先週、「バレバレの岸田文雄の極秘訪問は単なるバラマキ外交の二番煎じであった」というつぶやきの中で、メディアにバレバレであったツイートを紹介した。
極秘訪問のはずなのに、日テレは岸田首相のポーランド到着も列車乗り換えも取材できている上に、「列車を乗り換えウクライナに向かう」とかリポートしており、当該情報はあらゆる言語で速報されていて、日本の首相やっちまおうぜという輩にとっては大チャンスすぎて、こんなんでいいのかほんと疑問。 https://t.co/Pij24gGyae
— 飯山陽 Dr. Akari IIYAMA新作『騙されないための中東入門』発売中 (@IiyamaAkari) March 21, 2023
改めて、この岸田文雄のウクライナ訪問における岸田政権の危機管理能力のなさと「電撃訪問」という如何わしさをコラムニストの青沼 陽一郎は徹底検証していた。
「メディアに情報漏洩、ロシアには『静観して』とお願い、どこが“電撃"訪問か」
岸田文雄首相がウクライナの首都キーウを訪れたのは、3月21日のことだった。これをメディアは「電撃訪問」と伝えているが、いったいこの訪問のどこが「電撃」であったり、「秘密裏」であったりするのか、首を傾げたくなるどころか、その報道姿勢はむしろ噴飯物だ。 ■ポーランドに駅になぜ日本のメディアが事前に待機できたのか 岸田首相は、訪問先のインドから民間のチャーター機でウクライナの隣国のポーランドのジェシュフの空港に入り、そこから国境に近いプシェミシル駅に車で移動すると、列車でウクライナに入った。米国のバイデン大統領が2月に訪問した時と同じ経路だったという。 ところが、NHKではこのプシェミシル駅で列車に乗り込む岸田首相の姿を、ホームのフェンス越しに撮影して、速報で報じていた。一緒に列車に運び込まれた「うまい棒」のロゴの入ったダンボール箱が、SNSで話題になったほどだ。 諸外国の要人警護であれば、あんな場所で承諾もなくカメラを構えただけで、即射殺されてもおかしくはない。そうでなくても、撤去を求められる。 かつて、それこそウクライナの首都キーウで、大統領が出席する式典会場の広場を望むホテルに滞在していたら、当日の朝にSPが部屋にやって来て室内をチェックしたあと、窓際に立つな、カメラを構えでもしたらライフルのスコープと見なして射殺する、と警告されたことがある。 NHK以外にも数人のカメラマンが並んでいたから、事前に岸田首相のウクライナ訪問の情報はルートと時刻までが漏れ伝わり、これを首相側も容認していたはずだ。そうでなければ、日本の首相は要人として扱われていなかったことになる。 ■「スクープ」のためなら協定破りもなんのその その当時は日本中が大騒ぎだった。3月20日に地下鉄サリン事件が発生。その時の私は東京・新宿区の河田町にあった民放キー局に出入りしていて、発生直後にカメラクルーと霞が関に向かった。ちょうど今年と同じように月曜日で、朝のワイドショーはアニメ『ルパン三世』でルパン三世役の声優だった山田康雄の訃報を伝えていたはずが、一斉に事件報道に切り替わってそれどころではなくなった。 翌21日は春分の日で祝日だったが、地下鉄サリン事件の受傷者の取材をしていた。すると、午後になってすぐに局に戻るように指示された。そこで、これは関係者以外には極秘として、明日の朝からオウム真理教の関連施設に警視庁が強制捜査に入ることを伝えられた。すでに報道各社が申し合わせて、報道の解禁時刻も決められていた。 それまでに徹夜で準備を済ませた。さあ、これで解禁時刻まで仮眠が取れる、とソファーに横になった途端に、聞いていた解禁時刻を破って速報を打ったテレビ局があった。TBSだった。 ■メディアに堂々と報じられる「電撃」とは 今回の岸田首相のウクライナ訪問を知ったのも、TBSのニュース速報だった。