いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

続・派遣は悪か?

2007年08月25日 23時36分55秒 | 社会全般
前の記事の続きですが、字数がオーバーしたので、別にしました。


6)何が間違っているのか

これまで見てきたように、本来的には企業が派遣労働力に対して、正規の同じクラスの労働力よりも一時的には多く払わねばならないということです。企業が負担するべきコストは、タイムラグ減少分、育成に関する手間暇分、新卒の中途退職リスク分、仲介手数料分、などです。労働者側からすると、同一店舗のコンビニのレジと商品陳列のような「移動障壁の殆どない場所」を移動するのではなく、異なる企業間の移動となるので移動障壁は高くなるでしょう。その分は「多くもらえなければならない」ということになります。更に、投入された場所で短期間に成果を挙げねばならないので、期間が長い場合に比べるとやや不利ではあります。成果が大きい場合であっても、報酬が増えることは殆どないでしょうからね。成果が小さくなるとすれば、自分の評判や評価が低下する恐れがあるので、そのリスクに見合う上乗せが必要ということになるでしょう。

弁当屋で「完成品」を購入する場合には、自分で作る手間暇とか時間を購入するのと同等であって、例えば「カレー弁当」みたいなのを作るとすれば弁当屋で購入すると500円かかるが、自分で作れば100円で作れてしまう、というようなものです。完成品というか、既に出来上がったものを調達するということになれば、割高になるのですね。派遣を利用している企業は、自前で作るのを止めたのに、割高な完成品を求めるのではなく、「自前で作る100円よりも安いカレー弁当を買わせろ」というようなことを求めている、ということです。工業製品みたいに、ネジのようなものを自分でたった一つだけ作るよりも、大量生産の恩恵を受けた市販品を購入する方が安く済む、ということも有り得ますが、労働者はこうした工業製品とは異なるのだし、大量生産も難しいので自前で作るより完成品購入の方が割安ということにはならないでありましょう。

企業というのは、戦線に敵が押し寄せてきていても、「何処に余っている砲兵がいるか」ということを発見し難いのです。発見するにも時間がかかるし、その間も戦闘は続いているわけですから、自力で探してきて増援部隊を戦線投入するとなればタイムラグが生じてしまうことになるのです。一方労働者側は、自分は手が空いていても「何処の戦線で自分が必要とされるのか」ということとが正確に判りません。なので、自分で必要とされそうな戦線を探し当てるとなれば時間も労力もかかってしまいますが、紹介屋の指示に従えば必要とされている戦線が容易に見つけられるのです。「伍長クラスの狙撃兵(=労働者個人)」も「戦線に張り付いている正規部隊(=企業)」も、戦線全体を見渡せるわけではないので、どこに行けば互いを発見できるのか判り難い、ということです。
紹介屋は戦線全体を見渡せるので、必要とされている戦力、必要な地点、余っている戦力、の双方がわかっているのです。なので、マッチングを行いやすい、ということになります。


間違いの元になるのは、こうした紹介屋は「情報の差」や「交渉力の差」につけこんでいるということです。企業もそれに便乗していると言えます。

発注側企業は、「多くの紹介屋がいるから、他に頼むよ」ということを暗に交渉力として利用している、ということです。「支払う給料は1等兵、でも曹長の働きができる人材を」ということを求めるか、派遣会社に「仲介手数料を下げろ」と求めるということです。仲介手数料がどういった仕組みなのか判りませんけれども、例えば「派遣する人材の月給の○%」みたいになっているならば、手数料引き下げは自動的に「月給引下げ」に直結してしまいがち、ということです。なので、派遣会社の競争激化によって、仲介手数料の引下げ競争が起こってくると、派遣労働者の「月給引下げ」とか、仲介手数料減少分を派遣する労働者の取り分(賃金)からピンハネしてしまうことが有り得る、ということです。

