舛添大臣は、菅さんにこっぴどく叩かれたせいで、省内プロジェクトチームを設置するつもりなんだそうだ。
薬害肝炎症例一覧 厚労省が調査班 ニュース 医療と介護 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
もう何度も作ってきたんじゃないの?プロジェクトチーム。
それをまたですか?
00年に「肝炎対策プロジェクトチーム」を作ってやってきたではありませんか。違いますか?で、有識者会議で報告書をまとめたんじゃないの。菅大臣当時にもHIV関連でプロジェクトチームをつくってやってたんでしょ?当然血液製剤に関する検討もやってきたんじゃないのですか?だからこそ97年には血液製剤に関する記録の保管・管理の通知が出されたんじゃありませんか。シリーズ最初の記事で挙げた02年8月の報告書で調査は尽きていると思いますけど。あれ以上のことなんて、新たには出てこなさそうですけどね。
これまで記事に書いた中から、大雑把に流れを示しておきます。
87年 青森県で肝炎集団感染発覚
厚生省から製薬会社に調査指示(3/26)
→報告第一報(いわゆる「(昭和)62年調査」)(11/5)=肝炎発症3例
88年 「62年調査」報告第二報(4/5)、第三報(5/6)
87~92年 「62年調査」に加味すべく「プロスペクティブ肝炎調査」(便宜的にこう呼ぶ)
95年 HIV感染調査←平成7年調査
96年 「医薬品による健康被害の再発防止対策について」(7/1)
「非血友病HIV感染調査」(7/31)←平成8年調査
97年 血液製剤に関する記録の保管・管理の通知(6/3)
99年 医薬発第715号(6/10)←血液製剤・輸血に関する指針
00年 肝炎対策プロジェクトチーム設置(11/1)
同月 肝炎対策に関する有識者会議設置
01年 厚生労働省医薬発第166号(3/19)←製薬会社への調査報告命令
=「プロスペクティブ肝炎調査」結果報告(5/18)
肝炎対策に関する有識者会議報告書(3/30)
02年 「プロスペクティブ肝炎調査」結果の追加報告(3/4)
フィブリノゲン製剤によるC型肝炎ウイルス感染に関する調査報告書(8/29)
基本的に、87年調査時点での結果では直近の資料があって、投与年月日が判明し易かったはず。現在から振り返って、80年代の資料を探すとなればそれは大変だが、87年時点では80~87年の資料を探すことがある程度可能であっただろうからだ。418例のうち87年3月以前の投与例については、当時の「62年調査」報告で捕捉されているものが信頼性が高いのではないかな、ということ。
この調査以後の判明例では「プロスペクティブ肝炎調査」によるものであり、それは各医療機関においてまず把握された情報であったろう。HIV関連の感染調査(H7年調査+H8年調査)時点で、問題とされた血液製剤は肝炎ウイルスについても危険性があることは十分認識できていたはずであり、両年の調査の指揮監督に当たっていた当時の厚生大臣は責任を問われても仕方がないであろう。森井さんや菅さんだったそうだが(笑)。実際、97年の通知にしても、血液製剤のトレーサビリティについて整備する目的であったわけで、こうした血液製剤関連施策というのは、02年以前にいくらでも取り組むことができていたであろうし、実際行われていた。
今回の件でも、しつこくプロジェクトチーム設置とか言うのは、これまでやってきたことについての「無知」からくるものが殆どではないのか?要するに、菅さんとかその他民主党議員にしてみれば、「自分が知らない」から官僚が隠蔽していたんだ、企業も隠していたんだ、ということを言い出すのではないか?もっと昔の時点でいくらでも知る事はできたはずであり、違った政策だって考えられたはずだ。自分で知ろうともしない、怠慢な国会議員たちの質問に答える為だけに、省内プロジェクトチームと称して人員をかき集められることになるんだよ。文書をよく読んでみろよ、国会議員なんだから。もう、本当に○○かと。
<ちょっと寄り道:
財務省はデータを隠している、とかテレビで非難していた経済評論家の方にしても全く同じで、自分が知らないこと=隠している、ということにいきなり直結するのは何故なんだろうね(笑)。確かに都合の悪いことは隠し気味かもしれんが、それでも全部を隠蔽しているわけではないからね。自分が知らないからと言って、オマエら隠蔽工作しているんだろ、とか役人を吊るし上げ、自分が知らないのを棚に上げて「答えを教えろ、早く言え!」とか責め立ててるんだよね、野党議員たちは。まずは自分の頭で考えてみろよ。
