クレジットカードのことを書いたら、コメントを頂きましたので、少しお答えしたいと思います。
まず、そのコメントを再掲致します。
貸金業規制法の最大の問題点は資金需要者にどのような影響を与えるかです。
貸金業の半数以上の廃業によって資金供給をたたれた個人事業主、零細、中小といった資金需要者に対して審査をゆるくした信金や信組がなんとか頑張っているようですが、業務改善命令というがんじがらめの法によってそう簡単に審査をゆるくすることもできませんし、不良債権のリスクが増えていくでしょう。
金利引き下げ派は、多重債務者を救うとために、もっと規制をかけろという正義にのっとった思考です。そこにころっろだまされるわけが、金利引き下げ同時に問題なのは総量規制です。
総量規制をよく勉強すればわかるんですが、条件次第では審査に年収に裏づける資料が必要で、いままで融資を受けていた、年収のない専業主婦は融資対象外。銀行や信金、信組で断られた資金需要者たちは、金利が下がった業者にも総量規制によってことわられてます。融資残高も減って信用収縮になっていますが、まあ貸金業や信販、リースなど総量規制でつぶして、一番こまるのは資金調達のできない、資金需要者なんですが、そこに目がいかない。
たとえば総量規制の団信の廃止にしても、相続放棄すればいいじゃないかとう議論がありましたが、あくまでも死亡した被相続人が多重債務者である場合によります。もし被相続人が財産をたくさんもっていたとしましょう。財産を相続と同時に団信で処理されない、債務まで付帯してきます。
総量規制によって資金需要者にどういう影響を与えるかという議論がない限り、いくら金利を下げたらとういう話をしても、資金需要者に対する影響は解決しないでしょうね。
いくつか論点があると思いますので、分けて書いてみたいと思います。
①ご指摘の『貸金業の半数以上の廃業によって資金供給をたたれた個人事業主、零細、中小といった資金需要者』について
貸金業者が半数以上廃業するのは、昨年の法改正に限りません。かつては8万社とか10万社とか実態が不明なくらいに膨大に存在していたらしいのですが、少なくともその7割くらいは廃業となったでしょう。廃業の結果、資金供給を絶たれたからとて借りられなくなっているとも思われず、貸金の融資額は2兆円超から11兆円まで増加してきたようです。貸金業者の廃業そのものが貸し手消滅を意味しないでしょう。現在でも相当存在しているようですので。
更に、融資残高は大手・準大手で約9割を占めますので、残り1割しかないその他貸金業者の半分が廃業したところで別な業者に代替されるか、供給そのものが消滅しても5~6千億円程度でしょう。過去2年間で弁護士に流れた過払い返還関連費用は約700~1000億円(週刊ダイアモンドに出ていたそうです)らしいので、弁護士の取り分の3倍が返還額なら約3000億円くらいになります。過払い返還費用は今年3月期に大手貸金だけで引当額は1兆円以上らしいこと、返還費用の対残高比率は3%程度は見込まれそうなこと(金融庁資料の06年3月期で約2.3%だったので、たぶん今年3月期はそれよりも多いであろう)を考え合わせると、3年くらいで返還費用と現在債務消滅(過払い返還で相殺される人たちはかなりいるだろう)分だけで1兆円以上の債務残高が消滅することは十分有り得る話です。弱小貸金の半分が消滅するよりも、ずっとインパクトはありますね。
借入1社目の大手貸金やクレジットカードなどから借りられず、廃業する貸金業者からしか借りられないというような資金需要者は、「そもそもハイリスク」な人であり、存在確率は極めて低いでしょう。普通に考えれば、弱小貸金が借入の1社目という借り手はかなり少なく、廃業するような弱小貸金から借りている人の大多数は単なる多重債務者なのではないですか、ということです。もしそうであるなら、多重債務者に対する対策が必要なわけで、貸出することが対策だということにはならないでしょう。
②総量規制について
