続きです。
前の記事では訴訟について見てきましたが、今度は対策・対応について考えてみます。
今まではC型肝炎患者についての救済措置は特に取られてこなかった、ということで、今後何か対策を考えましょう、というところに来ているのだろうと思います。再三で恐縮ですが、これは薬害肝炎訴訟とは関係のない話であり、主に輸血ということで被害を生じたであろうと予想される方々の救済を考えましょう、というものです。単に製薬会社に金を出せ、というようなものではありません。
まず国の考え方について見てみます。参考になるのはこちらの答弁書です。
衆議院議員阿部知子君提出ウイルス肝炎総合施策に関する質問に対する答弁書
テレビなどに何故か呼ばれる阿部議員ですけれども、個人的には五月蝿いのと何を言ってるのかワケが判らないことが多いので苦手です。まあ、これは関係ないか。
答弁書から重要な部分を拾うと、主に2点あります。
○副作用被害救済制度や感染等被害救済制度は適用できない:
この制度は薬剤の副作用被害について救済する主旨ですけれども、フィブリノゲン製剤やクリスマシンは該当していない、ということです。つまり「薬害肝炎」に対する救済には用いることができない、ということになります。一部を引用しますと、次の通りです。
『血液製剤等の生物由来製品の原材料に混入し、又は付着した感染症の病原体に感染すること等により生じる健康被害(以下「感染等被害」という。)については、医薬品の有する薬理作用によって生じるものではなく、医薬品の副作用による健康被害には当たらないことから、副作用被害救済制度の対象とはならない。』
『昭和五十六年当時、当該製剤は、副作用被害救済制度からの除外医薬品(重篤な疾病等の治療のためにその使用が避けられらず、かつ、代替する治療方法がないため、その使用に伴い予想される副作用の発生を受忍せざるを得ないと認められる医薬品として、機構法第二条第二項第一号の規定に基づき、救済の対象とならない医薬品に指定されているものをいう。)とされていたことから、副作用被害救済制度を適用することは困難である。』
この2つから、副作用被害救済制度は適用できません、ということになります。
『感染等被害救済制度の対象は、新機構法附則第二条の規定により、施行日以後に使用された生物由来製品が原因となって感染等被害を受けた者とされている。』
更に平成16年4月に新設された感染等被害救済制度については、過去に遡及できない為に適用外ということです。施行以降であれば対象になり得ますが、それでは過去の感染患者の方々を救済することができません。
○障害者認定は困難:
これも医療費助成の制度の一部なのですが、適用困難という回答になっていました。
『身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第十五条第四項及び別表においては、都道府県知事は、日常生活に著しい制限を受ける程度であると認められ、かつ永続する障害を有する者に対して、身体障害者手帳を交付することとされている。ウイルス肝炎等の肝臓の疾患については、継続的に治療が行われ、治療により改善の可能性があることから、障害が永続しているとはいえず、身体障害者として認定することは困難であると考える。』
年金に関する認定基準については別に定められているようですので、年金受給対象者のみしか適用されないでありましょう(基準外の方々も漏れてしまいます)。
以上により、現行制度上での救済措置の代表的なものは適用できない、ということです。もう一度書きますと、
○副作用被害救済制度や感染等被害救済制度は適用できない(仮に適用できたとしても薬害対象者に限られるので実効性はあまり期待できず、殆どの患者が漏れるであろう)
○障害者認定は困難
ということです。これが国の基本的考え方です。
舛添大臣が言うように行政側の対策が不十分だった、として、じゃあ自分ではどうしようと考えていたのか言って欲しかったですね。新法を制定するつもり、とかかもしれませんけれど。
では、他に方法はないだろうか、ということになりますが、一応参考になるものはあります。
肝炎の場合ですと72年に研究班設置とか行われてきました。こういう研究班は肝炎に限らず、いくつもあると思いますけれども、そうした疾患のうち、難病のようなものを対象とした制度があります。これは「特定疾患治療研究事業」というものです。国の指定する疾患に対して、医療費の一部を公費負担とすることにより症例数の限られている難病などの治療研究に役立てようというような主旨かと思います。この根拠法は何なのか、ちょっと調べてないので判りません。