ちょうどWBCの日本とメキシコの準決勝の息詰まる攻防を中継で見ていた時に、テロップで告示された。 その直後にNHKが列車に乗り込む岸田首相の姿を報じていた。まるで、解禁の時刻と場所を申し合わせていたようなタイミングだ。 しかも、NHKではインドからポーランドへの移動に使用する民間のチャーター機が、岸田首相を乗せた政府専用機が羽田空港を離陸する3時間前に飛び立った映像もしっかり捉えていて、WBCに参加する大谷翔平が米国から日本への移動に使った同じ会社である情報まで流していた。 これで「秘密裏」「電撃訪問」といえるのか。 ■わざと撮らせて「電撃訪問」を演出? ただし、今回は報道協定のようなものはなく、出遅れた報道機関もあったようだ。NHKが情報を握っていた可能性は高い。 そのNHKでは今年2月のバイデン大統領のウクライナ訪問時の秘密保持の徹底ぶりについても解説。この訪問に同行が認められたのは米国の有力紙の記者2人だけだったが、この2人に宛てた出発などの詳細を記したメールのタイトルは「ゴルフトーナメントの到着時の案内」とされる徹底ぶりだったという。それだけ事前に情報が漏れないことの重要性を力説する。情報漏洩は要人の生命にも関わる。 ところがその一方で、ポーランドで列車に乗り込む岸田首相の姿をいち早く流している。そうすることで、メディアに求められる速報性の競争に勝利したこと、いわば“スクープ"をあげたことを誇らしげに匂わせる。つまり、二律背反の報道姿勢に陥っている。 バイデン大統領も、ポーランドで列車に乗り込む姿など、撮らせなかった。報道の解禁もキーウに着いてからだ。言ってみれば、NHKの速報は岸田首相を危険に晒したことになる。それで情報管理の重要性を説くから、わけがわからない。 もっと驚くのは、キーウの駅に到着した列車とそこからホームに降りる岸田首相の姿を、斜め上方の角度から覗き込むようにして撮影していたことだ。絶妙な隠し撮りスポットであると同時に、絶好の狙撃場所でもある。そんな場所から、警護にあたるウクライナ当局の許可もなく撮影していたとしたら、これほど恐ろしいこともない。 そうなると、ポーランドでの状況といい、政府が意図的に情報を流していたことも考えられる。つまり、わざと撮らせることで岸田首相の「電撃訪問」をことさら強調させたい政府側の意向。そのための演出。報じる側としては“スクープ"とできるだけに、どっちにとってもおいしい話。すなわち、バーター。 だが、それは国民にとってみれば、政権とメディアが結託したプロパガンダに過ぎない。それも事前の打ち合わせもなく、どちらが利用するともなく、阿吽の呼吸でなせた技なら、末恐ろしい。 ■ロシアへの事前通告は実質的な「お願い」 日本政府は、事前に岸田首相のウクライナ訪問をロシアに通告していたことを明らかにした。米国もバイデン大統領の訪問を事前通告していた。だが、米国のそれと日本のそれとでは意味合いが違ってくる。 米国の場合、大統領を危険に晒すようなことがあればどうなるか、ロシアに警告したようなものだ。大統領の命を奪うことがあれば、それこそ全面戦争だ。 日本の場合、首相が向かいますから、どうか静観してください、とお願いしたようなものだろう。そうでなければ、ポーランドでこれからキーウに向かいます、などという報道は許されない事態だ。あんな映像が事前に流れるほど、むしろ政府は楽観視していたに違いない。だったら「電撃訪問」などというより、堂々と訪問すれば済んだ。 ■能天気にもほどがある 政府の秘密保持と報道のあり方を巡って、重大な問題が露見している今回の訪問。だが、日本国民の関心は、WBCの日本代表が21日の準決勝でメキシコに逆転サヨナラ勝ちした興奮と、22日の決勝でダルビッシュ、大谷とつないで世界一を奪還したドラマチックな展開で、野球一色に染まってしまった。 「うまい棒」の箱の中味も、「必勝」の文字の入った50センチほどの「しゃもじ」だったという。しゃもじは「敵を召し(飯)取る」との意味で、岸田首相は験担ぎのつもりだったらしい。 だが、贈られたゼレンスキー大統領にしてみれば、常に命の危険に晒されている場所でなんの役にも立たない。駄洒落でロシアに勝てるとでも思っているのか。能天気にもほどがある。 それだけ日本は、平和な国である。 |