私は金利引下げ派ですけれども、総量規制については、これをやれと書いたことなど一度もないですね。難しいのではないかということは、既に幾度か書いてますけれども。
中小貸金業者が淘汰されるとはどういうことか
上限金利規制よりも総額規制の方がいい、とか言っていた方々がおられたと思いますので、そちらに伺ってみては。
借金の負荷としては、量より金利の方が厳しいのではないか、とは書きました。
理解に苦しむね
量的規制の場合には、割と長期間の借入の際に不利になってしまう可能性があるのと、事業性資金の場合にも問題はあるかもしれません。ノンバンク系などの5~10%程度の金利ならば、借入額が若干多くなっても返済期間で調節できうるからです。個人事業主のような事業性の高い資金の場合には、量的にそれなりに多くなってしまうこともあるでしょうからね。ただ、返済能力は無限大にはなりませんし、ロールオーバーだけ繰り返して永続できるものでもありませんので、信用供与が機能する水準がどこかにあるのでしょう。それがどこかというのは、判りませんけれども。米国のサブプライム・ローンのように、ある臨界点(のような点?)を超えると債権価値が不透明となって暴落し、信用そのものが機能しなくなってしまうことがあるのでしょう。返済の為の将来キャッシュをどのくらい遠い時点まで見込むのかは、判らないですね。日本の住宅ローンは有担保融資ですし消費者金融とは別ものですけれども、かなり遠い将来(20年30年は当たり前?)まで返済に組み込まれますので、借入総額は段違いに多いですよね。それでも貸倒率は全然低いですけど。
③超過需要について
借りたい人が借りられなくなる、という議論がありますけれども、必ずしも全部に貸す必要性はないでしょうね。
銀行の信用割当の話なんかだと、利潤最大化の金利がどこかにあるのであれば、それを超える金利で貸し手が貸す理由はないでしょう。需要があっても、貸せば損をするだけですからですね。更に、キリギリスタイプの人(金利規制は有効ではない、カウンセリングが必要な層)が多ければ、そのタイプの人たちは常に需要超過を生じるので、キリギリスタイプの人たちだけに貸すことになってしまうので意味がないでしょう。
阪大グループの論文でも似たような記述がありましたのでそちらを見て頂ければ(記事中にリンクがあります)。
ここで重要なのは、
◎貸金市場においては、貸出金利は「高い方から低くなってきた」
というのが現実であり、単峰性のグラフ上で最大利潤となる均衡金利よりも右側で変化してきて、未だに頂点に達する前なのであれば、上限金利規制は意味があるように思えます。
・貸出金利低下で新規借入者が増加→整合的
・金利低下で貸し手利潤は増加→整合的
・上限引下げで貸出額増加→整合的
rの変化領域が何故峰の左側だけで考えられているのかは、私にはよく判りません。
けれども、供給曲線の形状が、金利増大方向に行けば行くほど供給量が増加するのであれば、負の利潤になっているにも関わらず、大量に供給することになってしまうのではないかと思えます。金利(価格)が高ければ高いほど供給が増大していくならば、利潤と金利の関係は単峰性のグラフにはなり得ず、峰の右側部分は存在しないのではないかと思いますね。因みに、金利が増大すればするほど利潤が増大するのは、ヤミ金くらいなもので(笑)、1000%とか3000%であっても回収を継続できるので貸すんですよ。普通は「返済者が倒れる」(一般には貸倒だ)から金利が一定以上に大きくなれば利潤は生まれなくなるだけです。
④団信について
これも既に書いたので、そちらを御覧頂ければ。
貸金業の団信の効果
参考までに、コメントにお書きになっている「被相続人が財産をたくさん持っている」という状況で「相続放棄しますか?」ということを言っておられるのかもしれませんが、たくさん財産があるなら借りてた金を返せばいいだけなんじゃないでしょうか。借りてたんだから、本来は返すべきものでは。持ってるなら返せばよい、全然ないなら放棄すればよい、という話です。