次に労働者と派遣会社との交渉力を考えると、派遣会社は全ての情報を得ているので有利な立場ですし、最大の理由としては労働者側が「仕事にありつけないと生きていけない」ということを知っている、ということだろうと思います。本来的には、派遣される人は、戦線(企業)から次の戦線(企業)へと空白が少なく移動できるというメリットを享受するはずでしたが、派遣会社は「次がないと困るでしょう?」という足元を見た交渉を行うことが可能になってしまうのです。同じ軍曹でも、「安すぎて引き受けられない」と全部の軍曹が断れば値崩れするのを防げるかもしれませんが、安い水準を提示されたとしても背に腹は替えられずに応じてしまう抜け駆け者が現れると、軍曹の報酬はみるみる下がっていき、伍長とか1等兵レベルの報酬でも引き受けざるを得なくなってしまうのです。派遣される労働者がバラバラではなく、一個の意思決定しか持たないとすれば「軍曹として引き受けられる水準の報酬」ということがたった一つだけ決まります。本来的にはそれが「妥当な水準の報酬」ということのはずなのですね。そこからの若干の上下はあるにせよ、大きく下がるということにはならないはずなのです。株価の変動みたいなものかもしれません。「安く売ってしまって損した」と思う人もあれば、「安く買えて得した」と思う人もある、ということです。株価ならば、「同一の市場」で他の価格交渉の様子が概ね判る、ということになっていますが、労働者と企業の交渉は外部の人たちからは判りません。そこに問題があるのですね。「軍曹の現在の相場」というのが、労働者側にもはっきりとは判らない、ということです。

もしも不当な条件しか出さない企業があるとして、そこに誰も戦力が手当てされないとなれば、困るのは最前線で戦っている人々であり、防衛作戦は失敗して敵に突破されてしまうでしょう。レジの例で言えば、慢性的に列になってしまい、客の不満度が大幅に上昇して客が次第に離れていくということです。不当な条件しか提示しない企業であれば、戦線を維持できなくなって退却を余儀なくされる、という「しっぺ返し」を食らうことが望ましいのですが、競争の激化した紹介屋たちの中からは「目先の仲介手数料」に目が眩んだ業者が現れるので、どうにかして戦力が調達されてしまう、ということなのですね。これが良くないのです。

結局、交渉力の差を見れば、「企業」>「派遣会社」>「労働者」、という順になっていて、それぞれの交渉条件の情報が不透明になっていることが問題だろうと思います。株式市場のように、価格の状況が双方ともに正確に把握できるとか、オークション方式みたいになっているとか、労働者の能力について正確に分析し序列化できるとか、そういったことでも達成できない限り、交渉力の差がモロに出てしまっているということかと思います。


あとは、5)でも述べたように、企業は大きな勘違いをしているのではないかと思います。「正規雇用よりも、派遣社員は安く済む」ということを、トータルの費用ではなく「月給」という目の前の賃金が下がるものだ、と思い込んでいる、ということですね。
例に書いたコンビニの「店長」、「パートさん」、「バイト君」という労働者がいる時、「店長」が正規職員で他の非正規の人よりも賃金が高く、店長にしかできない業務があるというなら、「パートさん」や「バイト君」からは「まあそうだろうな」とか「仕方がないかな」と考えるかもしれません。ところが、「バイト君」が新卒で正規雇用、「パートさん」がもっとベテランの非正規雇用、ということで、業務内容も実力も大差ないとなればどうでしょうか。いかに「バイト君」の将来性に先行投資をするといっても、「バイト君」と「パートさん」の業務にも働き方にも何ら違いがないとすれば、「パートさん」から不満が出てくることは容易に想像できますね。今の企業の多くがやっているということは、まさしくこのような格差を意図的に与えている、ということなのです。

長期的にこうした雇用慣行が継続されていけば、いずれ派遣される側からの不満が募っていき、派遣市場そのものが壊れる可能性がありますね。労働者が疑心暗鬼にかられてしまい、信用しなくなるからです。増援部隊の士気は落ちていき、戦果は格段に悪くなっていくでしょう。そうなればよい人材は来なくなり、「下士官クラスを」とか「将校クラスを」と頼んでも、新兵レベルの完成度しか持たない人しか来なくなるでしょう。企業側も、頼んでも仕方がないな、となれば、誰も頼まなくなり派遣会社は潰れるだろう。

