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米国は日本主導の「ASEAN+6」を怖れた

2011年11月14日 12時34分38秒 | 外交問題
先日も取り上げたが、もうちょっと細かく書いておくことにする。
08年3月時点での、米国サイドの見解というものが分かる。

>http://d.hatena.ne.jp/trapds/20111111/1320991492


>http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/special/global/epa/17/epa-s.pdf

この議事録から、ACCJのレイク会長の発言から、拾ってみる。
(青字が引用部)


①日米EPAは最も優先順位が低い

これは私の個人的な意見とともに、色々なワシントンの関係者と話をした結果だが、日米のEPAというのは最も優先順位が低く、1番最後に近いものであるということが一般的な印象だと思う。私もそういうふうに理解している。
これも一般的な印象だが、2点目として、発効済み、発効待ちのEPAの内容については、WTOのルール、すなわちサービスの貿易に関する一般協定であるGATSの第5条にある相当な範囲の分野を対象とすること、また関税及び貿易に関する一般協定であるGATTの第24条にある実質上すべての貿易についてという表現が実質的に確保されているのか。どこでラインを引くかというのは、それぞれの交渉でとても大きな課題になる。100%にできるだけ近いことを求めて交渉するのか、90%以下でいいのか、80%でいいのか、色々なレベルでラインを引くことができる。一般的な印象として日本政府が交渉しているEPAというのは、強いこだわりは必ずしもないと思われている。


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米国政府は日本との貿易交渉に興味など持っていなかった、という感触であろう。当時、ジャパンナッシングだの、パッシングだのと言われていたのだから、それも当然と思える。米国にとって、日本のことなど「眼中にない」ということだった。だから、政策担当者たちにとっても、日本との交渉になんて労力を割く必然性など感じられなかった、ということだ。


②米韓FTAは韓国の構造改革実現のテコ

最大限、構造改革のテコとして戦略的に、そして積極的に活用するのであれば、極力WTO上100%に近いカバレッジ、範囲も色々な分野で交渉していくことが求められると思う。私が理解する限り、韓国政府は国内経済構造改革を実現する上でのテコのためにも米国と交渉したFTAを使ったという理解である。

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今の日本でも「ガイアツ」を利用して構造改革をしろというTPP推進派は存在するだろう。そういう主張を目にすることはあったからね。米韓FTAも、例に漏れず構造改革のテコとして使え、と。韓国の格差社会構造は更に促進されるかもしれない。


③「ASEAN+3、+6」を阻止し対抗する為に生み出されたTPP

ASEAN+3、+6という展開が、アジアだけの展開として行われている。そして、日本政府のリードの下にASEAN+6という発表も行われた。これを受けて、御存知のようにアメリカ政府や議会関係者の中でも、ある1つの衝撃を受けて、新たなアジア経済戦略の展開が行われつつあるが、これは後でお話する。ただアジア経済統合に向けたルールが、色々な意味で統一化されていく上での現実的、効果的な戦略というのは、日本独自の戦略を考える上でも、米国とともにやるのが効果的なのか、米国とは全く別に展開をするのかが最も効果的なのかどうかというのは、勿論考えられていると思うが、私はもっと米国とともに展開する戦略の方が効果的なのではないかと考えている。

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核心部分はこれだ。
「アジアだけの展開として行われている」
「日本政府リードの下、ASEAN+6という発表」
「アメリカ政府、議会関係者の衝撃」
「新たなアジア経済戦略の展開」
米国サイドは、日本がアジア圏で経済戦略基盤を確立しようとしていたことに、衝撃を受けるとともに、これを阻止し、対抗軸を作り出そうとして、「新たなアジア経済戦略」を考えるに至った、ということが判るのである。

08年当時の自民党政権は、望ましい方向へと進んでいたはずである。ASEANとの貿易協定推進、これを軸に「ASEAN+6」まで拡げようとしていたことも、中国、インド、韓国などが入れるような基盤を目指していたことも、間違った方向などではなかった。これを継承して、鳩山政権下でも行われようとしていたのだが、米国さまの横槍によって、頓挫させられるに至った、ということだ。


