偶然こちらの記事が話題になっています。
>はてなブックマーク - 借金国家と預金国家ではゼロ金利政策の意味は国民の立場からすると正反対 - 木走日記
日本の場合と同じく、米国の基本的姿を想定してみましょう(07年)。GDPは約14兆ドルくらいありましたので、ざっと1300兆円としてみます。
GDP=1300兆円
例によって、(貯蓄-投資)+(税-政府支出)=純輸出の式を考えてみます。
まず、政府支出は07年会計年度では政府支出が2兆7千億ドル、プライマリーバランス赤字は約28兆円と報じられていました(うろ覚えですが)。財政赤字は対GDP比では約2.15%なので、大したことはありません。日本であると、財政規律が云々とか国内外からもの凄く怒られるんですけど(2%の財政赤字なら、日本だと11兆円くらいです)、米国であるとみんなは文句を言わないようですね。これはいいですが、
政府支出=242兆円、税-政府支出=-28兆円、となりますので、税=214兆円、ということになります。税収の対GDP比は約16.5%くらいで、大体言われている水準でしょう。貿易赤字ですが、ざっと800~900億ドルくらいということでしたので、財だけではなくサービスも含めるとやや改善するかなと思います。ざっと70兆円と考えてみます。
そうすると、(貯蓄-投資)-28兆円=-70兆円 となりますので、貯蓄投資差額は-42兆円ということになります。
また、GDP=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出 という関係がありますから、この数値を入れていってみます。
民間消費と民間投資が正確には判らないですけれども、米国の特徴としては民間消費が旺盛ということがあります。GDP比の7割がこれだということですので、1300兆円の7割ということで、民間消費=910兆円となります。
これまでのところ、政府支出=242兆円、純輸出=-70兆円、でしたので、
GDP1300兆円=民間消費910兆円+民間投資+政府支出242兆円+純輸出-70兆円
となります。すると、残った民間投資は218兆円ということになります。これが米国経済の姿です。
今年の金融危機で民間消費や民間投資が減少ということになりますので、政府支出が増大するのはやむなし、ということでしょう。民間消費の減少というのは、米国で自動車が売れない、住宅投資も不振というような実際の現象として観察されている、ということになりましょう。
今年について言えば、プライマリーバランスは-100兆円規模といわれています。政府支出が3兆6千億ドル、税収が昨年並みだとすると、324兆円が支出、税収が214兆円ですからプライマリーバランスは-110兆円となりますから、大体いい線ではないでしょうか。対GDP比ではおおよそ7.7%~8.5%くらいでしょうか。日本の水準で言えば、42.3~46.8兆円の財政赤字という巨額になります(笑)。日本がこんなことをやろうとするなら、マスコミも野党も口角泡を飛ばして、怒鳴り込むに違いありませんね。
今年について考えると、純輸出は大幅な輸入減となるでしょうから、貿易赤字は改善されている可能性が高いでしょう。50兆円の貿易赤字だとすると、
貯蓄投資差額-財政赤字100=純輸出-50
となりますので、投資より貯蓄が50兆円多い、ということになりましょう。この大幅な貯蓄投資差額の改善は、主に民間住宅投資の減少、民間企業設備投資の減少、といった要因ではないかと推測しています。民間消費の減少ということもあるかと思います。
米国には、日本にない特徴があります。
①イラク戦争の戦費負担
これが実際にどの程度なのかは私も良く知りませんが、300兆円規模とか言われていたりします。その分だけ政府支出は増大してきたので、財政赤字拡大となってきた側面はあるでしょう。GDPを増大という形で、戦費負担が計上されてきたと言えるでしょう。
②旺盛な民間消費
ここ10年くらいは毎年2%程度の水準で伸びてきていました。移民や外国人の流入による消費人口増大(必ずしも米国国籍は必要ない、人口統計では多分出てこないでしょう)効果、限界消費性向の割と高い低所得者層が多い、といったようなことがあるかもしれません。成長を支える原動力となってきたのは、この民間消費の拡大でした。この増大が、日本た中国等といった輸出型の国々の輸出増大を支えたといってもいいかもしれません。
③家計貯蓄率はマイナス
これもよく言われるのですが、消費拡大によって家計貯蓄率はマイナスになっている、というような指摘をされてきました。それを支えてきたのは、キャピタルゲインです。住宅投資による値上がりでキャッシュアウトしたり、家計資産負債バランスで見ると、資産が上回ってきたのでローンで消費に回した、ということもあるでしょう。
④家計可処分所得を上回る負債残高
これも以前から言われている通りで、簡単に言うと年収以上のローン残高を有している、ということです。ここ数年に渡り、ローン返済比率が10%を超え、07年くらいですと収入の約15%がローン返済に消えます。負債残高は年間可処分所得の約120%を超えています。消費に回していたお金とは、こうした借金によって生み出されてきたのだ、ということです。スティグリッツが嘆いていた、「借金文化の輸出」とはまさにコレです。いってみれば、年収300万円の人が消費者金融やクレジット会社に375万円の借金残高があって、これを返済し続けなければならない、ということです。国民全部の平均がそうなっている、ということです。
⑤家計金融資産は預金よりリスク資産が多い
これも前から言われてきましたが、日本に比べて株式、債券や投信などのリスク資産比率が高いということです。また年収に占める配当収入は、日本の家計よりも断然多いでしょう。さて、これらの影響ということを考えますと、旺盛な消費を支えてきた配当収入は大幅な減額となるであろうことは容易に想像できます。
これに加えて深刻なのは、資産価値下落でしょう。仮に家計資産として株式が1万ドル分あったのが6000ドルに下がるということになりますと、家計のバランスシートは「資産に見合うローン」を積んであったわけで、負債残高が収縮することはなく残り続けるのです。4000ドル分の消費余力は奪われる、ということになるかと思います。これまではキャピタルゲインがあったが故に、その分の消費額拡大余地があったので、消費を増大させてきたわけですから。これに加えて配当収入も失うわけですから、かなりのダメージということが予想されるのです。資産の4割くらいがこうしたリスク資産ですからね。
仮に3万ドルの金融資産があって、4割が株式だと12000ドルということになり、資産価値は4800ドル失われ、なおかつ配当収入が10%の1200ドルあったものがゼロとか半分の600ドルになってしまう、というようなものです。米国のニューヨークやナスダックの上場企業平均は知りませんが、配当が半減するならかなりの規模になるのではないでしょうか。時価総額が1500兆円だったとして、その4割が失われると600兆円が消え、時価総額の2%の配当が失われると30兆円分が消えてなくなります。
しかし、負債は消えてなくなりはしません。以前と同じように返済負担は残り続けます。
バランスシート上で資産の大幅な目減りがあろうと、配当収入を当てにしていたとしても、確実に家計収入を大きく減らすことになるでしょう。
⑥対外債務残高
米国の対外債務残高は20兆ドルを超える規模です。純債務が2.5兆ドルだとして、対外債権残高が17.5兆ドルあったということになりますが、果たして現時点の債権残高の価値がどれくらいなのか、ということが問題となってくるでしょう。株式が3割の比率であるとして5.25兆ドル、このうち4割が時価総額下落で失われると2.1兆ドルが消えるので、資産価値は3.15兆ドルになってしまいます。それだけ純債務が増加するということです。これまでの純債務残高の2倍くらいに一気に増えてしまいますね。でも負債は積みあがったままではないかと思います。一部はバランスシートから消えて解消されてきたであろうと思いますけれども、多くの借金は残されることになるでしょう。
株式時価総額の減少ばかりではなく、毒のような債券とか金融商品なんかもまだ残っているのでしょうから、それらの資産価値下落も資産サイドの減少に繋がりますね。
今世紀以降の対外債務残高の増大は、こうした借入の増大を通じてもたらされてきたもので、ざっと7~8兆ドル分の債務増大だったわけです。その大半を支えてきたのは、キャピタルゲインだった、というわけです。株式時価総額の増大や不動産価値増大によって生み出された幻想で、世界経済に700~800兆円もの資金が投資されていったわけですから、それは大きな効果があったであろうと思われます。今は、こうした投資が引き抜かれて、萎んでいっている過程なのだということです。
純債務に対する支払が200兆円時代に4%払っていたのであれば50兆円で済みますが、純債務残高が400兆円とか500兆円にもなると支払が大変だ、ということがあるでしょう。そうなると、50兆円で済ますには、負債残高が400兆円なら1.25%、500兆円なら1%の利払いとなるように、金利が下がればいいわけです。で、実際に金利は下がりました。これで返済負担は軽くなるでありましょう。
参考:アメリカの「悪魔的手法」とは何か
米国以外のアジア諸国やドルペッグ制の国なんかであると、外貨準備をドルで持っていなければならないのですが、これを全世界中で半減させるかやめることになるだけで、米ドル価値は通貨安となって酷いインフレになることが考えられるでしょう。
世界の貿易統計とかありとあらゆる表示を、ドルから世界共通単位通貨のようなものに換えるだけでもドルの必要性は低下するのでは。だって、今の時代に貿易統計をポンド表示にしているなんて、英国くらいしか用いないのでは?それと同じようなものだということです(参考記事)。
⑦今後の成長を支えられるか
上に述べたように、米国経済の成長の主なものでは民間消費、住宅投資、政府の戦費支出、というようなものがありました。1000兆円のGDP規模の経済があって、3%の成長をするには30兆円が新たに加わればいいわけですから、消費増で20兆円(2%)、住宅投資と政府支出がそれぞれ5兆円(0.5%)、合計30兆円ですね。実質成長率3%とは、こうして生み出されてきたのではないでしょうか。これを5年も続ければ、GDPは約16%も増大するのです。これに加えてインフレ率が平均2.5%だとすると、名目値では約30.7%増大します。つまり、1000兆円経済は1300兆円経済規模へと成長したのだ、ということです。
さて、今後にもこれと同じ状況が出来うるのかというと、よく判りません。住宅投資や消費増大という両輪を失えば、米国の成長を支えてきたほぼ全部が失われることになります。両者を回復するか、これらに代わる別な成長力を生み出せない限り、経済低迷は続くでありましょう。
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日本の場合と同じく、米国の基本的姿を想定してみましょう(07年)。GDPは約14兆ドルくらいありましたので、ざっと1300兆円としてみます。
GDP=1300兆円
例によって、(貯蓄-投資)+(税-政府支出)=純輸出の式を考えてみます。
まず、政府支出は07年会計年度では政府支出が2兆7千億ドル、プライマリーバランス赤字は約28兆円と報じられていました(うろ覚えですが)。財政赤字は対GDP比では約2.15%なので、大したことはありません。日本であると、財政規律が云々とか国内外からもの凄く怒られるんですけど(2%の財政赤字なら、日本だと11兆円くらいです)、米国であるとみんなは文句を言わないようですね。これはいいですが、
政府支出=242兆円、税-政府支出=-28兆円、となりますので、税=214兆円、ということになります。税収の対GDP比は約16.5%くらいで、大体言われている水準でしょう。貿易赤字ですが、ざっと800~900億ドルくらいということでしたので、財だけではなくサービスも含めるとやや改善するかなと思います。ざっと70兆円と考えてみます。
そうすると、(貯蓄-投資)-28兆円=-70兆円 となりますので、貯蓄投資差額は-42兆円ということになります。
また、GDP=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出 という関係がありますから、この数値を入れていってみます。
民間消費と民間投資が正確には判らないですけれども、米国の特徴としては民間消費が旺盛ということがあります。GDP比の7割がこれだということですので、1300兆円の7割ということで、民間消費=910兆円となります。
これまでのところ、政府支出=242兆円、純輸出=-70兆円、でしたので、
GDP1300兆円=民間消費910兆円+民間投資+政府支出242兆円+純輸出-70兆円
となります。すると、残った民間投資は218兆円ということになります。これが米国経済の姿です。
