9
イケダの操縦するジュウハクは、サポート部隊からちょっと離れてしまっていたが、トルコ軍の救援もあってゲリラからは逃げ切れたのだった。そして、ようやく特機の支援部隊近くまで後退してきていた。
田中1佐から、新たな指示が来た。
増援部隊はそっちに向かっている、距離約8km、ジュウハクの射撃を開始、目標地点はこちらで誘導する、とのことだった。イケダはハッチを開き、最大連射を開始したのだった。1分間に15発の射撃ができ、誘導地点を線状に指定できたので、路上攻撃は割と簡単なのだった。装甲車の移動速度が速い為迫撃砲が遅れて着弾していたが、他の兵員輸送トラックなどは簡単に停車に追い込めた。とりあえず接近を阻止することさえできれば、特機の部隊を撤収できるだろう、と田中は考えていた。
バードからの映像でとりあえず兵力の大半はこの場に止めておけたが、装甲車だけは未だ向かってきていた。特機のサポート車両は殆ど無防備に近いので、装甲車相手ではさすがに歯が立たなかった。警護の2個中隊が何とか食い止めてくれることを期待するしかないか、…こればかりは人間の行う戦闘だから、特機にはどうしようもないからな…田中には、この装甲車を止める手立てが思いつかなかった。
田中は秀太、イチロー、ユキヒロに撤退を命じた。
残党はごく僅かであったし、今回の作戦では十分な戦果が得られたと判断されたからだった。特機の支援部隊はガンタンク、サンゼロやスネークのピックアップして、ジュウハクのいる地点まで戻ってきた。ジュウハクは敵の増援部隊を止めるために、射撃を続けていた。装甲車は依然としてこちらに向かっており、ジュウハクでの攻撃は困難な範囲内に迫ってきていた。
サンゼロはまだ動かせるのか?と田中が確認すると、遅い速度なら動けます、主砲はもう狙っては撃てません、真正面でなら射撃可能ではないかと思います、というサポートからの返事であった。なら、こいつを囮に使おう、イチロー、悪いな、また囮役で、と田中はニタリと笑いを浮かべた。
サンゼロを道路上に、装甲車に対峙させるように配置、他の部隊は全員隠れて、中隊が持ってる対戦車ロケット弾で装甲車を攻撃せよ、と田中は命じた。
いよいよ装甲車が戦闘距離に近づいてきた。
サンゼロは敵装甲車方向に主砲を放ったが、当たらなかった。地面を掘っただけだった。すると敵装甲車は進路を変えながら、サンゼロ目がけて主砲を撃ってきた。車体下部に命中し、完全に移動不能となってしまった。それでも装甲車は砲撃を止めず、サンゼロを攻撃してきた。敵の装甲車がサンゼロへの攻撃に夢中になっている頃、中隊所属のロケット弾の射手は肩に発射器を担いでいたのだった。白煙を上げて発射された誘導弾は、装甲車の車体後部にヒット、直ぐに動きを止めた。装甲車はサンゼロをいたぶった罪により、破壊されたようなものだとイチローは思った。
10
その後、ベースまで戻った特機部隊その他は、○○谷での作戦を終了してトルコ軍と伴に同地域から撤退した。
今後もZ国での戦闘は続くであろう。この戦争は、自分が生きてる間には、終わりがないのではないかな、と田中1佐は思った。
特機システムは、十分実戦でも使える、との結論に達した。しかし、課題もいくつか見えてきていた。
○通信システムに大きく依存するので、この妨害などに遭うと情報が著しく不足したり操作不能などに陥り、戦闘不能状態となるであろう。強力な通信・データ転送システムの維持が必須である。
○距離的な壁が存在し、タイムラグを生じることによる反応の遅さや不正確さという問題がある。
○高速で移動する高い防御力を持つ戦力に対しては、歯が立たない。しかし、そうした正規戦力の多くは、航空戦力や誘導ミサイルなどの攻撃目標となり易いので、まずはそちらで対処するということになるだろう。
○非正規的な戦力に対し隠密的に攻撃する、という点においては、有効性があるだろう。
○人的被害が最小化できる。特に少子化の進んだ日本では有効性が高い。
○オペレーターの能力、習熟度などに依存する部分がまだ大きい。映像などから瞬時の判断や操作を行うので、その為の能力開発訓練が必要である。
こうして陸上自衛隊初の海外派兵は終わったのだった。
次からは、テストケースなどではなくなり、常に実戦ということになるのだった。