とりあえず。
まず、そのコメントを再掲致します。
貸金業規制法の最大の問題点は資金需要者にどのような影響を与えるかです。
貸金業の半数以上の廃業によって資金供給をたたれた個人事業主、零細、中小といった資金需要者に対して審査をゆるくした信金や信組がなんとか頑張っているようですが、業務改善命令というがんじがらめの法によってそう簡単に審査をゆるくすることもできませんし、不良債権のリスクが増えていくでしょう。
金利引き下げ派は、多重債務者を救うとために、もっと規制をかけろという正義にのっとった思考です。そこにころっろだまされるわけが、金利引き下げ同時に問題なのは総量規制です。
総量規制をよく勉強すればわかるんですが、条件次第では審査に年収に裏づける資料が必要で、いままで融資を受けていた、年収のない専業主婦は融資対象外。銀行や信金、信組で断られた資金需要者たちは、金利が下がった業者にも総量規制によってことわられてます。融資残高も減って信用収縮になっていますが、まあ貸金業や信販、リースなど総量規制でつぶして、一番こまるのは資金調達のできない、資金需要者なんですが、そこに目がいかない。
たとえば総量規制の団信の廃止にしても、相続放棄すればいいじゃないかとう議論がありましたが、あくまでも死亡した被相続人が多重債務者である場合によります。もし被相続人が財産をたくさんもっていたとしましょう。財産を相続と同時に団信で処理されない、債務まで付帯してきます。
総量規制によって資金需要者にどういう影響を与えるかという議論がない限り、いくら金利を下げたらとういう話をしても、資金需要者に対する影響は解決しないでしょうね。
いくつか論点があると思いますので、分けて書いてみたいと思います。
①ご指摘の『貸金業の半数以上の廃業によって資金供給をたたれた個人事業主、零細、中小といった資金需要者』について
貸金業者が半数以上廃業するのは、昨年の法改正に限りません。かつては8万社とか10万社とか実態が不明なくらいに膨大に存在していたらしいのですが、少なくともその7割くらいは廃業となったでしょう。廃業の結果、資金供給を絶たれたからとて借りられなくなっているとも思われず、貸金の融資額は2兆円超から11兆円まで増加してきたようです。貸金業者の廃業そのものが貸し手消滅を意味しないでしょう。現在でも相当存在しているようですので。
更に、融資残高は大手・準大手で約9割を占めますので、残り1割しかないその他貸金業者の半分が廃業したところで別な業者に代替されるか、供給そのものが消滅しても5~6千億円程度でしょう。過去2年間で弁護士に流れた過払い返還関連費用は約700~1000億円(週刊ダイアモンドに出ていたそうです)らしいので、弁護士の取り分の3倍が返還額なら約3000億円くらいになります。過払い返還費用は今年3月期に大手貸金だけで引当額は1兆円以上らしいこと、返還費用の対残高比率は3%程度は見込まれそうなこと(金融庁資料の06年3月期で約2.3%だったので、たぶん今年3月期はそれよりも多いであろう)を考え合わせると、3年くらいで返還費用と現在債務消滅(過払い返還で相殺される人たちはかなりいるだろう)分だけで1兆円以上の債務残高が消滅することは十分有り得る話です。弱小貸金の半分が消滅するよりも、ずっとインパクトはありますね。
借入1社目の大手貸金やクレジットカードなどから借りられず、廃業する貸金業者からしか借りられないというような資金需要者は、「そもそもハイリスク」な人であり、存在確率は極めて低いでしょう。普通に考えれば、弱小貸金が借入の1社目という借り手はかなり少なく、廃業するような弱小貸金から借りている人の大多数は単なる多重債務者なのではないですか、ということです。もしそうであるなら、多重債務者に対する対策が必要なわけで、貸出することが対策だということにはならないでしょう。
②総量規制について
