ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[映画で仕入れた韓国語の俗語・新語・方言] <族譜>の別の意味、<クラ(嘘)>の語源など

2016-03-21 19:43:04 | 韓国語あれこれ
 「映画で仕入れた」といっても、セリフだけでなくもタイトルや関係サイトのカキコミ等々出処はいろいろです。

①족보
 数日前観たイ・ビョンホンチョ・スンウ主演の「インサイダーズ/内部者たち」、韓国ではディレクターズカット版を含めると観客動員約900万人という大ヒット作で、たしかにおもしろかったです。が、日本での認知度はイマイチ(以下?)のようですが・・・。
 物語は未来自動車(!)会長、有力大統領候補の議員、祖国日報(←朝鮮日報のような)論説主幹という財界・政界・言論界の黒いトライアングルに対して熱血検事ウ・ジャンフン(チョ・スンウ)が果敢に挑むというものです。そのジャンフンに対して上司の部長検事がよく口にする言葉が「족보 없는 놈」、すなわち「族譜のないヤツ」です。
 韓国・朝鮮では、族譜(족보.チョッポ)とよばれる昔からの一族の家系譜が重要視されていることは日本でもかなり知られていると思います。梶山季之の小説を原作とした林権澤(イム・グォンテク)監督の映画「族譜」も往年の韓国映画ファンにはおなじみの作品でしょう。
 しかし、ここでいう「族譜のないヤツ」という場合の族譜は系図ではなく、個人の経歴のこと。具体的には(有名大の)学歴及び学校の先後輩といったコネ、家柄や親戚姻戚関係のコネ、それらを含めた<빽>(バック)=後ろ楯といったものです。まあ業種にもよるのでしょうが、これがないと仕事の成功も昇進も望めないということで、検事の世界もがんばって司法試験にパスした元警察官のジャンフンも能力はあっても地方大出身ということで出世の見込みはない、ということなのだそうです。
 映画で私ヌルボの耳に入ったこの言葉は、たとえば→コチラの'내부자들' 조승우, "극 중 무족보 검사, 족보 없는 사투리 쓴다"(「内部者たち」 チョ・スンウ、「劇中の無族譜検事、族譜のない方言を使う」)といった記事の見出しにも多く使われていることを後で知りました。
 ことのついでに、この족보という言葉が家系図の意味以外で使われる別の例を探してみました。

 [A]過去問集のこと。学校関係だけでなく、就職や昇進試験にも用いられます。
  用例:대부분의 시험이 그렇듯 승진시험에도 '족보'는 필수다.
     大部分の試験がそうであるように、昇進試験にも<族譜>は必須だ。

 そういえば、高校部活の部室で定期テストの過去問がきちんと保存管理され、役立てられていた事例があったなー。

 [B]学校・企業・スポーツチーム等、特定の集団の歴史を指す言葉。
 たとえば、ソウル大学校の族譜をたどると京城帝国大学に・・・といったように。
 先日「公的資金完済、りそなの足跡」という長く興味深い記事が「毎日新聞」に載っていましたが、この銀行も含めこの数十年の日本の銀行の族譜もずいぶん複雑になってますね。

 [C]개족보(犬族譜)といえば犬の血統書のこと。
 しかし、この言葉は他に従兄妹同士のような近親間の結婚のことを軽蔑的に言う場合にも用いられるそうです。※韓国では8親等以内は結婚できない。(以前は同族同本間は結婚できなかったが2000年に緩和された。) したがって、従兄妹同士で結婚したければ法的に認められている外国で結婚するのだそうな・・・。

②히야
 この「히야(ヒヤ)」は今韓国で上映中の映画のタイトルです。
 問題児として育ち、殺人容疑等で刑事に追い回される兄チンサン(アン・ボヒョン)と、歌手をめざしながらも兄ゆえ(?)か毎回オーディションに落とされている高校生の弟ジノ(ホヤ)。複雑な思いが交錯する兄弟の葛藤と和解の物語のようです。
 ところが、この「히야」という言葉はふつうの辞書には載っていません。
 こんな時に頼りになるのは→<NAVER語学辞典>。さっそく引いてみると、新語関係の<지식iN 오픈국어>の項目にあります。
 히야(시야)は、標準語だと형아(兄貴よ)という呼称の慶尚道方言。
 히야~ 같아가자!(兄貴、一緒に行こう!)というように弟が兄を呼ぶ時に使う言葉とのことです。