イケダの操縦するジュウハクは、サポート部隊からちょっと離れてしまっていたが、トルコ軍の救援もあってゲリラからは逃げ切れたのだった。そして、ようやく特機の支援部隊近くまで後退してきていた。
田中1佐から、新たな指示が来た。
増援部隊はそっちに向かっている、距離約8km、ジュウハクの射撃を開始、目標地点はこちらで誘導する、とのことだった。イケダはハッチを開き、最大連射を開始したのだった。1分間に15発の射撃ができ、誘導地点を線状に指定できたので、路上攻撃は割と簡単なのだった。装甲車の移動速度が速い為迫撃砲が遅れて着弾していたが、他の兵員輸送トラックなどは簡単に停車に追い込めた。とりあえず接近を阻止することさえできれば、特機の部隊を撤収できるだろう、と田中は考えていた。
バードからの映像でとりあえず兵力の大半はこの場に止めておけたが、装甲車だけは未だ向かってきていた。特機のサポート車両は殆ど無防備に近いので、装甲車相手ではさすがに歯が立たなかった。警護の2個中隊が何とか食い止めてくれることを期待するしかないか、…こればかりは人間の行う戦闘だから、特機にはどうしようもないからな…田中には、この装甲車を止める手立てが思いつかなかった。
田中は秀太、イチロー、ユキヒロに撤退を命じた。
残党はごく僅かであったし、今回の作戦では十分な戦果が得られたと判断されたからだった。特機の支援部隊はガンタンク、サンゼロやスネークのピックアップして、ジュウハクのいる地点まで戻ってきた。ジュウハクは敵の増援部隊を止めるために、射撃を続けていた。装甲車は依然としてこちらに向かっており、ジュウハクでの攻撃は困難な範囲内に迫ってきていた。
サンゼロはまだ動かせるのか?と田中が確認すると、遅い速度なら動けます、主砲はもう狙っては撃てません、真正面でなら射撃可能ではないかと思います、というサポートからの返事であった。なら、こいつを囮に使おう、イチロー、悪いな、また囮役で、と田中はニタリと笑いを浮かべた。
サンゼロを道路上に、装甲車に対峙させるように配置、他の部隊は全員隠れて、中隊が持ってる対戦車ロケット弾で装甲車を攻撃せよ、と田中は命じた。
いよいよ装甲車が戦闘距離に近づいてきた。
サンゼロは敵装甲車方向に主砲を放ったが、当たらなかった。地面を掘っただけだった。すると敵装甲車は進路を変えながら、サンゼロ目がけて主砲を撃ってきた。車体下部に命中し、完全に移動不能となってしまった。それでも装甲車は砲撃を止めず、サンゼロを攻撃してきた。敵の装甲車がサンゼロへの攻撃に夢中になっている頃、中隊所属のロケット弾の射手は肩に発射器を担いでいたのだった。白煙を上げて発射された誘導弾は、装甲車の車体後部にヒット、直ぐに動きを止めた。装甲車はサンゼロをいたぶった罪により、破壊されたようなものだとイチローは思った。
10
その後、ベースまで戻った特機部隊その他は、○○谷での作戦を終了してトルコ軍と伴に同地域から撤退した。
今後もZ国での戦闘は続くであろう。この戦争は、自分が生きてる間には、終わりがないのではないかな、と田中1佐は思った。
特機システムは、十分実戦でも使える、との結論に達した。しかし、課題もいくつか見えてきていた。
○通信システムに大きく依存するので、この妨害などに遭うと情報が著しく不足したり操作不能などに陥り、戦闘不能状態となるであろう。強力な通信・データ転送システムの維持が必須である。
○距離的な壁が存在し、タイムラグを生じることによる反応の遅さや不正確さという問題がある。
○高速で移動する高い防御力を持つ戦力に対しては、歯が立たない。しかし、そうした正規戦力の多くは、航空戦力や誘導ミサイルなどの攻撃目標となり易いので、まずはそちらで対処するということになるだろう。
○非正規的な戦力に対し隠密的に攻撃する、という点においては、有効性があるだろう。
○人的被害が最小化できる。特に少子化の進んだ日本では有効性が高い。
○オペレーターの能力、習熟度などに依存する部分がまだ大きい。映像などから瞬時の判断や操作を行うので、その為の能力開発訓練が必要である。
こうして陸上自衛隊初の海外派兵は終わったのだった。
次からは、テストケースなどではなくなり、常に実戦ということになるのだった。