今年の金融危機で民間消費や民間投資が減少ということになりますので、政府支出が増大するのはやむなし、ということでしょう。民間消費の減少というのは、米国で自動車が売れない、住宅投資も不振というような実際の現象として観察されている、ということになりましょう。
今年について言えば、プライマリーバランスは-100兆円規模といわれています。政府支出が3兆6千億ドル、税収が昨年並みだとすると、324兆円が支出、税収が214兆円ですからプライマリーバランスは-110兆円となりますから、大体いい線ではないでしょうか。対GDP比ではおおよそ7.7%~8.5%くらいでしょうか。日本の水準で言えば、42.3~46.8兆円の財政赤字という巨額になります(笑)。日本がこんなことをやろうとするなら、マスコミも野党も口角泡を飛ばして、怒鳴り込むに違いありませんね。
今年について考えると、純輸出は大幅な輸入減となるでしょうから、貿易赤字は改善されている可能性が高いでしょう。50兆円の貿易赤字だとすると、
貯蓄投資差額-財政赤字100=純輸出-50
となりますので、投資より貯蓄が50兆円多い、ということになりましょう。この大幅な貯蓄投資差額の改善は、主に民間住宅投資の減少、民間企業設備投資の減少、といった要因ではないかと推測しています。民間消費の減少ということもあるかと思います。
米国には、日本にない特徴があります。
①イラク戦争の戦費負担
これが実際にどの程度なのかは私も良く知りませんが、300兆円規模とか言われていたりします。その分だけ政府支出は増大してきたので、財政赤字拡大となってきた側面はあるでしょう。GDPを増大という形で、戦費負担が計上されてきたと言えるでしょう。
②旺盛な民間消費
ここ10年くらいは毎年2%程度の水準で伸びてきていました。移民や外国人の流入による消費人口増大(必ずしも米国国籍は必要ない、人口統計では多分出てこないでしょう)効果、限界消費性向の割と高い低所得者層が多い、といったようなことがあるかもしれません。成長を支える原動力となってきたのは、この民間消費の拡大でした。この増大が、日本た中国等といった輸出型の国々の輸出増大を支えたといってもいいかもしれません。
③家計貯蓄率はマイナス
これもよく言われるのですが、消費拡大によって家計貯蓄率はマイナスになっている、というような指摘をされてきました。それを支えてきたのは、キャピタルゲインです。住宅投資による値上がりでキャッシュアウトしたり、家計資産負債バランスで見ると、資産が上回ってきたのでローンで消費に回した、ということもあるでしょう。
④家計可処分所得を上回る負債残高
これも以前から言われている通りで、簡単に言うと年収以上のローン残高を有している、ということです。ここ数年に渡り、ローン返済比率が10%を超え、07年くらいですと収入の約15%がローン返済に消えます。負債残高は年間可処分所得の約120%を超えています。消費に回していたお金とは、こうした借金によって生み出されてきたのだ、ということです。スティグリッツが嘆いていた、「借金文化の輸出」とはまさにコレです。いってみれば、年収300万円の人が消費者金融やクレジット会社に375万円の借金残高があって、これを返済し続けなければならない、ということです。国民全部の平均がそうなっている、ということです。
⑤家計金融資産は預金よりリスク資産が多い
これも前から言われてきましたが、日本に比べて株式、債券や投信などのリスク資産比率が高いということです。また年収に占める配当収入は、日本の家計よりも断然多いでしょう。さて、これらの影響ということを考えますと、旺盛な消費を支えてきた配当収入は大幅な減額となるであろうことは容易に想像できます。
これに加えて深刻なのは、資産価値下落でしょう。仮に家計資産として株式が1万ドル分あったのが6000ドルに下がるということになりますと、家計のバランスシートは「資産に見合うローン」を積んであったわけで、負債残高が収縮することはなく残り続けるのです。4000ドル分の消費余力は奪われる、ということになるかと思います。これまではキャピタルゲインがあったが故に、その分の消費額拡大余地があったので、消費を増大させてきたわけですから。これに加えて配当収入も失うわけですから、かなりのダメージということが予想されるのです。資産の4割くらいがこうしたリスク資産ですからね。
仮に3万ドルの金融資産があって、4割が株式だと12000ドルということになり、資産価値は4800ドル失われ、なおかつ配当収入が10%の1200ドルあったものがゼロとか半分の600ドルになってしまう、というようなものです。米国のニューヨークやナスダックの上場企業平均は知りませんが、配当が半減するならかなりの規模になるのではないでしょうか。時価総額が1500兆円だったとして、その4割が失われると600兆円が消え、時価総額の2%の配当が失われると30兆円分が消えてなくなります。
しかし、負債は消えてなくなりはしません。以前と同じように返済負担は残り続けます。
バランスシート上で資産の大幅な目減りがあろうと、配当収入を当てにしていたとしても、確実に家計収入を大きく減らすことになるでしょう。
⑥対外債務残高
米国の対外債務残高は20兆ドルを超える規模です。純債務が2.5兆ドルだとして、対外債権残高が17.5兆ドルあったということになりますが、果たして現時点の債権残高の価値がどれくらいなのか、ということが問題となってくるでしょう。株式が3割の比率であるとして5.25兆ドル、このうち4割が時価総額下落で失われると2.1兆ドルが消えるので、資産価値は3.15兆ドルになってしまいます。それだけ純債務が増加するということです。これまでの純債務残高の2倍くらいに一気に増えてしまいますね。でも負債は積みあがったままではないかと思います。一部はバランスシートから消えて解消されてきたであろうと思いますけれども、多くの借金は残されることになるでしょう。
株式時価総額の減少ばかりではなく、毒のような債券とか金融商品なんかもまだ残っているのでしょうから、それらの資産価値下落も資産サイドの減少に繋がりますね。
今世紀以降の対外債務残高の増大は、こうした借入の増大を通じてもたらされてきたもので、ざっと7~8兆ドル分の債務増大だったわけです。その大半を支えてきたのは、キャピタルゲインだった、というわけです。株式時価総額の増大や不動産価値増大によって生み出された幻想で、世界経済に700~800兆円もの資金が投資されていったわけですから、それは大きな効果があったであろうと思われます。今は、こうした投資が引き抜かれて、萎んでいっている過程なのだということです。
純債務に対する支払が200兆円時代に4%払っていたのであれば50兆円で済みますが、純債務残高が400兆円とか500兆円にもなると支払が大変だ、ということがあるでしょう。そうなると、50兆円で済ますには、負債残高が400兆円なら1.25%、500兆円なら1%の利払いとなるように、金利が下がればいいわけです。で、実際に金利は下がりました。これで返済負担は軽くなるでありましょう。
参考:アメリカの「悪魔的手法」とは何か
米国以外のアジア諸国やドルペッグ制の国なんかであると、外貨準備をドルで持っていなければならないのですが、これを全世界中で半減させるかやめることになるだけで、米ドル価値は通貨安となって酷いインフレになることが考えられるでしょう。
世界の貿易統計とかありとあらゆる表示を、ドルから世界共通単位通貨のようなものに換えるだけでもドルの必要性は低下するのでは。だって、今の時代に貿易統計をポンド表示にしているなんて、英国くらいしか用いないのでは?それと同じようなものだということです(参考記事)。
⑦今後の成長を支えられるか
上に述べたように、米国経済の成長の主なものでは民間消費、住宅投資、政府の戦費支出、というようなものがありました。1000兆円のGDP規模の経済があって、3%の成長をするには30兆円が新たに加わればいいわけですから、消費増で20兆円(2%)、住宅投資と政府支出がそれぞれ5兆円(0.5%)、合計30兆円ですね。実質成長率3%とは、こうして生み出されてきたのではないでしょうか。これを5年も続ければ、GDPは約16%も増大するのです。これに加えてインフレ率が平均2.5%だとすると、名目値では約30.7%増大します。つまり、1000兆円経済は1300兆円経済規模へと成長したのだ、ということです。
さて、今後にもこれと同じ状況が出来うるのかというと、よく判りません。住宅投資や消費増大という両輪を失えば、米国の成長を支えてきたほぼ全部が失われることになります。両者を回復するか、これらに代わる別な成長力を生み出せない限り、経済低迷は続くでありましょう。