いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

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日本が生き延びるには

2008年12月08日 21時41分24秒 | 防衛問題
そもそも日本は、西欧のような植民地経営を長期間に渡って実施できた経験というものがない。一時的に朝鮮半島や満州、その他アジア地域に進出したこともあったけれども、短い期間だけだった。なので、率直に言うと「全くの異民族を支配する」という経験も能力も少ないのだ。なので、大陸国のような「もまれ方」には馴染みがないし、端的に言えばやっぱり「島国育ち」なのだ。

日本は基本的に海洋国家なので、海に生きるしかないのだ。それが基本だろうと思う。そういう意味においても、参考になるのは、やはり英国である。

英国も欧州の中心から常に離れた場所にあったし、大陸の列強との軋轢の中で数百年間生きてきたし、大した資源もない(北海油田が発見されてからは、ちょっと違うけど)し、簡単なイメージで言うと「荒地の騎士&魔女」がぴったりだ。ファンタジーの基本構想みたいなものは、かなり英国のイメージに影響を受けているのではないかと思う。これは関係ないか(笑)。


英国は資源に恵まれなかったが故に、海洋での戦闘能力を高め、貿易に活路を見出した。大陸国と渡りあえるだけの海軍力を持つことによって、国防の根幹を作ったと言っていいだろう。その海軍力があればこそ、世界ナンバーワンの強国となり得た。
対ロシア戦略という点において、当時の時点で既に日本を軍事的要地として認識していたであろうことは、驚嘆すべきことだ。衛星画像もなければ、GPSもなかったし、ましてやグーグルマップもなかった(笑)のだから。日英同盟を結ぶ決断をした当時の英国人たちは、先見の明があったということなのだろう。

そして、英国の見立て通りに、その後日清戦争、日露戦争、という2つの戦争を迎えることになった。特に日露戦争における艦隊戦は、英国式の軍備があればこそ勝てたというのは確かだ。

日本がどうしても守らねばならないのは海なのだ、ということは、改めて強調しておきたい。英国が世界の中で生き延びてきたように、小さめの島国であればこそ「生き延びる方策」を考えるべきなのだ。



で、ちょっとコレが気になった。

FX商戦 F22の禁輸でユーロファイターが攻勢(産経新聞) - Yahooニュース

BAE社同機輸出部門のアンディ・レイザン副社長によると、1機につき3年半から4年かけて完成させるといい、「日露戦争の日本海海戦を指揮した旗艦・三笠を造った会社はわが社の傘下にある。今度は日本の空を守るために同機を売り込みたい」と意気込む。

 日本の仮想敵機であるロシア製スホイ30との空戦でユーロファイターは優位性を持つ。改良型スホイ35にも十分に対応でき、中国の次世代戦闘機J11も問題にしない。F22は1機3億~4億ドル(277億~370億円)。ユーロファイターは6000万~6500万ポンド(81億~88億円)と調達費も3分の1~4分の1。第二次世界大戦後、米国以外の国には閉ざされてきた日本の門戸を開くため、BAE社は同機のライセンス生産も認める方向だ。

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いつから、英国紳士はこんなに商売上手になったんだ(笑)。
日露戦争の旗艦三笠を作ったのは我々も同然です、みたいな、日本人の心をくすぐるような、うまい口上を覚えているとは、レイザン副社長とかいう人は中々やりますね。いや、ホントに。やり手だ。


そうなんだよね、ポンドが少し前まで高かったのだけれども、円高の恩恵を受けてかなり「お買い得感」が増しているとは思いますな。
しかもF-22は生産中止となりそうな気配らしいじゃないですか。まだ決まってないでしょうけど。バカ高い上に、到底買えないようなシロモノなのであれば、いくら待っていても無駄では。


確か英国で日本の電車と鉄道システムを導入したという話があったと思いますけれども、例えば日本からはこうした都市交通の鉄道システムを供給し、英国からはユーロファイターのライセンス供与を受ける、というような「相互取引」みたいな話もできそうな気もしますが、どうなんでしょうか。それはそれで、ビジネスチャンスと考える道はあるのかもしれません。