別な書き方をしてみます。
企業は増援部隊を頼まなければ戦線が維持できないということを最初から知っていながら、敢えて正規軍の配備を減らして「増援を頼む」ということを求めているのです。家庭の夕食を作る時、本当ならば4人分作らねばならないのに、初めから判っていながら3人分しか作らずに、残った1人分の夕食を「出来合いの弁当を、今作った料理よりもちょっと安い値段で買わせろ」と求めているということです。4人分を自力で作れば400円かかる夕食を、3人分の300円にしておいて、残り100円分で「80円の弁当を買わせろ」と言っている、ということなんですよ。20円浮かせられる、って自慢しているんですよ。これは違うでしょ?おかしいでしょ?こんな話がありますか?出来合いの弁当を頼む時点で、高いコストを覚悟するのは当たり前、ってこと。いつも4人分は自前で作っていて、急に来客があって一人分足りない、ってなった時には、「しょうがないから、出来合いの弁当を一つ頼む」というのなら判りますね、ということなんですよ。その弁当は、自前で全部作った場合よりちょっと割高になってしまったとしても止むを得ませんね、ということなんですね。自前で作れば100円なのに、150円とか200円とかになってしまうかもしれない。でも出費になるのは今だけで、明日からも毎日5人分(500円分だね)をずーっと作るよりは「安く済みますよね」ってことなんですよ。派遣を利用している企業は何を吐き違えているのか、正規軍には高給を払い、非正規の増援部隊には「正規軍よりもずっと安い給料だけしか払わない」ということを、仲介者(=派遣業者)にも増援部隊の兵士たち(=労働者)にも強いている、ということです。


こうして派遣社員たちは、苦しい状況に陥ってしまったのではないかな、と思います。それは景気動向が悪かったから、ということも大きく影響しているでしょう。発注者である企業側に交渉の優位性が強まったのです。労働力は過剰感が蔓延し、苦しい立場に追い込まれた兵士たちは「どこでもいいからとりあえず食い扶持にありつければいい」ということで、不利な条件を次々に受け入れてしまったでしょう。そうせざるを得なかったからです。そうした派遣される側の心理につけこんで、派遣会社も企業も搾取したのです。派遣会社がなければ、確かにもっと困っていた労働者たちはいたかもしれない。企業が自力で探すにはタイムラグがある。互いに最適な相手を特定でき難いからです。そうではあるけれども、搾取した側に責任はあるでしょう。雇用契約も金銭貸借契約もちょっと似ていて、弱い立場というものがあるのであって、そうした部分にはそれを是正させる「ルール」の導入・制定が必要になるでしょう。借り手は貸し手と対等な立場である、などという寝言を言っているのは、世間知らずのお坊ちゃんか、人に頭を下げたことのないような偉い学者大先生さま(笑)くらいではないでしょうか。それと同じようなものだ、ということですね。



派遣は悪か?

2007年08月25日 17時59分10秒 | 社会全般
最近注目を集めているようなので、考えてみました。

参考までに、私自身のバイト経験というのは、全て学生の時しかありません(これまでの記事にもちょっと書いています)。在学中ということで、フリーターとか契約とか派遣といった境遇になった経験はありません。コンビニでのバイト経験はなく、スーパーは結構ありました。日雇い派遣みたいなのは、当然ありました(笑)。ある会社に8時まで集合し、そこで作業服(タダで貸してくれる)に着替え、支配人みたいな割り振り係のオジサンに名前を呼ばれて、”出動”ということになります。派遣場所は、引越し屋、ピアノ運搬、古紙業者、コンクリート工場、倉庫などで、毎回バラバラでした。滅多にこない学生さんとかが名前を呼ばれずに終わってしまい、人が余ってしまうこともあり、その場合には、適当な作業をさせられて、半日程度働いて半分の給料(2000円)を貰って帰っていたようです。他には、大学生協みたいなところに出る単発のバイトで(確かくじ引きだった)、ホテルなどの展示会や販売会みたいなイベントの設営とか。深夜帯に作業なので時間の割りに賃金が高く、おいしいバイトでした。