やはり平和な日本からみればウクライナ問題は「他人事」ということなのだろう。
そんな平和ボケしてしまった岸田文雄政権はついに長射程ミサイルを用いるのは「専守防衛の範囲内」と主張し始めてしまった。
「岸田首相が主張する新解釈…専守防衛は『海外派兵しない』 過去の自民政権は『敵基地攻撃しない』だった」
【東京新聞より】
岸田政権は敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を安全保障政策の大転換と認めながら、憲法に基づく基本方針「専守防衛」は堅持すると主張している。過去に「相手国の基地を攻撃しないこと」という専守防衛の明確な政府見解が出ているが、岸田政権は「『海外派兵』は許されないということだ」との解釈を持ち出した。歴代政権が「憲法上許されない」と禁じてきた集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法の施行から、29日で7年。専守防衛の変質が続いていることに対し、野党や識者から懸念や批判の声が上がる。 ◆専守防衛の変質が止まらない 「専守防衛」の具体的な説明には、1972年の田中角栄首相(当時)の国会答弁がある。田中氏は「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、わが国土とその周辺で防衛を行うこと」と明言した。 共産党の志位和夫委員長は今年1月の国会審議で「専守防衛の考え方は敵基地攻撃と両立しない」と矛盾を追及した。すると岸田文雄首相は田中氏の答弁について「武力行使の目的で武装した部隊を他国へ派遣する『海外派兵』は一般的に憲法上許されないことを述べたものだ」と説明。自衛隊を海外派兵する場合は「相手の基地を攻撃すること」に該当するが、相手の攻撃を防ぐために長射程ミサイルを用いるのは「専守防衛の範囲内」と主張した。 ◆菅義偉内閣当時の岸信夫防衛相が 岸田政権の見解は、70年代の政権の積み上げと継承を否定することにつながる。田中氏の答弁に先立つ1970年、佐藤栄作内閣の中曽根康弘防衛庁長官(当時)が専守防衛について「本土ならびに本土周辺に限る。攻撃的兵器は使わない」などと説明。三木武夫内閣当時の75年に刊行された「行政百科大辞典」でも、田中氏の答弁とほぼ同じ内容が記載されている。 21世紀に入っても、この解釈は引き継がれた。2004年度に防衛研究所がまとめた専守防衛に関する研究で「田中氏の答弁は、防衛上必要であっても敵基地攻撃を実施することを否定している」と認定している。 一方、今国会での首相答弁と同じ見解は、2020年11月に菅義偉内閣の岸信夫防衛相(当時)が示していた。この時期は、安倍晋三氏が敵基地攻撃能力の保有検討を求める談話を発表して首相を退任した後で、保有を見据えて説明を準備した可能性がある。 ◆元内閣法制局長官「論理的に無理がある」 政府の説明の変化を追及した立憲民主党の小西洋之参院議員は「歴史の歪曲くだ」と非難。志位氏も「時の政府が責任を持って答弁したものを投げ捨てるなら、立憲主義が成り立たなくなる」と批判した。 阪田雅裕元内閣法制局長官は本紙の取材に、田中氏の答弁について「憲法9条の下の『必要最小限度の実力行使』を担保するものだった」と指摘。岸田政権の見解に関しては「上陸して攻撃するのとミサイルで攻撃するのと何が違うのか。牽強付会も甚だしい。論理的に無理がある」と酷評した。 |