米国への傾倒を決定付けたのは、菅総理だった。
小沢―鳩山路線を追い落として、己の権力を握らんが為に「従米派勢力」と関係を頼み、総理の座に就いたのだ。菅という男は、権力欲の為に悪魔と取引したに等しい。その取引結果が、TPP参加検討、という宣言だった。菅は、普天間問題の「日米合意堅持」と「TPP参加」の受け入れを、総理のイスを手中にする取引材料に使った、ということなのだ。

狡猾な米国の「離間の計」によって、「中国は危険」というプロパガンダが奏功し、日中韓の貿易協定交渉は止まってしまったのかもしれない。(参考:http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/37bb35ff8922de184e06c2d053c20dcb)

米国は、何としても、日中の間を引き剥がしたかった、ということであろう。それが米国の利益に他ならないから、である。日本は、利用されただけ。

>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/28e6c8eb4fd267438c481e0925bce438
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/3a3ac2d92f8a4efac02b6a506f3b59a2
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/s/%A5%D5%A5%B8%A5%B3


そして、今も、同じく利用されようとしているのが、野田政権なのである。

中国の方から、「招待状を貰ってない」という痛烈な皮肉が出されたのは、過去のこうした「米国のやり方」というものを知っていたからだろう。
日本政府は、愚かにも「米国さまの言いなりになりたいです」と宣言したに等しい。今回の野田総理発言は、国際社会ではそう受け取られている、ということだ。

日本はASEAN+6の路線に、回帰すべきなのである。ルール作りと主導権は、日本にこそあったのだから。




経済学理論バカへの挑戦状~その2

2011年11月14日 09時45分11秒 | 経済関連
今朝、前原政調会長がテレビ出演していた(注:記事更新を忘れていたので、昨日の記事を本日アップしてます。13日朝のことです)。
あれほど逃げ隠れしていて、姿を隠していたのに、参加表明となった途端に、戻ってきたということだな。

前原よ、TPP参加の根拠は何か、と宿題を出しておいたのだが、どうやら「答えを見つけた」らしい(笑)。
(14日16時頃追記:書くのを忘れてたけれど、ボゴール宣言に基づいて云々とか前原が解説していたが、「自公政権時代」とかもっともらしく言ってたのは、間違いだろう。「自社さ」政権時代の話だ。直前までは細川政権だったじゃないの。94年の話なんだから。せっかく山籠りしてまでレクチャーしてもらったのに、基本的部分も間違ってる。「自社さ」時代の、特に「さきがけ」と「社会党」メンバーは今の民主党内にも残っているんじゃないのか。)


簡単に言うなら、消費者も得をするんだ、というものだ。
消費者余剰の理屈を誰かに吹き込まれたんだろう(笑)。まあ一理あるとも言えるが、それだけでは、参加理由にはならない。別にTPPの枠組みである必然性がないから、だ。他のルール作りでも、何ら問題ない。消費者余剰は、TPPだろうが、2国間協定だろうが、大きな違いは生まれない。

この消費者余剰の話は、後でする。


もう一人、初めてみた人物がいた。
上山慶応大学教授だ>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E5%B1%B1%E4%BF%A1%E4%B8%80

 京大法→運輸省→プリンストン→マッキンゼー
と肩書きは大層ご立派だな。
まさに、エリートコース。
で、洗脳工作にやられた、と(爆)。冗談ですよ。


でも、面白いことを言ってた。
TPP参加のメリットというか、根拠としては、輸出が増えるよりも、投資を増やしていこう、と。
日本は既に投資立国になっているんだから、と。

まあ、一理あるように見えるわな。
拙ブログでも、貿易収支より所得収支の方が多い、みたいな話は幾度か書いてきたからね。
だけど、海外投資を増やすには、純輸出が増えないと、大抵の場合は難しいよね。政府収支がゼロで釣り合っていると仮定すれば、

 貯蓄-投資=純輸出

となるわけで、海外への投資を増やすには、純輸出を大きくする、みたいな方向に行かないとダメですもん。
まさか、政府(財政)収支を「もっと大きな赤字に」というような願いを持ってるわけではないですよね?(笑)
財政赤字が大きいと、純輸出が変化してなくても、確かに海外投資は増えるわな。ま、これを除外するとしても、だ。

純輸出が増加しなけりゃ、投資立国にはなれんでしょう。
輸入を大幅に減らせ、ってことを言いたいのかな?