私は金利引下げ派ですけれども、総量規制については、これをやれと書いたことなど一度もないですね。難しいのではないかということは、既に幾度か書いてますけれども。
中小貸金業者が淘汰されるとはどういうことか
上限金利規制よりも総額規制の方がいい、とか言っていた方々がおられたと思いますので、そちらに伺ってみては。
借金の負荷としては、量より金利の方が厳しいのではないか、とは書きました。
理解に苦しむね
量的規制の場合には、割と長期間の借入の際に不利になってしまう可能性があるのと、事業性資金の場合にも問題はあるかもしれません。ノンバンク系などの5~10%程度の金利ならば、借入額が若干多くなっても返済期間で調節できうるからです。個人事業主のような事業性の高い資金の場合には、量的にそれなりに多くなってしまうこともあるでしょうからね。ただ、返済能力は無限大にはなりませんし、ロールオーバーだけ繰り返して永続できるものでもありませんので、信用供与が機能する水準がどこかにあるのでしょう。それがどこかというのは、判りませんけれども。米国のサブプライム・ローンのように、ある臨界点(のような点?)を超えると債権価値が不透明となって暴落し、信用そのものが機能しなくなってしまうことがあるのでしょう。返済の為の将来キャッシュをどのくらい遠い時点まで見込むのかは、判らないですね。日本の住宅ローンは有担保融資ですし消費者金融とは別ものですけれども、かなり遠い将来(20年30年は当たり前?)まで返済に組み込まれますので、借入総額は段違いに多いですよね。それでも貸倒率は全然低いですけど。
③超過需要について
借りたい人が借りられなくなる、という議論がありますけれども、必ずしも全部に貸す必要性はないでしょうね。
銀行の信用割当の話なんかだと、利潤最大化の金利がどこかにあるのであれば、それを超える金利で貸し手が貸す理由はないでしょう。需要があっても、貸せば損をするだけですからですね。更に、キリギリスタイプの人(金利規制は有効ではない、カウンセリングが必要な層)が多ければ、そのタイプの人たちは常に需要超過を生じるので、キリギリスタイプの人たちだけに貸すことになってしまうので意味がないでしょう。
阪大グループの論文でも似たような記述がありましたのでそちらを見て頂ければ(記事中にリンクがあります)。
ここで重要なのは、
◎貸金市場においては、貸出金利は「高い方から低くなってきた」
というのが現実であり、単峰性のグラフ上で最大利潤となる均衡金利よりも右側で変化してきて、未だに頂点に達する前なのであれば、上限金利規制は意味があるように思えます。
・貸出金利低下で新規借入者が増加→整合的
・金利低下で貸し手利潤は増加→整合的
・上限引下げで貸出額増加→整合的
rの変化領域が何故峰の左側だけで考えられているのかは、私にはよく判りません。
けれども、供給曲線の形状が、金利増大方向に行けば行くほど供給量が増加するのであれば、負の利潤になっているにも関わらず、大量に供給することになってしまうのではないかと思えます。金利(価格)が高ければ高いほど供給が増大していくならば、利潤と金利の関係は単峰性のグラフにはなり得ず、峰の右側部分は存在しないのではないかと思いますね。因みに、金利が増大すればするほど利潤が増大するのは、ヤミ金くらいなもので(笑)、1000%とか3000%であっても回収を継続できるので貸すんですよ。普通は「返済者が倒れる」(一般には貸倒だ)から金利が一定以上に大きくなれば利潤は生まれなくなるだけです。
④団信について
これも既に書いたので、そちらを御覧頂ければ。
貸金業の団信の効果
参考までに、コメントにお書きになっている「被相続人が財産をたくさん持っている」という状況で「相続放棄しますか?」ということを言っておられるのかもしれませんが、たくさん財産があるなら借りてた金を返せばいいだけなんじゃないでしょうか。借りてたんだから、本来は返すべきものでは。持ってるなら返せばよい、全然ないなら放棄すればよい、という話です。
とりあえず。