない企業であれば、戦線を維持できなくなって退却を余儀なくされる、という「しっぺ返し」を食らうことが望ましいのですが、競争の激化した紹介屋たちの中からは「目先の仲介手数料」に目が眩んだ業者が現れるので、どうにかして戦力が調達されてしまう、ということなのですね。これが良くないのです。
結局、交渉力の差を見れば、「企業」>「派遣会社」>「労働者」、という順になっていて、それぞれの交渉条件の情報が不透明になっていることが問題だろうと思います。株式市場のように、価格の状況が双方ともに正確に把握できるとか、オークション方式みたいになっているとか、労働者の能力について正確に分析し序列化できるとか、そういったことでも達成できない限り、交渉力の差がモロに出てしまっているということかと思います。
あとは、5)でも述べたように、企業は大きな勘違いをしているのではないかと思います。「正規雇用よりも、派遣社員は安く済む」ということを、トータルの費用ではなく「月給」という目の前の賃金が下がるものだ、と思い込んでいる、ということですね。
例に書いたコンビニの「店長」、「パートさん」、「バイト君」という労働者がいる時、「店長」が正規職員で他の非正規の人よりも賃金が高く、店長にしかできない業務があるというなら、「パートさん」や「バイト君」からは「まあそうだろうな」とか「仕方がないかな」と考えるかもしれません。ところが、「バイト君」が新卒で正規雇用、「パートさん」がもっとベテランの非正規雇用、ということで、業務内容も実力も大差ないとなればどうでしょうか。いかに「バイト君」の将来性に先行投資をするといっても、「バイト君」と「パートさん」の業務にも働き方にも何ら違いがないとすれば、「パートさん」から不満が出てくることは容易に想像できますね。今の企業の多くがやっているということは、まさしくこのような格差を意図的に与えている、ということなのです。
長期的にこうした雇用慣行が継続されていけば、いずれ派遣される側からの不満が募っていき、派遣市場そのものが壊れる可能性がありますね。労働者が疑心暗鬼にかられてしまい、信用しなくなるからです。増援部隊の士気は落ちていき、戦果は格段に悪くなっていくでしょう。そうなればよい人材は来なくなり、「下士官クラスを」とか「将校クラスを」と頼んでも、新兵レベルの完成度しか持たない人しか来なくなるでしょう。企業側も、頼んでも仕方がないな、となれば、誰も頼まなくなり派遣会社は潰れるだろう。
別な書き方をしてみます。
企業は増援部隊を頼まなければ戦線が維持できないということを最初から知っていながら、敢えて正規軍の配備を減らして「増援を頼む」ということを求めているのです。家庭の夕食を作る時、本当ならば4人分作らねばならないのに、初めから判っていながら3人分しか作らずに、残った1人分の夕食を「出来合いの弁当を、今作った料理よりもちょっと安い値段で買わせろ」と求めているということです。4人分を自力で作れば400円かかる夕食を、3人分の300円にしておいて、残り100円分で「80円の弁当を買わせろ」と言っている、ということなんですよ。20円浮かせられる、って自慢しているんですよ。これは違うでしょ?おかしいでしょ?こんな話がありますか?出来合いの弁当を頼む時点で、高いコストを覚悟するのは当たり前、ってこと。いつも4人分は自前で作っていて、急に来客があって一人分足りない、ってなった時には、「しょうがないから、出来合いの弁当を一つ頼む」というのなら判りますね、ということなんですよ。その弁当は、自前で全部作った場合よりちょっと割高になってしまったとしても止むを得ませんね、ということなんですね。自前で作れば100円なのに、150円とか200円とかになってしまうかもしれない。でも出費になるのは今だけで、明日からも毎日5人分(500円分だね)をずーっと作るよりは「安く済みますよね」ってことなんですよ。派遣を利用している企業は何を吐き違えているのか、正規軍には高給を払い、非正規の増援部隊には「正規軍よりもずっと安い給料だけしか払わない」ということを、仲介者(=派遣業者)にも増援部隊の兵士たち(=労働者)にも強いている、ということです。
こうして派遣社員たちは、苦しい状況に陥ってしまったのではないかな、と思います。それは景気動向が悪かったから、ということも大きく影響しているでしょう。発注者である企業側に交渉の優位性が強まったのです。労働力は過剰感が蔓延し、苦しい立場に追い込まれた兵士たちは「どこでもいいからとりあえず食い扶持にありつければいい」ということで、不利な条件を次々に受け入れてしまったでしょう。そうせざるを得なかったからです。そうした派遣される側の心理につけこんで、派遣会社も企業も搾取したのです。派遣会社がなければ、確かにもっと困っていた労働者たちはいたかもしれない。企業が自力で探すにはタイムラグがある。互いに最適な相手を特定でき難いからです。そうではあるけれども、搾取した側に責任はあるでしょう。雇用契約も金銭貸借契約もちょっと似ていて、弱い立場というものがあるのであって、そうした部分にはそれを是正させる「ルール」の導入・制定が必要になるでしょう。借り手は貸し手と対等な立場である、などという寝言を言っているのは、世間知らずのお坊ちゃんか、人に頭を下げたことのないような偉い学者大先生さま(笑)くらいではないでしょうか。それと同じようなものだ、ということですね。