この特定疾患の中で、肝炎に関するものは「難治性の肝炎」というのがありますが、但書があって、国が認めているのはこのうちの劇症肝炎だけなのです。つまり医療費の助成を受けられるのは、難治性肝炎に該当するものであって、そのうち劇症肝炎となって急性化したものだけなのです。しかも劇症肝炎であれば経過期間が比較的短期間(数年に及ぶことはまずない)なので、慢性肝炎から肝硬変、肝ガンといった長期経過例には適用できないのです。よって助成期間が最長6ヶ月となっているので、多くの肝炎患者たちは助成対象から漏れてしまうだろうと思われます。
しかし、この特定疾患治療研究事業には、国の指定する疾患と地方公共団体が独自で指定する疾患が存在するのです。で、難治性肝炎のうち劇症肝炎以外のものについても助成している地方公共団体は存在しています。この事業であれば、殆どのC型肝炎患者は救済対象とすることができるのではないかと思われます。実際、公的助成を行っている自治体があるのですから、区分を改めて難治性肝炎(劇症肝炎のみ)というものを、単に難治性肝炎とすればいいと思います。特に、輸血歴とか血液製剤使用歴のある患者については、厳しい検査値基準を適用したりせずに費用助成の対象とすることでいいと思います。勿論、非ウイルス性肝炎の方については、若干適用範囲外となってしまってもしょうがないと思います(従来通り、何らかの基準が適用されるだけでありましょう)。この方法であれば、あまり難しい法改正とか面倒な新たな立法措置も必要なく適用できるのではないでしょうか。
よって、私個人の意見としては
◎「特定疾患治療研究事業」の一部改変(国の指定する疾患に入れる)
によって行うのが一番早いと思います。
因みに、こうした制度適用を言っている国会議員とか、誰かいますか?
多分誰もいませんよ。
はっきり言って、制度も知らない、調べないような連中が多いので、自分たちの手柄目当てとか受け狙いみたいなものばかりを出してくるし、アドバルーンをどーんと打ち上げて目立てばいいだけ、って印象です。どうして医師出身の議員とかゾロゾロいるのに、こういうことを考えないのか不思議です。一体全体、これまで何をやってきたのかと思いますね。要するに、頭数だけ揃っていても、役立たずばかりであれば何らの効果も得られない、ということでしょうか(笑)。自民ばかりではなく、民主党もしかり、社民や共産も一緒です。
前の記事では訴訟について見てきましたが、今度は対策・対応について考えてみます。
今まではC型肝炎患者についての救済措置は特に取られてこなかった、ということで、今後何か対策を考えましょう、というところに来ているのだろうと思います。再三で恐縮ですが、これは薬害肝炎訴訟とは関係のない話であり、主に輸血ということで被害を生じたであろうと予想される方々の救済を考えましょう、というものです。単に製薬会社に金を出せ、というようなものではありません。
まず国の考え方について見てみます。参考になるのはこちらの答弁書です。
衆議院議員阿部知子君提出ウイルス肝炎総合施策に関する質問に対する答弁書
テレビなどに何故か呼ばれる阿部議員ですけれども、個人的には五月蝿いのと何を言ってるのかワケが判らないことが多いので苦手です。まあ、これは関係ないか。
答弁書から重要な部分を拾うと、主に2点あります。
○副作用被害救済制度や感染等被害救済制度は適用できない:
この制度は薬剤の副作用被害について救済する主旨ですけれども、フィブリノゲン製剤やクリスマシンは該当していない、ということです。つまり「薬害肝炎」に対する救済には用いることができない、ということになります。一部を引用しますと、次の通りです。
『血液製剤等の生物由来製品の原材料に混入し、又は付着した感染症の病原体に感染すること等により生じる健康被害(以下「感染等被害」という。)については、医薬品の有する薬理作用によって生じるものではなく、医薬品の副作用による健康被害には当たらないことから、副作用被害救済制度の対象とはならない。』
『昭和五十六年当時、当該製剤は、副作用被害救済制度からの除外医薬品(重篤な疾病等の治療のためにその使用が避けられらず、かつ、代替する治療方法がないため、その使用に伴い予想される副作用の発生を受忍せざるを得ないと認められる医薬品として、機構法第二条第二項第一号の規定に基づき、救済の対象とならない医薬品に指定されているものをいう。)とされていたことから、副作用被害救済制度を適用することは困難である。』
この2つから、副作用被害救済制度は適用できません、ということになります。
『感染等被害救済制度の対象は、新機構法附則第二条の規定により、施行日以後に使用された生物由来製品が原因となって感染等被害を受けた者とされている。』
