Cycle Log

トライアスロンのトレーニング、レース、機材、その他色々

今さらのRIS9、あるいはブリヂストン・アンカーについて

2016-03-20 | 機材等


 新型のRS9が発売されようというタイミングだが、今更(僕が乗っている)RIS9について語ってみようと思う。言わずもがなのことだけれど、ロードバイクのフレームの選び方というのは、その人のロードバイクに対する考え方が如実に出てくるものであり、面白いものである。
 何故、RIS9を選んだかと言えば、大きな理由はRIS9が発売されたタイミングで先代のRHM9が事故で壊れてしまったからである。RHM9にはなんの不満もなく、RIS9のデザインも気に入ったので(特にストレートフォークが良かった)モデルチェンジのかたちで買い換えた。
 そのRHM9だが、僕の初のロードバイクである。RHM9を選んだ理由はロードバイクという未知の乗り物に乗るに当たって、信頼できそうなメーカーでかつせっかくだから良いものをということで、ブリヂストン・アンカーのフラグシップを選んだのだったと思う。それに、RHM9はフレーム単価で25万円、アルテグラベースの完成車で42万円ほどだったから、性能に対しコストパフォーマンスが高かった。レーシングフレームの割にロングライドばかりしていたが、ロードバイクとは何かを教えてくれた良い相棒だったと思う。
 RHM9からRIS9に乗り換えた時は、コンポもパーツも乗せ換えだったので純粋にフレームの比較をできるシチュエーションだったが、乗り心地も踏み味も丸くなったなという印象だった。
 さて、他のメーカーと比較した際のアンカーのバイクの特徴は第一に頑丈さと信頼性だと思う。定評通りだが、やはりどこに行っても聞く話である。某ショップの方曰く、固定ローラーはどうしてもカーボンフレームにダメージを与えるものだが、アンカーはカーボンが厚いのでダメージが出にくいとのこと。また、ブリヂストン・アンカーのショールームであるバイクフォーラム青山に元選手の清水都貴選手のRIS9についてのコメントが展示されたことがあったが、レースも練習もRIS9の1台で1年間通して乗れたとのこと。もちろん、所属選手のコメントなのである程度間引いて受け取る必要があるだろうが、少なくともメーカーとして頑丈性や信頼性をアピールしたいという意図が読み取れる。
 当然のことだが、RIS9はその現役当時において世界最強バイクではなかったし、作り手からしてそういう作り方はしていなかっただろう。高弾性カーボンによる高剛性化やエアロフォルム化の波に乗らず、(世界最強ではない)日本人選手が海外レースで戦うために、高速域での安定とレースの最後まで足を残せる踏み味を狙って作られたフレームだからだ。そういう意味では、RIS9はブリヂストン・アンカー・プロサイクリングチームの選手たちの協力のもとで同選手たちのために作られた特殊なフレームだと言うことができるかもしれない。特に、当時ブリヂストン・アンカーでエースを務めていた清水都貴元選手の意見が多く取り入れられていたことは想像に難くない。クライマー寄りのオールラウンダーだった同選手の、中盤までチームのアシストを受けながら脚を貯め、後半の登りの勝負どころでアタックをかけることが多かった走りには非常にマッチしたフレームだったのだと思う。一言で言えば、RIS9は清水都貴スペシャルなのだ。
 その言に沿えば、新型RS9は一応、新エースである内間康平スペシャルになろうかと思う。実際、アタックを繰り返し逃げ切りを目指す(あんまり脚を残すことを考えてなさそうな)同選手の走りに、高剛性高効率化を図ったフレームは合っていそうである。とはいえ、内間選手のブリヂストン・アンカーの在籍年数が比較的短いことや、井上和郎選手のブログから同選手の好みの方向に作られていると分かることから、かなり井上テイストが混じったフレームなのではないかとも思う。

 RS9の評判は上々だ(もっとも、アンカーの広告を載せている雑誌やブリヂストン・アンカーの選手のインプレッションだが)。ハンガーとフレームの前三角を高剛性化して、リアホイール揺れを抑えるという独特の設計思想はいかにもアンカーらしくて面白い(RHM9にはドラゴンクローヘッドという高剛性化のための変な形のヘッドチューブがあった)。それに、せっかくアンカーを2代乗り継いできたので乗り換えるなら選んでみたいものだが、今のところミドルグレードのようなデザインの地味さがちょっと面白くない。そのうち、リオ五輪限定カラーとかが出れば面白いのだけど(内間選手がリオ五輪で乗るはずなのだ)。あまり喧伝はされないが、RIS9は2014世界選手権の日本人唯一の完走フレームである。RS9の実績が出るまでは、RIS9にもうしばらくお世話になろうと思う。
 上記をまとめれば、アンカーのバイクは、その頑丈さと信頼性、乗りやすさとともに、世界を目指す日本人のロマンがあるように思う。これがRIS9に乗る理由である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする