ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [8月24日(金)~8月26日(日)]

2018-08-28 23:48:57 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸23日(木)、早稲田松竹に行って18年ぶりに「ペパーミント・キャンディー」を観ました。個人的な新発見もあり、またいろんなことを考えさせられました。それについては、→1つ前の記事で書きましたが、長くなってしまったので後半はこの記事の後で書きます。
 この「ペパーミント・キャンディー」は、韓国での評価が日本よりずっと高いようです。とくにイ・チャンドン監督(や主人公のヨンホ)と同じ世代。つまり今60代くらいの人たちです。やはりリアルタイムで光州事件とその前後の激動の時代を生きてきた人たちは、この作品を観ていろいろ「身につまされる」場面などもあったのではないでしょうか。つまり、心の奥深くに感じさせる何かがあったということ。それに比して、2本立てのもう1つの作品「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」は、観客が「正義の側」にそのまま感情移入できる、「わかりやすい映画」になっています。時代が下るとともに娯楽性が増してくるのは自然な流れなのでしょうが、図式的な見方だと歴史の正しい理解から遠ざかると思います。光州事件にしても、なりゆきで「加害者」になったり、その時は<正義>と信じてとった行動が後に断罪されたり、といった事例は「親日行為」その他でも多々あると思います。(・・・ということはホントは韓国の人たちに言いたい。)

▸25日(土)は文京区民センターでドキュメンタリー「在日 歴史編」「 同 人物編」を観てきました。上映時間は各2時間あまり。間にトークシェア等が入って、午後1時半から7時過ぎまで。私ヌルボ、「歴史編」の方は以前観ましたが細部はもちろん記憶になく、今回「人物編」と合わせて観ることができて大収穫でした。(具体的に書くと長くなりそうなので全部スルーします。)

▸(「盗作問題」も含めて)話題の低予算映画「カメラを止めるな!」の上映が23日から韓国でも始まりました。後述のように観た人たちの評価はなかなか高いです。来月初めには上田監督が訪韓して舞台挨拶することになったとか。※参照→<Kstyle>の記事
    
「朝鮮日報」8月24日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)

나도 저런 첫사랑이 있었지


 《週末の劇場街》で紹介

  「君の結婚式」



   僕にもそんな初恋があったなあ



 「ホイットニー」
   彼女の歌に結局グッと ★★★☆


 「目撃者」

   展開はいいが最後に傷 ★★★



 「私を振ったスパイ」

   基本は〇 活劇コメディ ★★★

 各作品とも、→先週または以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(8月28日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
          ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。

①(1) カウンターズ(韓国)  9.52(165)
②(2) ダンガル きっと、つよくなる  9.51(1,619)
③(-) カメラを止めるな!(日本)  9.39(154)
④(-) 大人図鑑(韓国)  9.39(59)
⑤(3) ハー・ストーリー(韓国)  9.34(2,127)
⑥(5) インクレディブル・ファミリー  9.27(9,688)
⑦(-) 1987(韓国)  9.25(31,308)
⑧(6) 劇場版 ハロー カボット:白亜紀時代(韓国)  9.24(1,969)
⑨(7) ブレス しあわせの呼吸[ブリーズ]  9.24(240)
⑩(4) 名探偵コナン ゼロの執行人(日本)  9.22(2,460)

 ③と④の2作品が新登場です。
 ③「カメラを止めるな!」、日本での一大旋風が韓国にも上陸。4人中3人は10点満点をつけています。韓国題は「카메라를 멈추면 안 돼!」です。
 ④「大人図鑑」は韓国のドラマ。14歳のギョンオン(イ・ジェイン)は父の葬式で見ず知らずの叔父ジェミン(オム・テグ)に会います。中途半端な詐欺師のジェミンはギョンオンに残された保険金をすべて失くしてしまい、結局2人は資金を調達するために近所の薬剤師を相手に父娘を装って詐欺を仕掛けようとするのですが・・・。原題は「어른도감」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 顔たち、ところどころ  8.86(7)
②(2) 万引き家族  8.13(8)
③(-) 1987(韓国)  8.08(12)
④(4) ソソン里[韶成里](韓国)  8.00(2)
⑤(5) 君の名前で僕を呼んで  7.80(10)
⑥(6) ミッション:インポッシブル/フォールアウト  7.56(9)
⑦(-) ゴッホ~最期の手紙~  7.50(8)
⑧(7) 聖なる秩序  7.40(5)
⑨(8) インクレディブル・ファミリー  7.33(9)
⑩(9) ザ・スクエア 思いやりの聖域  7.25(12)