1)労働力の調節ということ

とりあえず、あるコンビニがあって、そこで働く場合を考えてみよう(正確には色々なシフトとかあるのでしょうけど、大雑把にということで)。メンバーは店長とバイト君とパートさんとします。レジは2台で、この3人が同時に勤務しているものとします。
店の状況というのは色々な場面があると思いますけれども、もしも、3人が職種によって業務を固定化していると、どうなるか考えてみます。これはどういうことかというと、店長は店長だけの業務を行い、他の業務を行わないということです。同じく、バイト君はバイトの仕事だけ、パートさんはパートの仕事だけ行う、ということです。すると、例えば、レジは店長のみが行う、という決まりになっているとしますと、客が混んできて、レジに6人くらい並んでいても他の人は手を出すことはなく、パートさんは商品陳列だけに専念し、バイト君は床磨きを黙々とやっている、みたいな感じです。

このように業務が固定化されていると、効率は悪くなりがちでしょう。決まった仕事にはすぐ慣れるかもしれませんが、先の「レジに行列」に限らず、商品が大量に搬送されてきた時などには、パートさんが死に物狂いで商品を出しても中々進まない、ということになってしまいます。他にも、バイト君が不慣れの為に宅配便の手続に時間が掛かってしまうような時、手馴れた店長とかパートさんが代わりにやって、バイト君は後ろの並んでいた客を隣のレジでサクサク会計する方が早いということもあるかもしれません。宅急便の作業なんかは、誰もいない空いている時間に改めて教え込んでおけばいいのです。このように、レジが混んできたなという時には、もう1台のレジで直ぐに捌いてしまった方が時間が短縮でき、客のイライラ度も軽減できますね。商品の伝票チェックとか陳列も、空いている時間などを利用して、みんなでやった方が直ぐに終わりますよね。結局のところ、メンバーが無駄に待機している時間を少なくして、レジに集中投入するべき時にはレジに多く割り当て、客が来てない時には商品陳列や清掃に時間を当てるといった柔軟性がある方がよいということです。メンバーの仕事は固定化されていない方が、場面に応じて弾力的に対応できることになります。

戦闘とも似ていて、敵が大群で押し寄せてきていて不利な状況となっている時、これを押し返すとか防衛するということを考えるのであれば、手薄な部分に戦力を臨機応変に回すことが必要なのです。厳密に固定化されているよりも、局面に応じて弾力性のある運用が必要、ということです。仕事の量に波があって、戦力を多く投入せねばならない局面で人員を増強し、量が減少する時には、「他に回す」というのが効率的でしょう。派遣の意味というのもこれとほぼ同じで、社内の部署に固定化した人員を配置しておくよりも、大量投入が必要な場面で増強するべき「戦力」として活用するものである、と思います。

上の例でいうと、コンビニの「店長」が正社員、「パートさん」や「バイト君」は派遣の人、ある会社が「レジ」、別な会社に「陳列」「伝票整理・チェック」「床掃除」という具合になっている、というようなことでしょうか。「コンビニ業務」というスキルを持つ労働力が適宜移動するという弾力性を持つということが、派遣という意味合いなのだろうと思います。


2)企業間の労働力移動は難しい

コンビニの例であれば、同じ店舗内なので店長ばかりではなく、パートさんもバイト君も今どこが混んでいるか、ということが見分けられます。どの仕事を優先的にやればよいか店長さんが指示してもいいし、自ら考えてやることも可能です。それは労働者自身が、仕事の量とか手薄な部門とかを認識でき、判断できうるからです。

しかし、企業間の移動であると、労働者には外見上から中々知ることができないのです。あちこちの企業に「今、大混雑中です、事務員緊急大募集中です」みたいな旗が立っているわけではありません。混んでいるのが「レジ」なのか、「陳列」なのか、みたいなことが判断できない、ということです。となれば、誰かが「レジに行って下さい」みたいな指示を出さねばならないのですね。その役割を担っているのが派遣会社ということになるでしょうか。労働者と企業だけしか存在しない場合に比べると、多分労働力の移動速度とか正確性がアップするでしょう。両者の仕事の状況という情報を知っており、手が空いている状態の人と混雑している部署との両方が同時に判らないと戦力を的確に移動させられないのです。労働者も企業も、自分の側の状況だけを知っていますが、相手方のことはよく判りませんからね。なので、仲介役がいることで、スムーズになるということになるでしょう。