更に平成16年4月に新設された感染等被害救済制度については、過去に遡及できない為に適用外ということです。施行以降であれば対象になり得ますが、それでは過去の感染患者の方々を救済することができません。
○障害者認定は困難:
これも医療費助成の制度の一部なのですが、適用困難という回答になっていました。
『身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第十五条第四項及び別表においては、都道府県知事は、日常生活に著しい制限を受ける程度であると認められ、かつ永続する障害を有する者に対して、身体障害者手帳を交付することとされている。ウイルス肝炎等の肝臓の疾患については、継続的に治療が行われ、治療により改善の可能性があることから、障害が永続しているとはいえず、身体障害者として認定することは困難であると考える。』
年金に関する認定基準については別に定められているようですので、年金受給対象者のみしか適用されないでありましょう(基準外の方々も漏れてしまいます)。
以上により、現行制度上での救済措置の代表的なものは適用できない、ということです。もう一度書きますと、
○副作用被害救済制度や感染等被害救済制度は適用できない(仮に適用できたとしても薬害対象者に限られるので実効性はあまり期待できず、殆どの患者が漏れるであろう)
○障害者認定は困難
ということです。これが国の基本的考え方です。
舛添大臣が言うように行政側の対策が不十分だった、として、じゃあ自分ではどうしようと考えていたのか言って欲しかったですね。新法を制定するつもり、とかかもしれませんけれど。
では、他に方法はないだろうか、ということになりますが、一応参考になるものはあります。
肝炎の場合ですと72年に研究班設置とか行われてきました。こういう研究班は肝炎に限らず、いくつもあると思いますけれども、そうした疾患のうち、難病のようなものを対象とした制度があります。これは「特定疾患治療研究事業」というものです。国の指定する疾患に対して、医療費の一部を公費負担とすることにより症例数の限られている難病などの治療研究に役立てようというような主旨かと思います。この根拠法は何なのか、ちょっと調べてないので判りません。
この特定疾患の中で、肝炎に関するものは「難治性の肝炎」というのがありますが、但書があって、国が認めているのはこのうちの劇症肝炎だけなのです。つまり医療費の助成を受けられるのは、難治性肝炎に該当するものであって、そのうち劇症肝炎となって急性化したものだけなのです。しかも劇症肝炎であれば経過期間が比較的短期間(数年に及ぶことはまずない)なので、慢性肝炎から肝硬変、肝ガンといった長期経過例には適用できないのです。よって助成期間が最長6ヶ月となっているので、多くの肝炎患者たちは助成対象から漏れてしまうだろうと思われます。
しかし、この特定疾患治療研究事業には、国の指定する疾患と地方公共団体が独自で指定する疾患が存在するのです。で、難治性肝炎のうち劇症肝炎以外のものについても助成している地方公共団体は存在しています。この事業であれば、殆どのC型肝炎患者は救済対象とすることができるのではないかと思われます。実際、公的助成を行っている自治体があるのですから、区分を改めて難治性肝炎(劇症肝炎のみ)というものを、単に難治性肝炎とすればいいと思います。特に、輸血歴とか血液製剤使用歴のある患者については、厳しい検査値基準を適用したりせずに費用助成の対象とすることでいいと思います。勿論、非ウイルス性肝炎の方については、若干適用範囲外となってしまってもしょうがないと思います(従来通り、何らかの基準が適用されるだけでありましょう)。この方法であれば、あまり難しい法改正とか面倒な新たな立法措置も必要なく適用できるのではないでしょうか。
よって、私個人の意見としては
◎「特定疾患治療研究事業」の一部改変(国の指定する疾患に入れる)
によって行うのが一番早いと思います。
因みに、こうした制度適用を言っている国会議員とか、誰かいますか?
多分誰もいませんよ。
はっきり言って、制度も知らない、調べないような連中が多いので、自分たちの手柄目当てとか受け狙いみたいなものばかりを出してくるし、アドバルーンをどーんと打ち上げて目立てばいいだけ、って印象です。どうして医師出身の議員とかゾロゾロいるのに、こういうことを考えないのか不思議です。一体全体、これまで何をやってきたのかと思いますね。要するに、頭数だけ揃っていても、役立たずばかりであれば何らの効果も得られない、ということでしょうか(笑)。自民ばかりではなく、民主党もしかり、社民や共産も一緒です。