「保身のために部下を売り飛ばす点だけでも閣僚の任に堪えない」と指摘された高市早苗に対する罷免要求を「いきなり更迭うんぬんはあまりに論理が飛躍している」といっていた岸田文雄だが、相手国に上陸することは「専守防衛」ではないが、相手国に長射程ミサイルを用いるのは「専守防衛の範囲内」と主張することも、論理が飛躍しているどころか論理矛盾であろう。
本来ならばこの一件だけで国会は紛糾し審議はストップし、予算の年度内成立も覚束ないはずなのだが、なぜかすんなりと予算は成立してしまうと言おう。
もちろん、その原因は「野党第一党」にあることは言うまでもないのだが、その肝心の野党の現状は目を覆うばかりである。
「もはや瀕死の立憲民主党。最大野党が聞いて呆れる幼稚園レベルの安保論議」
■立民が失った結党時の気概。岸田軍拡の容認で瀕死のリベラル政党 このところ、立憲民主党の幹部級と意見交換する機会が何度かあったが、その結果、衆院97、参院40の議席を持つ野党第一党である同党は、岸田内閣の防衛費倍増による大軍拡路線と正面切って対決し、それを阻止する気概を持ち合わせていないことがはっきりした。 これは相当絶望的な状況で、岸田大軍拡に正面から反対する組織政党は共産党だけになってしまい、その勢力は衆院10、参院11議席。れいわと参院の沖縄会派を加えても13、17。その共産党も、2人のベテラン党員の党を思えばこその提言を「反共キャンペーン」とか「外からの攻撃」とか罵倒して除名処分にするという愚行によって自損し、党内に動揺が生じ支持層が離れつつある中で踏ん張りが利かなくなっていることを考慮すれば、すでに国会は大政翼賛会的な様相呈していて、全議席のわずか4~5%程度の反対派を苦もなく蹴散らして大軍拡に進んでいくのである。 ■もはや「分裂」しか残されていない立憲民主党を全滅から救う道 この状況に歯止めをかけるまでには至らないとしても、多少ともブレーキをかける手段があるとすると、立憲民主党を大軍拡賛成もしくは容認派と反対派とに分裂させることだろう。もちろん思想信条や政策の違いだけで野党第一党から離脱するのは議員個人にとって容易なことではなく、数十名の塊にしかならないかもしれない。しかしその明快な主張を持った政治的な塊がなければ共産党及びその他の弱小会派との共同戦線を形成することが出来ない。 逆にそれがあれば、とりあえず共産党が孤立化し衰退化するのに多少とも歯止めをかけて、共同戦線を張り直すことが出来るかもしれない。その下で、院内協力だけでなく、市民・労組レベルの共同行動、その延長での選挙協力、さらに連立政権構想の描出を進めなければならない。 ■忘れ去られた「2015年安保法制反対闘争」という原点 今の立憲民主党の中心にいる皆さんはどうもそう思っていないようだが、同党の原点は2015年安保法制反対の戦いにある。 院内では、岡田克也代表の民主党を中心に、江田憲司らの維新の党、共産党、社民党、山本太郎らの生活の党などが共闘し、院外では民主・社民両党を支持する自治労、日教組など旧総評系労組の平和・反核運動組織「平和フォーラム」と、共産党系の「9条の会」など平和団体や労組とが連携して国会包囲デモを盛り上げた。これを通じて民主党と維新の党は接近し、16年に合流し民進党となった。 同党の代表が岡田から蓮舫、前原誠司へと変転する間に、しかし、細野豪志や長島昭久など共産党との野党協力を嫌う超保守系を中心に離党者が続出し、展望を見失った前原は17年10月の総選挙目前に、民進を丸ごと、小池百合子が作った「希望の党」に合流させるという精神錯乱的方針を打ち出した。ところが小池は、民進のリベラル色の強い者や民主党政権の中枢を担った者などを排除する方針を表明。そのため民進は、リベラルの旗を下ろすまいとする枝野幸男の「立憲民主党」、それと一緒になることを躊躇う岡田や野田佳彦などの「無所属の会」、それでも何でも「希望」に行って小池の懐に抱かれたかった前原や玉木雄一郎らに3分解してしまった。 ■リベラルにも中間層にも支持されぬ「虻蜂取らず」状態に 枝野が一瞬の判断で立憲民主の旗を掲げたのは大正解で、その選挙で彼が演説に立ち「私がたった一人で立憲民主を立ち上げたのです!」と叫ぶと、おそらく安保法制デモの中心を担ったであろうシルバー世代の聴衆から「ありがとう」コールの大合唱が起きた。政党を作って「ありがとう」と言われたのはたぶん枝野が初めてで、それは間違いなく、「民進が小池の軍門に降ってしまえば、もう投票する党がなくなる」と絶望しかかっていたのを救ってくれてありがとうという意味だった。 ここが立憲民主の核であって、今の指導部が「中道にシフトする」とか「中間層に手を差し伸べる」とか言って国民民主党や日本維新の会との院内協力を優先し、従って岸田大軍拡にも正面切って反対しないといった軟弱路線に進めば進むほど、核であるはずの真正リベラル層は離れて行き、その割には無定見の中間層からの支持は集まらないという虻蜂取らずに嵌まり込んでいくのは目に見えている。 全滅を避けるには、予めリベラル核の部分を分離し温存することである。 ■岸田政権の言い分を野党第一党がそのまま真似る滑稽さ さて、立憲民主党は岸田大軍拡の方針に対する見解として「外交・安全保障戦略の方向性」と題した文書を、玄葉光一郎=同党ネクスト外務・安保相が中心になって昨年12月20日付でまとめた〔文末に全文掲載〕。一応、政府の「敵基地攻撃能力」「反撃能力」については「賛同できない」とは言うものの、「ミサイル能力の向上」それ自体は条件付きで容認しているという怪しげなもので、これでは『サンデー毎日』4月2日号の河野洋平=元衆議院議長・元自民党総裁の「岸田軍拡、もう黙って見ていられない」の方がよほどスッキリと問題点を指摘していて、リベラル的である。 (1)安全保障環境はますます厳しい? 文書は「2.我が国を取り巻く安全保障環境に対する認識」で、周辺国の軍事力強化が急速に強化されていて、我が国を取り巻く安保環境が厳しさを増している旨を述べているが、これは政府の見解のほぼ引き写しで、何の反論も試みていない。これとは対照的に、河野は、 (1-1)米国は安保面で世界の警察官的役回りをせず、ある意味、中国の台頭にすっかり怯えてしまっている。自分を脅かす奴は許さん、叩いてしまえ、という雰囲気になっている。政治だけでなく米国民全体が怯えている、と僕には見える。こういう時こそ中国を一番理解できている日本が「心配することはない。中国というのはこういう国なんだ」と教えてあげなければいけない。であるのに米国と一緒になって「大変だ、大変だ」と走り回っているのが現状だ。 (1-2)台湾有事が心配だと言うなら「本当にそうですか」と中国に聞けばいい。……直接聞きに行くこともしない。……台湾有事にしないためにはどうするか、を議論すべきなのに、なったらどうするかばかりだ。……心配の種があるならそれをどう取り除くかという作業に集中すべきで、心配だから急いで武器、弾薬を準備するというのは、浅薄な判断としか思えない。 (1-3)軍事侵攻は僕はないと思っている。……僕が知る限りでは、中国は日本とは外交も経済もちゃんとやりたいと思っている。台湾への武力侵攻が相当なリスクをもたらすことも彼らはよく分かっている。台湾は独立を言わない。中国も武力に頼らない。現状維持がお互い一番いいということだ。 その通りで、私は全く同意見である。ここから見ると、米国発の「中国脅威論」「台湾有事切迫論」を日本政府がそのまま犬の遠吠えのように繰り返し、中国とは腹を割って話をすることも避けているのを、さらに野党第一党までもが真似しているのが滑稽である。 ■外務・防衛官僚たちへのおべんちゃらを鵜呑みに (2)防衛力の強化 安保環境の厳しさから出発すれば、防衛力強化にしか行き着かないのは自明の理で、文書の「3.防衛力強化」では「ミサイル防空能力の強化」をはじめ6項目が並ぶが、これは政府の言い分そのままだろう。 次に「4.自衛のためのミサイル能力の向上」では、政府の「敵基地攻撃能力」「反撃能力」について「先制攻撃となるリスク」など3つの懸念を示して政府案に「賛同できない」としているものの、そのすぐ後で「島しょ部などへの軍事的侵攻を抑止し、排除するためのミサイルの長射程化などミサイル能力の向上は必要」であり、またその長射程化が他国領域への打撃力となる場合も「それが政策的な必要性と合理性を満たし、憲法に基づく専守防衛と適合する」ものであれば保有を認めるとしている。何のことはない、条件付き容認論に過ぎない。 実際、玄葉はこれを発表した会見の席で「反撃能力」について「必ずしも保有、行使一般を否定しているものではない」と述べている。これはもちろん、岸田や、玄葉が親しくしている外務・防衛官僚たちへのおべんちゃらである。 これと引き比べると、河野洋平は遥かに明晰で、これも私は同意見である。 (2-1)敵基地攻撃能力の保有解禁は日本にとって賢明な策とは思わない。憲法9条は、国際問題を解決するのに武力を用いない、武力による威嚇をしないと明言している。武力で物事を解決しない、外交などで問題解決することに切り替えた。……だから戦争を放棄して軍隊も持たない、武器の輸出もしませんと言ってきた。 (2-2)軍事的な脅威、もしくは抑止力とは、能力×意思の乗数だ。これまでは専守防衛で攻撃の意思はない、つまり意思ゼロだったから、多少の武器・弾薬を持っていても掛け算してゼロだった。ところが、敵基地攻撃能力解禁で今後は攻撃の意思あり、と変わる。それに加えトマホーク400発や足の長いミサイルを持つという。これは周辺国に対する明らかな脅威、9条で禁じる威嚇になる。しかも、脅威を抑え込むとなると、さらなる軍拡につながる恐れがある。負のスパイラルだ。 ■幼稚園レベルでしかない立民の安保議論 私はそもそも「抑止力」とは「武力による威嚇」そのものだと思っている。国連憲章第2条でも日本国憲法第9条でも「武力による威嚇または武力の行使」を原則として禁じていて、しかもこの2つをワンセットで表現しているのは、行使できるような武力でなければ威嚇にならないし、威嚇のために武力を振り回せば簡単に行使に繋がりかねないので、両者の間に垣根がないからである。 さらに「抑止力」というのは核でも通常兵器でも、所詮は心理ゲームであって、「このくらいの量と質の破壊的兵器を持てば流石に相手も縮み上がって手を出して来ないだろう」と考えるわけだが、それは全くの推測に過ぎず、相手はそう考えていないかもしれないし、あるいはこちらを上回る能力を備えることで抑止を回避しようとするかもしれない。だから必ず際限のない軍拡競争になる。 こういうことを原理的・法理的なところまで含めて議論することなく、「一定の抑止力を持つのは当然でしょう」などとお気軽に言っているのは安保論議の幼稚園レベルに過ぎない。 他にもこの文書は突っ込みどころ満載だが、今日はここまでとする。河野は「全体が右傾化し、リベラルがいなくなった」ことを嘆いている。立憲民主のリベラル派は河野を党首に迎えて出直しをしたらどうなのか。 |
WBCの日本代表ではないが、野球は完ぺきな投手が「完全試合」を達成すれば負けることはない。
反対に、いくら選手が点を取っても味方の投手が滅多打ちにされれば勝ち目がない。
同列には論じられないが、政党を始めとする組織はそのトップの立ち振る舞い如何でその組織の命運が決まるものである。
現在の立憲民主党は「先発投手(党首)」は申し分のない働きをしたが、その後の「中継ぎ」とか「リリーフ党首」が腰が定まらず相手チームに翻弄されているようなものである。
早い話が立憲民主党の現在の党首では岸田文雄政権には全く勝ち目がない、とオジサンは思う。