 今回の新登場はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月24日(金)~8月26日(日) ★★★

         「君の結婚式」以下4位までが韓国映画

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(14)・・君の結婚式(韓国) ・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・694,217 ・・・・・・・・901,202 ・・・・・・・・7,858・・・・・・・・962
2(1)・・目撃者(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/15 ・・・・・・・・・・432,987・・・・・・・2,197,283 ・・・・・・・19,073・・・・・・・・845
3(2)・・工作(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・317,432・・・・・・・4,660,990 ・・・・・・・40,293・・・・・・・・797
4(3)・・神と共に-因と縁(韓国) ・・・・・・8/01 ・・・・・・・・・・290,075・・・・・・11,879,684 ・・・・・・・99,507・・・・・・・・735
5(4)・・マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー・・8/08・・・・・193,263・・・・・・・1,957,277 ・・・・・・・16,867・・・・・・・・568
6(19)・・私を振ったスパイ・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・105,046 ・・・・・・・・164,015 ・・・・・・・・1,471・・・・・・・・262
7(6)・・モンスター・ホテル・・・・・・・・・・・8/08 ・・・・・・・・・・・70,538・・・・・・・1,002,936 ・・・・・・・・7,567・・・・・・・・407
       クルーズ船の恋は危険がいっぱい?!
8(7)・・ミッション:インポッシブル ・・・7/25 ・・・・・・・・・・・49,392・・・・・・・6,528,760 ・・・・・・・55,423・・・・・・・・263
9(5)・・MEG ザ・モンスター ・・・・・・・・8/15 ・・・・・・・・・・・39,417 ・・・・・・・・515,548 ・・・・・・・・4,421・・・・・・・・309
       /フォールアウト
10(新)・・マイル22 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・38,675 ・・・・・・・・51,350 ・・・・・・・・・・457 ・・・・・・・・203
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「神と共に-因と縁」の観客動員数は今のところ歴代韓国映画の12位。ベスト10入りは1230万人を超えないと・・・って、これは届きそう。1~4位の韓国映画、性格の異なるものばかりで、複数観る(観た)人は多そう。私ヌルボも日本公開が待ち遠しいです。
今回の新登場は1・5・8位の3作品です。
 1位「君の結婚式」は、韓国のラブロマンス。高3の夏、転校生スンヒ(パク・ボヨン)に一目惚れしたウヨン(キム・ヨングァン)。スンヒをちょろちょろ追っかけ回し、やっと最終的に公式カップルとして生まれ変わろうとしたその時、「元気でね」との電話1本を残したままスンヒは姿を消してしまい、ウヨンの初恋はそのまま幕を下ろすかのようでした。その1年後、ウヨンはスンヒの足跡を追って粘り強い努力で同じ大学に合格します。ところが、彼の行く手を遮ったのは、他でもない彼女のボーイフレンドでした・・・。原題は「너의 결혼식」です。
 6位「私を振ったスパイ」(仮)は、アメリカのスパイ&コメディ。オードリー(ミラ・クニス)の誕生日にメールでの別れの知らせもなく、くだらないミッションを残して消えた元カレのドリュー。オードリーはそのドリューがCIAのスパイだったことを突き止めます。彼が殺害された後、オードリーと親友のモーガン(ケイト・マッキノン)は個人情報の入っているフラッシュドライブをウィーンにもっていかなければいけません。そんななりゆきで国際的な犯罪に関わるスパイになってしまった彼女たちがヨーロッパ全域を駆け巡る中、正体不明の英国エージェントが接近し、最精鋭の殺し屋からも追われることに。そこで親友同士2人のおしゃべりとアクションが炸裂します・・・。韓国題は「나를 차버린 스파이」。日本公開は未定のようです。
 10位「マイル22」は、アメリカのアクション&スリラー。世界を揺るがす危険な物質が盗まれ、その行方を知る男リー・ノアー(イコ・ウワイス)が重要参考人としてインドネシアのアメリカ大使館に保護されます。リーの抹殺をもくろむ武装勢力が多数送り込まれる中、ジェームズ・シルバ(マーク・ウォールバーグ)率いるCIAの機密特殊部隊は、リーをインドネシア国外に脱出させる任務に就くきます。22マイル(34.5㎞)とは、アメリカ大使館から空港まで距離。はたして、リーを無事脱出させることができるのか? ジェームズとともにアリス・カー(ローレン・コーハン)やサム・ショウ(ロンダ・ラウジー←初代UFC世界女子バンタム級王者・北京五輪女子柔道銅メダリスト)といった女性隊員たちも活躍します。韓国題は「마일22」。日本公開は2019年1月です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・フィクシーズ:トップシークレット・・8/23・・・・・・11,886・・・・・・・・・14,309・・・・・・・・・・108・・・・・・・・・268
2(34)・・ホイットニー ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・6,862・・・・・・・・・・8,880・・・・・・・・・・・78・・・・・・・・・・79
3(2)・・万引き家族(日本)・・・・・・・・・・・・・・・7/26 ・・・・・・・・・・・4,989・・・・・・・・154,862・・・・・・・・・1,287 ・・・・・・・・・45
4(4)・・神は死ななかった:暗闇の中の光・・7/19・・・・・・・・・・2,274・・・・・・・・・81,518・・・・・・・・・・638・・・・・・・・・・25
5(23)・・カメラを止めるな!(日本)・・・・・・8/23 ・・・・・・・・・・・2,249・・・・・・・・・・4,975・・・・・・・・・・・42・・・・・・・・・・58