旧来の方法であると、企業が求人を出してこれに誰かが気付いてくれて、労働者が応じてもよいという場合のみでしたので、時間のロスとかが多く、労働者にしても短期の仕事しか就けないことのリスクを負わねばならなかったのです。派遣会社があると、これよりは時間的なロスを縮小でき、労働者側も失業のリスクを軽減できる、というメリットはあるはずでした。現実には、こうしたメリットよりも非難の方が大きくなりつつあるのかもしれませんが。


3)派遣の特性を考えてみると

コンビニの例で見れば判るように、本来「部署間を移動しても賃金が同じ」ということが必要なのです。レジから商品陳列に移動した途端に給料が下がってしまうとか、伝票チェックから床掃除に移動したら時給が安くなるとか、そういうことはないわけです。ですので、ある労働者のスキル区分が「○○オペレータ」ということなら、その職種に対して賃金が一定水準以上になっていることが必要なのです。決して「正社員よりも賃金が安いのが派遣」ということではないのです。あくまで、労働力と仕事の量の不均衡を減らし、手薄な部分に効率よく戦力を配分する為のシステムであるはずです。労働者側としては、短期需要であるとしても、仕事がなくなるという非効率を回避でき、頻繁に行き先が変わるという環境変化の大きな不利益を受けるとしても、仕事があるということの方を選択するのです。

先のコンビニの例で考えれば、レジが列になってしまって手薄である時に、床掃除という部門から応援の戦力が突如現れるようなものです。レジも陳列も床掃除も足りている時には、普通のコンビニであれば「どこかに消えていてくれ」ということはできませんよね。「次のレジが混雑する時まで、どこか消えていてくれ」という風にはできないわけです。でも人材派遣というのはそれが可能になる、ということなのです。「レジ」(ある企業A)も「床掃除」(ある企業B)も足りている時には、みんなは知らないけれど「見えないどこか」(ある企業C)で働くことができるのです。でも、大変混雑して「レジ」(ある企業A)の人手が足りない、という時には、派遣してもらえるということなのですね。通常のコンビニであれば、レジと床掃除などの間で非常に短い時間の中で頻繁に移動が行われますが、一般の企業間ではそこまで短期間で移動させられませんね。なので、数ヶ月単位とかで移動ということになるのでありましょう。

4)企業側のメリットとは

派遣の有利な点は労働力が固定的ではないことで、例で何度も書いている通り、手薄な部分に即座に戦力を補強できる、ということなのです。補強までの時間的ロスを小さくし、必要な時に必要な分だけ手当て可能だ、ということです。もう一つは、一から教育していく手間が省ける、ということです。新兵で取って自力で育てていく必要がなく、「おーい」と呼ぶと戦力が増強される、ということなのです。これもタイムラグを少なくすると伴に、戦力がさほど必要でなくなった時には、敢えてそこに戦力を貼り付けておかなくても済む、ということなのです。

コンビニの例で考えると、これまではレジが混雑して並び始めたらそこで「誰か」をレジ専属で採用して、レジのやり方をいちいち教え込んでいたわけです。客が並んでいる前で、新兵に教えながら尚且つ会計業務もやって、ということだったのですね。でも、「おーい」と呼ぶとどこからか「レジのできる人」という増援が現れて、レジをやってくれると大変有難いよね、ということなのです。しかも細々と教えなくてもやってくれるわけですからね。で、レジが混雑しなくなったら、「もういいよ」と言ってあげると、どこかへ行ってくれます。旧来であれば、レジの混雑が終わった後にも一生雇ってレジに配置しておかねばならなかったのですから。

企業はこういうメリットを享受するわけですから、そのコストを払うのが当然なのですね。


5)派遣の賃金と企業負担はどうなるか

労働者の賃金というのは、その労働者本人が持っているスキルに応じて決められるのが普通でしょう。代替の利きにくい技能を有していて、他に頼むのが難しいという人ならば当然高くなりますし、需要が多いならばやはり高くなるでありましょう。

