今回は、学問のおもしろさに触れてほしい、という本を24冊。
☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
171 | 田中琢 佐原真 | 考古学の散歩道 | 岩波新書 | 171~194=学問も本来はおもしろいものだ。 171は考古学と現代との関わりがわかりやすく語られる。 172は茶という日常的な嗜好品を素材に、資本主義の発達をグローバルに捉える。紅茶と砂糖に対する認識が開ける。 173は信長・秀吉時代の宣教師が日欧の生活・風俗を約600項目にわたり対比。「われわれの間では四歳の子供でも自分の手を使って食べることを知らない。日本の子供は三歳で箸を使って食べる。」 そして現代の女子高生はフォークで食べる。174は江戸時代の平凡なサラリーマンの日常が現代人の共感をよんだ話題の書。 175は難解なテーマをわかりやすく論じる。 176、子供の頃、あなたは自分以外はすべて幻影ではないかと疑ったことがありませんでしたか? 177は現代人、とくに若い世代の心理を具体例をあげて分析。思い当たるふしがきっとあるはず。 178では時代の狂気の実態とその背景を考えよう。 179は有名な伝説の背後の史実を探りつつ、中世のドイツの民衆の生活実態を明らかにする。やや難しいが推理小説的興味で読ませる。 180は紀元前以来中国史を賑わせた盗賊の実態。毛沢東の革命もその上に位置づける。楽しい語り口。 181は江戸時代の自然発生的な大衆の伊勢参宮と集団的乱舞。 182は国文学と歴史学と民俗学にまたがる。 183はわれわれが食べているバナナのほとんどを産するミンダナオ島の実態から日本とアジアとの関わりを多角的に照射する。同じ著者の「アジアの歩き方」(朝日)にはバナナをテーマにした小学校での楽しい授業記録がある。 184の著者は日本民俗学の祖。読みづらい著作が多いが、これは多少はマシか。「明治大正史」(講談社学術)も名著との評価が高い。 185は大洋に沈んだ古代大陸の謎。 186は生命と名誉をかけて病原菌と闘ってき学者たちのドラマ。あくなき探究心、多くの誤謬、犠牲的精神と無駄な死等。 187は恐竜絶滅の謎をスリリングで緻密な論理により解明する。結論もショッキング。188、ネコが顔を擦りつけてくるのはマーキングといってニオイをつけているんですよ。「イヌのこころがわかる本」もおもしろい。 189と190は数学の古典的名著。 191、故黒羽先生は私の尊敬する日本史教育の先生。日本史を学ぶ人、社会科教師を志す人はぜひ全著作を読んでほしい。 192・193は単なる語学テキストに非ずる言語学習は文化・社会等の全体的な理解に関わることがよくわかる。とくに外国語=英語と思い込んでいる人、会話が語学勉強のすべてと誤解している人は目からウロコが落ちるはず。 194、日本語も他国人からみれば外国語。<新橋>のシンのイントネーションが↘なのに<新宿>のシンが↗なのはなぜ? <新橋駅>になると↗、難しい。ウー。 |
172 | 角山栄 | 茶の世界史 | 中公新書 | |
×173 | フロイス | ヨーロッパ文化と日本文化 | 岩波文庫 | |
174 | 神坂次郎 | 元禄御畳奉行の日記 | 中公文庫 | |
× 175 | 市井三郎 | 歴史の進歩とは何か | 岩波新書 | |
176 | 永井均 | <子ども>のための哲学 | 講談社文庫 | |
☆ 177 | 大平健 | やさしさの精神病理 | 岩波新書 | |
178 | 森島恒雄 | 魔女狩り | 岩波新書 | |
179 | 阿部謹也 | ハーメルンの笛吹男 | ちくま文庫 | |
180 | 高島俊男 | 中国の大盗賊 | 講談社現代新書 | |
× 181 | 藤谷俊雄 | 「おかげまいり」と「ええじゃないか」 | 岩波新書 | |
182 | 益田勝美 | 火山列島の思想 | ちくま学芸文庫 | |
183 | 鶴見良行 | バナナと日本人 | 岩波新書 | |
184 | 柳田国男 | 日本の伝説 | 朝日文庫 | |
× 185 | アンドレエーヴァ | 失われた大陸 | 岩波新書 | |
186 | クライフ | 微生物の狩人 | 岩波文庫 | |
187 | アラビー ラブロック | 恐竜はなぜ絶滅したか | 講談社ブルーバックス | |
188 | フォックス | ネコのこころがわかる本 | 朝日文庫 | |
189 | 吉田洋一 | 零の発見 | 岩波新書 | |
190 | 遠山啓 | 数学入門 | 岩波新書 | |
191 | 黒羽清隆 | 日中15年戦争 | 教育社歴史新書 | |
192 | 渡辺吉鎔 | 朝鮮語のすすめ | 講談社現代新書 | |
193 | 鐘ヶ江信光 | 中国語のすすめ | 講談社現代新書 | |
194 | 佐々木瑞枝 | 外国語としての日本語 | 講談社現代新書 |
やっぱり、自分の仕事とか専門分野とは直接関係ない本が楽しく読めます。エンタメ系と同様で、逃避みたいなものですね。忙しい時ほど関係ない本を読んできた、かも・・・。(笑)
学生時代に思ったことですが、学問的に優れた業績をあげている先生の目は幼児のように輝いています。大人が疑問に思わないことを「なぜ? どうして?」としつこいほど訊くような幼児期のあくなき知的好奇心・探究心を持ち続けているということでしょうか。
そんな情熱がこもっている著作は、学問の本でも感動しますね。
今回のリストを見て、専門外とはいえ理科系の本が少ないのが残念。