円高が雇用を悪化させたのか

2008年12月08日 02時22分54秒 | 経済関連
松尾先生の論説には、頷ける部分は多いのですが、しかし、円高を過大評価している面があるのではないかと思います。

社会新報の円高評


日銀の「引き締め」という愚かな失策には同意するものですが、円高を極端に懸念するのもどうかと思います。
「ここは『諸君』か!」とのご意見は、まさかウチの如きオメガ級ブログに対するものとは思いませんけれども(笑)、ちょっと気になったので書いてみたいと思います。

主な主張点については、既に幾度か書いてきました。
参考>日本経済は基礎的強さが残っている

重複になりますけれども、輸出の減速がある程度のインパクトを持っているとしても、今年に限って言えばその大きさよりも輸入額の増加の方が悪影響となっていたのであり、例えば円高と原油価格高騰とで相殺ということになるかと思います。

成長率の押し下げ要因は何だったか

この記事の日銀批判のリンク先にESRIのマクロ分析がありましたが、あのケースでは円の対ドル10%減価は実質GDPを0.27ポイント押し上げ効果となっており、もし増価がこの逆だとしますと約0.3ポイントの押し下げ効果となります。07年と比べて約20%の増価であったのなら(ざっと120円→95円)、0.6ポイントの押し下げということです。
一方、原油価格上昇ですが、モデルでは約25ドル→30ドル→36.4ドルという価格上昇を標準ケースとして想定していますけれども(この20%分の上昇ということです←※ちょっと追記ですが、これは間違いですね、20%増価標準ケースはモデルで20%ずつ価格上昇していますね)、08年の平均輸入価格が実際どうなのかは判りませんが、概ね90~100ドルくらいではないかと予想しますので、標準ケースの3倍以上の価格ということになります。そうなると、25ドル→90ドルということになりますと、260%上昇ということで、原油価格だけで恐らく1.4~1.5ポイントの押し下げとなるのではないかと思われます。現実にはそこまでの上昇率ではないのですが、かなりの押し下げ効果となっているのではないかと考えます。

08年上半期の輸出額は約40兆円、下半期のうち10月までの4ヶ月で約28兆円となっており、残り2ヶ月の輸出額が12兆円(10月は単月で6.5兆円強だった、他の月は全て7兆円超)と弱目に見ても、(歴月の)08年における輸出額は80兆円程度ということかと思います。07年の約84兆円と比較すれば4兆円のマイナスで約4.8%の減少ということになります。

輸入額はというと、これまでのところ過去最高となっています。それ故、貿易収支がマイナスになった月が8月に続いて10月にも発生しました。上半期の輸入額は約39兆円で、もし同じペースであったなら08年は78兆円ということになります。上半期の貿易収支は約2.9兆円で大幅な落ち込みとなっていました。これは輸出額が鈍化した以上に、輸入額の伸びが大きかった為です。1~6月輸入額の中でウェイトの大きなものは、エネルギー関連(石油、天然ガス、石炭等)が最大であり13兆3500億円程度、食料品が約3兆円、原材料及びその製品(鉄鉱石や非鉄金属等)が約6兆3540億円、ということでした。合計で約22.7兆円です。これらは、原材料価格高騰の影響を受けて軒並み値上がりしており、日銀統計で見た輸入物価指数は円ベースでも、現地通貨ベースでも150超の大幅な上昇が見られています。

仮に、これら輸入品の価格が高騰前の水準に落ちていくとすると、50%下落だと11.35兆円の輸入額減少となり、その分だけ貿易収支は改善が見込めるということになります。要するに、貿易収支で考えると、輸出減少効果よりも輸入減少効果の方が大きい、ということが期待されるのです。円高であると、近年伸びの大きかった所得収支の悪化はありますので、そちらのマイナスも当然発生しますが、ざっと20兆円受取分の20%が減ったとして4兆円の減少に過ぎません。つまり、円高による輸出減少効果や収益受取減少を上回るだけの、輸入額減少による交易条件改善効果は期待できると思います。


さて、元の話に戻りますと、今起こっている輸出減少の最大要因は何か、ということです。日本の輸出品が円高によって製品価格上昇となり、その結果販売数量が減少してしまう、ということであるなら、①販売価格に為替変動分を転嫁する、②需要側はこれまでとほぼ同じ経済状況、ということでしょう。しかし、実際にそうなのでしょうか?