③구라
 今年に入って<慰安婦映画>「鬼郷(귀향)」が話題ですが、観客動員300万人を突破しただけでなく<DAUM映画>のネチズンの評点(→コチラ)も現在数1165)人の平均が9.7と非常な高得点になっています。ところが、その中にあって1.0点という低得点をつけた上、次のような寸評を書いている人を発見!
 내용은 구라인거 아시죠? 일본 군경이 처녀들 끌고가고 저런건 없었구요.(中略)전쟁시기 일부 여자들이 속아서 간걸 침소봉대하지 말구요.
 内容はクラということ知ってるでしょ? 日本軍警が娘たちを引っ張っていってとかそんなことはなかったですよ。(中略)戦時中一部の女性がだまされて行ったのを針小棒大に言いなさんな。
 ・・・等々書き連ねていまが、これに対して目下のところ12人が非難のカキコミを寄せているのもまあ当然の成り行きか・・・。
 で、問題は「구라(クラ)」という言葉の意味。「嘘」の俗語ですが、一般的に使われる거짓말(コジンマル)に比べると「大げさに言う」「声高に言う」といったニュアンスが含まれていて、「ハッタリ」とか「でたらめ」と訳した方がよさそうな感じで、ちょっと品格に欠ける言葉のようです。
 日本語サイトでも、<Kpedia>の거짓말の項目(→コチラ)に、「若者たちは俗語の뻥(ポン)구라(クラ)と言う時が多い」と書かれ、「구라치지마.(嘘つくな)」という例文があげられています。
 次にこの「구라」という言葉の語源ですが、韓国でも国立国語院に質問した方がいました。(→コチラ。) その回答はというと、「隠す、だますの意味の日本語<晦(くら)ます>に由るという見方が一般的。しかし正確な根拠資料はなく真偽を明らかにするには難しいようです」というもの。
 むしろ詳しく書かれているのはやはり<ナムウィキ>。「구라」の項目(→コチラ)にいろいろ書かれています。これにも「晦ます」説を有力な説としてあげています。韓国の賭博場などでイカサマ師(타짜.タチャ)たちがインチキを使って勝負を操作をするという意味の隠語だったのが、拡張されて嘘・詐欺という意味になったもの、という説明がついています。
 またこれとは別に、野球のフライ(후라이)が구라に変わったという説も紹介しています。※후라이は日本風発音で、現在では플라이(プライ)になっています。
 1950~70年代に活躍したコメディアンのクァク・ギュソク(곽규석)はニツクネームがフライボーイ(후라이 보이)だったそうですが、そのわけは彼の広めた流行語が「후라이 치지 마(フライ打つな)」だったから。その意味は「大げさなことを言うな」です。それがその後嘘全般を指す言葉になり、さらにはハッタリといった意味もつけ加えられたとか・・・。
 ・・・等々と詳述されていますが、やはり結論は不明。やっぱり博打打ち関係の言葉だったような感じかな?
 オマケで「신라 와는 관계 없다.(新羅とは関係なし)」と記されているのは<ナムウィキ>らしいジョーク。(구라を見て旧羅という漢字語を思い浮かべる人はまずいないでしょうが・・・。(笑))
 なお、→コチラの<Kstyle>の記事によると韓国の大学生がよく使う日本語(??)の1位がこの「구라」なんですと!? 7割近くが使っている言葉なのだそうです。うーむ・・・。

④여주、남주
 これらの語もネチズンによる映画のレビューから。最近たまに目にするようになりました。「花、香る歌」(原題: 桃李花歌)から例文を1つ。
 수지가 빛났지 아직 여주로 영화하기엔 많이 부족함
 スジが輝いていたがヨジュとして映画に出るにはまだまだ不足
 初見でも前後の脈絡から意味はすぐわかります。漢字だと「여주」「女主」「남주」「男主」。つまり女性主人公(or主演女優)と男性主人公(or主演男優)のことです。

 何か他にもいろいろあったような気がしますが、とりあえず今回はここまで。
コメント (2)
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