前から言ってるけど、行政情報は膨大なのでこれを個人だけでカバーするのは大変なのだけれども、せめて厚生労働委員とかの議員は、自分の得意分野でやってるんだろうから、それくらいは頑張れるだろうよ。全部の分野をたった1人でやれ、って言ってるんじゃないよ。「肝炎問題」とかあるなら、せめて攻撃態勢を作る前に、まずよく知ることから始めるべきなんじゃないのか?その為に、何人もの議員が頭数を揃えているんだろうよ。そのうちの誰か1人でもいいので、こういう情報に辿り着けるはずなのに、厚生大臣経験者や医師免許持ってる連中まで揃っていながら、「誰も知らない、考えない、辿り着けない」というのは尋常じゃないよ、って言ってるんだよ。
あれだな、ブログとかでも似ていて、過去の記事に書いてあるから、って言ってんのに、「今日の記事に書いてないじゃないか、情報を隠蔽してるんだろ!」みたいに難癖付けられても、困るよね。知らないのはこっちの責任でも何でもないはずなんだけど、自分が知らないことをもって「隠してるんだろ!」とか言われても、「過去ログ嫁」としか言いようがないよね。ひょっとして「クレクレ厨」って、こういう「自ら知らないのを理由として相手に情報を出せ・今すぐ言えと迫る」派みたいなものなのでしょうか?民○党議員たちはクレクレ厨?>
90年代中頃にはそれ以前に漏れていたであろうと推測される「フィブリン糊」に関する調査も行われた。すなわち、問題表面化した87年以降、各医療機関からの製品情報を製薬会社は追跡していただろうし、それによって418例のうち初回投与年月日が87年4月以降の症例についてある程度捕捉できたのであろう。85年以前の症例は42例しか判明しておらず、多くは86~87年の症例だった。当時の報告ではこれら初期のデータが報告されていたはずだろう。これ以降の症例にしても、プロスペクティブ調査が行われたからこそ捕捉できたのだろうと思う。それが93年頃までのデータとなって残っていたのだろう。製品自体も回収されたりして、大きく変わっていったしね。
担当者を出せ、刑事告発せよ、みたいに豪語していたヤツラは、一歩前へ出ろ。今すぐ名乗り出ろ。
こんだけ時間経過もあって、途中で幾らでも施策を講じることができたであろうに、何もやってこなかったのは一体誰だ?誰の責任なんだよ。
大臣や議員なんじゃないのか。
それから、例の「戦ってる」団体の人たちのブログを見てみた。
薬害肝炎訴訟 リレーブログ B型・C型肝炎患者の早期全面救済を! 三菱ウ社 418名の投与患者を把握
どうやら裁判でウェルファーマ側が「投与証明書の信憑性」に嫌疑をかけ、投与されたかどうだかわかりませんね、みたいに主張したようだね。この企業側弁護士は酷いね。誠意の欠片もないみたいな心象を与えちゃうじゃないの。被害者感情を逆撫でしてもいいことなんかないのに。そうじゃないでしょ。私の知らないうちに投与された、製品には感染危険性があった、というような被害者側主張については受け止めるとして、それ以外の要因(感染可能性の高いもの、例えば輸血例)などを検討していくのでしょ。今更、企業イメージを悪化させるような裁判戦術を選択する意味なんてないでしょう。直接的な投与責任は医療担当者にあるわけで、特に投与時期が88年以降とかであれば、感染可能性と使用利益との比較ということで患者側に伝えておくのが望ましかったであろうけれど、当時にはまだそこまでのインフォームド・コンセントの浸透はなかったやもしれず、投与前に知らされてなかったことを被害者側に追及されたとしても、それは製造側責任ではないと思う。企業側としては、製品の感染危険性をどれほど防ぎ得たのか、というところ一点だけであって、それ以外の要因については立証とか関係ないと思う。求めるとすれば、原告側要因(他の手術を受けた、輸血を受けた…等々)の立証を求めるという主張以外にはやりようがないと思うけど。
話が逸れたが、ここで重要な質問をしよう。
87年の集団感染発覚以後、「62年調査」が行われ88年には報告が上がってきていた。この時点において、C型肝炎(若しくは可能性)について、どのように判別できたであろうか?感染源は特定でき、対処できたであろうか?20年間も放置された、とか非難があるのだが、当時に何ができたのか考えてみるべきではないか。
感染源は、たとえば輸血、医療器具類(注射針?ディスポでないガラスの注射筒?点滴回路?)、医師や看護婦がキャリアとかの可能性が本当に否定できたのであろうか?フィブリノゲン製剤が原因だということが特定できたであろうか?これは、この感染例だけからは判別が難しかったであろうと思う。器具類がウイルスに汚染されていないかどうか、どうやって調べられますか?医療従事者の中に感染源がいるかいないか、どうやって調べますか?できないから、結局は判らんのですよ。血液製剤が疑わしい感染源の可能性あり、ということではあっても、「どんな病気なのか」ということが詳しくは判っていなかった。
もしもこの時点で過去に投与歴のある人たちをカルテから全部割り出し把握したとして、全員に何を伝えるのであろうか?
・どんな病気なのですか?
―わかりません。
・どうなってしまうのですか?