松尾先生の例に倣って考えてみましょう。
原材料輸入が2ドルで、製品価格が3ドルだと差額は1ドルで変わりない、というのはそうでしょうね。これは①の価格転嫁をせずに、販売価格を変えない、という前提条件が必要です。過去の日本企業の多くはそういうことをやってきたわけです。原材料輸入価格が上がってきたにも関わらず販売価格を据え置き、労働者の賃金や下請けへの支払をカットして、コストを無理矢理吸収してきた、ということです。そういう努力をしようとしてしまうのが日本なのだ、ということでしょう。なので、輸入物価の伸びと輸出物価の伸びを比べると、輸出物価というのは、あまり上がっていないことがあったわけです。
しかし、07年以降くらいになると、さすがにコスト吸収にも限界が訪れた為、製品価格の値上げに踏み切っていったわけです。これが、世界的「インフレ懸念」ということを招来し、結果として利上げなどが今年に入ってからも行われてしまった遠因かもしれません。価格転嫁を回避することが、日本ではデフレを助長していたという面があったでしょう。欧米企業であると、ブランド品の値上げや輸入高級車値上げに度々踏み切ってきましたので、為替上昇があれば値上げするというのは当たり前に行われてきたのです。

経済環境があまり変わらずに需要が大体同じくらいあると、日本企業の場合には為替変動があったにせよ、販売価格が据え置かれ(ドルベースなら、3ドルの販売価格のままにしてきた、ということ)、1ドルが100円でも120円でも3ドルで販売しようとしたのです。そうすると、販売数量が変わらないならドルベースで見た売上高は同じであり、円高になってしまうと円ベースで利益を出すのですから、為替変動分が国内の労働者や下請けなどにしわ寄せされた、ということです。3ドルのままで売ろうとするのは、「価格が上がると売れなくなるから」という考えが染み付いているから、ということでしょうね、きっと。で、もしも円安に傾くと、同じ利益額―例えば同じ100ドルであっても、決算の時には円ベースに戻されますから、100円の時なら1万円の利益ですが、120円ならば自動的に12000円というふうに企業業績が良くなったように見える、ということですね。更には、円安だからということで、3ドルの販売価格を少し値下げしてみようとしたりするわけです。価格が下がればもっと売れるようになるから、という思惑がある為でしょう。それはそうですね。

こうして、円高の時には国内で変動分の吸収努力を強いられ、円安になれば更に価格を下げる努力をせよ、みたいなことになってしまうので、国内労働者の賃金には利益増加分があまり分配されてこなかった、ということでしょう。

しかしながら、現在の輸出減速というのは、円高だから、という要因ではないでしょう。もし円高で販売価格に増価した分を転嫁していたのであれば、これまで3ドルで販売していたものを例えば3.6ドルにする、といった値上げとなります。その値上げのせいで需要減少となるので、売上高減少をもたらすということですね。そうではなくて、これまでと同じ3ドルで販売しているにも関わらず、売れない、ということに他ならないのではないでしょうか?何故売れないかというと、金融危機に端を発する世界規模の需要減少ということでしょう。輸出企業はこうした事態を打開しようとして、値下げに踏み切るわけです。売れないから。3ドルで販売していたものを、2.5ドルでもいいから売ろうとするわけです。そうすると、販売数量は落ちている、単価も落ちている、円高になっている、ということで、3重苦にもなっているようなものなのです。派遣社員や正社員を整理する、新卒採用を取りやめる、といった雇用への影響の最も大きな要因というのは、「売れないから」ということが原因であり、それは世界需要の減少ということに他ならないのではないでしょうか。最大の落ち込みとなっているのは北米であり、9月以降には欧州に広がったということはあるかと思います。