変な例で申し訳ないですが、兵隊さんだと言いやすいのでご容赦を。

企業が「伍長クラスの砲兵を」と頼めば、そのクラスの兵隊を派遣する、ということです。砲兵の需要が高ければ、この伍長の取り分は多くなります。伍長クラスよりももっと上のクラスを頼みたければ、例えば「少尉クラスを」ということになりますが、希少価値が高くなるし能力が高いので賃金は当然高くなります。「一般の2等兵でいいです」とかならずっと低い賃金であろうし、「軍曹とか曹長レベルの狙撃手」ならそれなりに高い、という具合に本来的には職種やクラスで違いがあるでしょう。これらは、派遣要請側にとっては、「今、目の前にいない戦力」を頼むわけで、自前でこれから「一般の2等兵」や「軍曹レベルの狙撃手」を育てていく手間と時間を買うわけですから、「高い費用を払うのは当然」ということになります。つまり、自前で育てた兵士よりも、即席で雇い入れる兵隊の方が「賃金は安く済む」というのは、本来的に大きな誤りであるはずなのです。安いのであれば、「クラスが下の兵隊」しか雇い入れられないはずです。「本当は曹長レベルがいいんだけど伍長で我慢しよう」ということなんですよ。

トータルで考えれば、正社員として雇うよりも企業の払う費用は小さくなります。
戦力を一時的に増強したとしても、防衛作戦が一段落して必要なくなれば、「どこかに行っていいよ」ということにできるからですよね。軍曹に応援に来てもらって、敵が引いたなら、「もう軍曹はいらない」ということで、それ以前の戦力で間に合うということなのです。レジが混んで一時的に2人体制にしても、客がいなくなればレジではなく陳列や床掃除に回ってもらった方がいいわけですから、それと同じなんですね。正規雇用だともっと長期間会社に置かねばならないので、軍曹としてずーっと雇っておくとなれば、費用がかさむということになるのです。軍曹が必要な時に必要な分だけ、ということなので、軍曹がずーっと存在している時よりも、「いなくなる時の分」だけ得ですよね、ということです。

ところが、現実には「正規で雇うよりも賃金は少なく済む」ということが、「賃金は低く済む」ということにすり替えられてしまっているのだと思います。軍曹の賃金は軍曹の賃金のままに決まっているはずなのに、です。軍曹を頼んでおいて、「1等兵の給料しか払わないよ」と企業側が主張し、そういう慣行ということにされてしまっているのです。ここが大きな間違いだろうと思います。

そもそも、戦力を頼む側(企業)は増援を頼むという時点で、自前で育てた「軍曹の給料」と「派遣されてきた軍曹の給料」では、最低限で同等かむしろ高くても当然であるはずなのです。それは短期的に戦果を挙げろ、と求められるのだし、周囲には自分の使い慣れた兵卒がゴロゴロいるわけじゃないのに部隊を動かさなければならないのですからね。
(時には扱う機械の方式とかメーカーが違う、ということで部分的に教えてもらわねばならないこともあるかもしれませんが、基本的には派遣される労働者は完成品として送り込まれているのだろうと思います。兵隊でいえば、正式装備の銃が軍隊ごとに違いがある、みたいなものかと。A軍では○○製、B軍では△△製、みたいな。それに合わせた多少の慣れが必要かもね、と。)
その他に、手配料とか紹介料とかの上乗せ分を払うことになるはずです(これは派遣会社の取り分ということになるでしょう)。なので、自前の兵隊よりも多くコストがかかる、というのが本来の仕組みなのです。企業側は一時的に多く払ったとしても、長期で雇い入れておくよりも、福利厚生費とか社会保障費とか企業年金分とか、そういった部分で大幅に得するのと、何度も言いますけれども、戦闘が安定して増援部隊は(傭兵さんみたいなものか?)は必要ないとなれば外に出せる、という大きなメリットがあるのですからね。

ですので、しつこいようですが、企業が派遣で雇い入れた労働者に対して支払うべき費用というのは、「正規雇用の人よりも多い」というのは当たり前、ということです。それでもトータルで見れば、企業は大幅に得している、ということです。
タイムラグを生じる分の時間、育成関係の手間暇、中途退職リスク分などと同等の価値を買うわけで、そのコスト分だけ増加しなければならないということです。更に、仲介マージンを紹介屋に取られてしまう、というのもやむを得ないのです。


6)何が間違っているのか


ちょっと途中ですが、退席するので。後で追加します。