―詳しく判りませんが肝炎症状が出るかもしれないし、でないかもしれません。その後どうなるかも判りません。
・いつまでに判るのですか?
―判りません。一体いつ何がどうなるのか予測できません。
・治療はどうするのですか?
―判りませんが、肝炎症状が出ればその治療をやってみる、ということになりますが、効果はどうなのか判りません。
88年頃に何ができたか、ということになるでしょう。検査?できませんよね。ウイルス検査の方法がなかったのですから。どんな病気なのか、治療法はどうなのか、ということも、もっと後になってから判明してきたのではないかと思います。分類としてC型肝炎というものも、検査も予後に関しても知見の蓄積は少なかった。「強ミノでもやってみるしかないか」とかの程度だったかもしれませんし。当時確立された治療法などなかったでしょう。感染してるのかどうなのかも不明なのに、何をどうすると?
告知を88年時点で可能な限り行ったとしても、それほど劇的な効果が得られたとは到底思えません。輸血はその後でも続いていたわけですし。日本での献血中の肝炎スクリーニングは、恐らく世界的に見て最も早かったでしょう。それが登場するのは、もうちょっと後の話です。肝炎の症状が出現して初めて、感染していたのだな、ということが判明するだけで、感染しているかどうかの検査がない限り、無症状の人たちにはどうにもできなかったと思いますよ。
ですので、62年調査の後であっても、第一に感染源の特定は困難だったかもしれない、第二にウイルスの検査は不可能だったので何もできなかったであろう、ということなのですよ。
一応、疑いを持ちつつ「発症者の出現をフォローする」ということになったのではないのかな、と思いますよ。
大阪原告16番さんがリストに名前がありながら告知されてこなかった、ということらしいですが、いつの時点で感染を知ったのでしょうね。自分自身で知るとすれば、肝炎症状が出たか、偶然検査してみたら陽性だった、ということなのでしょうか。02年以前に知っていたのであれば、リストに載ってる方々の多くは自分自身で知っている可能性が高いだろう、ということと整合的ではあります。
製剤投与を受けた約26万人の方々のうち、
①87年調査以前に投与された
②02年まで一度も検査してない
③02年まで無症状で経過
という方々は、病状が進展しているかもしれないので、問題になるであろう、ということです。
けれども、そのような方々は③より肝炎症状出現例でないので、リストには載ってきません。また、②より抗体検査も受けていないのでやはりリストには載ってきません。リストに掲載されている方々は、”02年以前”に「肝炎症状が出た」か「HCV検査を行い陽性が確認された」人なのですよ。故に、症状が出れば多分治療を受けており、本人が知っているであろうと推定されますし、検査を受けている場合でも医師が検査結果を知らせるはずであろうから、やはり本人は知っている可能性は高いであろう、ということなんですよ。
88年以降は肝炎症状が出現すれば追跡されている、投与する医療側の投与判断も危険性を認識した上で選択している、投与適用は変更された(後天性は除外)、薬剤変更などが行われた、などから、恐らくそれ以前の投与例と状況は異なっているでありましょう。追跡されうる数も、問題発覚後の方が多くなると思われます。
最後に、告知の問題を別な角度で考えてみます。
医師は基本的に守秘義務があります。そうすると、問題発覚後の調査などで患者を特定できるような資料を提示することは、基本的には問題があるのではないでしょうか。患者本人の同意を得るとかであればいいのかもしれませんが、その時に医療側がどんな説明をするべきであったのか、みたいなことが問題とされるかもしれません。製薬会社が「公式に患者情報を得ていた、知っていた」ということになれば、守秘義務違反の責めを負わされる心配があったのではないでしょうか。この情報が厚生省にもたらされる、ということであっても、基本的には同じですよね。情報を出しなさいという命令を、厚生省が医療機関に直接下していたのであれば、守秘義務違反には問われないかもしれませんが、果たしてそういう状況だったのでしょうか?
法的評価はどうなるのか判りませんが、違法性のある手段で人物のデータを入手していた場合、これを基にその人物にとって重大な事実を知ったなら、告知義務は発生するのでしょうか、ということです。義務ですよ?義務。
私にはよく判りませんけれども、厚生労働省担当者が「リストを隠していた」というのは(製薬会社の場合だと部分的には正しいかもしれませんが―特に裁判での主張は隠していたも同然という印象を与えるが)真実ではなく、公開情報として報道資料にあったし、誰でも探し出せるものでありました。
リストに載っていて02年以前に感染を知りえなかった方々というのは、恐らくいたとしてもかなり少なく、その主な責任所在は検査した医師や医療機関にあるでしょう。
守秘義務違反を問われる可能性が高い非公式情報が実名や住所などであって、この非公式情報を基に告知義務があったのか否かという問題は残るでありましょう。
圧倒的に多いのは、感染率から推定される潜在的感染者の方々で、それはリストには出ていない方々なのです。