実際の企業決算を見ると、新日鐵では原材料コスト上昇要因が約1.04兆円と最も大きなマイナスであり、販売価格への転嫁等は約8400億円に留まっています。他の部分でコスト吸収努力をしているわけです。利益減少の要因として最大なのは、結局原材料高ということです。円高の影響を受けやすいとされる、輸出依存度の高い企業の代表的なソニー(約4分の3が海外)はどうなのかといえば、中間期の売上高は円ベースでは微増で、最も大きく減ったのは「日本国内」の売上高でした。北米の落ち込みもそこそこ大きかったのですが、必ずしも円高だから減ったということではないでしょう。経済危機による「消費減少」ということが一番でしょう。欧州、アジアや中東などのその他地域が増加していた為に、円ベースでの売上高は増えたのですよ。下半期はその他地域にも翳りが出るでしょうから、更に落ち込む可能性がありますが、円高というのは、ダメージとしては致命的ということにはなっていないでしょう。そもそもソニーの場合には金融部門に手を広げていたので、そこの利益が減ったこともありますし。円高で利益が減る、というのはその通りですが、雇用に響いていくという水準だと、それは為替要因のせいとまでは言えないのでは。
(因みに、製造業における日本企業の海外子会社の従業員数は、アジア地域で約440万人程度といわれ、海外労働者の雇用者数が増加していく代わりに国内労働者が削られていくという傾向は、今後にも続いていくのではないかと思われます)


じゃあ日本はどうしたらいいのか、ということになりますが、上で見たように輸入額が減少するわけですから、国内の消費余力はその分改善しているはずなのですね。例えて言えば、ガソリン代が先月までは1万円かかっていたものが6千円になる、暖房費が3万円だったものが2万円になる、といったようなことです。円安時代に輸出企業だけが受けてきた利益が、他の部門に移転されたに過ぎませんので、その分配先を変えていくことが必要ということになります。もしも民間ではそれができない、ということなら、政府がやるということになってしまいます。今の環境下ではできませんけれども、増税して再分配能力を高める、といったようなことになりますね。日本全体で見れば、交易損失がなくなることの方が、有利なことは確かです。国内にそのお金が留まることには違いないわけですから。


個人消費というのは、いってみれば非常に小さな単位の「ベンチャー企業」みたいなもので、大企業に10億円という資金を与えてそれを投資してもらうのも、個人に100万円ずつ小分割して1000人が自由に投資するのも、同じようなものではないでしょうか。その中から、ユニークなものとか、うまくいくものとか、そういったものが生み出される可能性に賭けてみる、ということでしょう。本当に1人が10億円のお金を持たされて投資した方が効率的かどうかなんて判らないのですよ。大きな投資主体もあれば、もっと小さな投資主体もある、というような適度なバランスがある方がいいと思えます。ある人は土地を買って商売を始めるかもしれませんし、トラックを買って運送業を始めるかもしれませんし、放蕩息子みたいに演劇だの芸能だのに使ってしまうかもしれない。それは判りません。が、個々の「何かの考え」があって、お金を使おうとしますので、思わぬ大ヒットみたいなものが誕生してくるかもしれないのです。昔の日本というのは、そうやって消費だの何らかの投資だのにお金が回っていたのですよ。だからこそ、個人で商売を始める人たちなんかが、そこそこ存在していたのですから。規模の経済は確かに大事だろうけれども、新たなものを生み出す力というのは、結局は個人に委ねられている部分がそれなりに大きいのではないかな、と思ったりもします。

 
話が段々と逸れてしまいましたが、日本貿易会の09年度予測では、輸出が停滞してしまうという暗い見通しではあるものの、原材料価格の下落と円高効果で輸入額が大幅に減少し(というか、以前に近い水準に落ちていくということかな)、経常黒字額は20兆円程度が見込まれています。95~96年や01年の時の輸出企業の苦戦というのはあったわけですし、今の水準の為替に馴化することができるような態勢を作っていくことが必要かと思います。