プリンストン出て、マッキンゼーに行っていても、この程度のことも判らんのかもしれんな。それでも、慶応大教授になれるというのだから、こりゃ、アレですな。


本題に入ろう。

よく貿易赤字なんて、無問題、みたいに言う人がいるんだけど、それって、長期でもそうなの?
だったら、貿易赤字を永続した場合には、どうなるんですかな?

世界中に2カ国しかなくて、A国とB国で、AからBに輸出を永遠に継続した場合、B国では恒常的な貿易赤字となりますね。それは、Aが無限にB国に金を貸せる、ということになってしまうのでは?

為替レートがゼロになるまで安くなるか、価格(為替)変動がないものとするなら、AからBに投資をずっと継続することになるんじゃないですかね。AからBへの投資というのは、要するに金を貸しているのとほぼ同じ(対外純資産(債権))なので、Bは無限に借金できる、ということになってしまう。

そんなことが起こるとは思えない。
貿易赤字なんて、問題ない、というのは、例えば貿易が自由化された直後に輸入が増加した、といったようなことが「赤字でも問題ない」という話であり、それが永続しても問題ない、ということを意味しているわけではないはずだ。

そういうことを区別して、「貿易赤字も黒字も関係ない」みたいな話をしているのだろうか?


アメリカの輸入超過が継続すると、それは海外からのファイナンスを行い続けることと同じですよね?
為替がきちんと変動するなら、ドル安を招くということになるはずでは。
今まで、そういうドル安が起こってきたことは確かですが、それでもまだまだ調節過程かもしれないですよね。現実に、対外純資産保有国だったものが、世界最大の対外純債務国へと転落したのは、そういうことです。

使えると思って、いつまでも金を使い続けてきたら、世界中から借金をしている、という状態だわな。これを可能にしたのは、ドルという基軸通貨を「大量に供給できた」から、だ。
貿易赤字が長期に継続すると、本来であれば、為替レートがどんどん下がって、輸出増効果が出るのが経済学的な理屈に合う姿だ。そうすると、必然的に貿易赤字は縮小されてゆく、という、「神の見えざる手」の調節機能が働くはずなのである。

ところが、基軸通貨ということで、人為的にいじったり意図的に操作したりして、「本来あるべき姿」から大きく乖離していると、「高すぎるドル」ということになり、輸出が増えなかった、ということなのでは。だって、経済学の理屈で考えると、貿易と為替がきちんと機能していれば、調節能は維持されるはずだから。

そうならなかったのは、何か「隠れた要因」が存在するから、としか思われないわけだが。


まあ、アメリカの貿易赤字の酷さを罵っても、何も得るものはないから、これは別にいい。

だが、自由貿易の利点を言う経済学者たちは、自由化前後での利益の話だけではなく、その後長い期間で見た場合の価格や為替変動がどうなるのか、ということを解明してもらいたいもんだ。

輸入で一時的に得になったとて、いずれ同じだけ輸出できる別な財が作れるか、それが達成できない場合には為替で減価されて、結果的に輸入価格が上がってしまうか、ではないのか?

そういうことを答えられないのに、貿易自由化が正しい、なんてことを言えるものなのか?


それと、自由化後に輸入で価格が下がって消費者が得するとして、GDP成長率への寄与って、毎年あるもんなの?

今年下がっても、来年は今年と同じ値段だとすると、もう成長率への寄与はなくなるんじゃないの?
いや、消費余力が増大したとして、他の財に消費できるメリットがあっても、その年以降には、その増大効果は新たには発生しないわけでしょう?

今、食費が月2万円、うち、お米に5000円だとしよう。
輸入自由化で、お米にかかるお金が2000円に減ったとして、3000円浮いたから果物に使うとしますか。それで、果物生産者に成長をもたらしたとして、翌年には定常状態に戻ってしまうわけでしょう?

お米2000円、果物3000円、他15000円、って、これが続く、というわけですよね?
3000円が浮くのは「一回きり」で、その後には1円も浮いてこない、ということで、結局は「経済成長のナントカ」みたいなバラ色の話にはならないような気が。
いや、米に5000円かかってた時よりは、果物3000円分食べられるようになったんだから、大きく得したんだ、と言われりゃ、そうですけど、その得は回り回って損に結びついていたりしないのですかね?

疑問は尽きないな。


参考>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/d6ad155dde3274328646b9a00e18c6d6