 1・2・5位の3作品が新登場です。
 1位「フィクシーズ:トップシークレット」(仮)はロシアのアニメ。フィクシーは電子製品の中に住んでいる1㎝のミニヒーロー。そのフィクシーの正体を知っている人は10歳の少年トム・トーマスと天才ユジニアス教授だけです。しかし、いたずらフィクシーのファイアーがユジニアス教授が発明した特殊ブレスレットを身に着けて都市全体を混乱に陥れてしまい、その拍子にフィクシーの正体がばれそうになってしまいます・・・。韓国題は「픽시」。日本公開はなさそうですね。
 2位「ホイットニー」は、2012年48歳で突然亡くなったホイットニー・ヒューストンのドキュメンタリー。彼女の母親や元夫、友人たちや、映画「ボディーガード」で共演したケヴィン・コスナー等々多くの人たちを登場させ、薬物問題や家族問題にも迫りつつ、彼女の人生と素顔を明らかにしていった作品で、秘蔵音源や未公開映像なども含まれているとのことです。韓国題は「휘트니」。日本公開は年内のようです。
 5位「カメラを止めるな!」については上述しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[韓国映画]早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ①18年ぶりに知った新事実

2018-08-28 11:35:50 | 韓国映画(&その他の映画)
 8月23日(木)早稲田松竹で久しぶりに「ペパーミント・キャンディー」を観てきました。たぶん2000年の初公開の時に観て以来だから18年ぶりです。
 その間、全然観る機会がなく、またしばらく前からDVDの通販もレンタルも在庫なしのようだし・・・。(販売元のアップリンクさん、なんとかしてほしい! 「風の丘を越えて 西便制〈ソピョンジェ〉」も。)

    
【「ペパーミント・キャンディー」[韓国版]のポスター(左)の数字は韓国初公開日2000年1月1日。最下段の「0」は??】

 [9月3日の追記]シネマコリア@cinemakoreaさんのツイートによると、その日の午前0時に公開されたからとのことです。カムサハムニダ!
 それにしても早稲田松竹、こんなに混んでいるとは思いませんでした。2年3ヵ月前に行った時とはずいぶん違います。最終日の前日ということもあるのでしょうが、その前から回によっては満席で立ち見まで出たとのこと。私ヌルボが入った回は幸い座れましたが、なるほど153席の7~8割は埋まっていました。一般1300円で「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」との2本立てを観られるのですから、十分うなずける客の入りではあります。
 <1980年5月、映画が描くふたつの光州事件>と銘打っての2本立てで、早稲田松竹のサイトにも詳しい紹介記事があります。(→コチラ。)

 私ヌルボ、今年観た「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」については→コチラの記事の冒頭で少し書いたので、今回はとくに「ペパーミント・キャンディー」について、それもタイトルに書いたように「18年ぶりに知った新事実」について重点的に書くことにします。つまり、その間にいろいろ仕入れた知識等がなければ2度目に観ても気づかなかったようなことです。

 冒頭の場面は1999年春の<野遊会>の章。(ここから時間軸を逆にたどり、20年前までさかのぼっていくというのがこの作品の構成のユニークなところです。) 10数人の男女が川辺で青空の下でテントを張り、シートを敷いて飲んだり食べたり歌ったりしています。韓国人はこういう野遊会がホントに好きですね。
 その少し後でわかることですが、集まった人たちは、主人公のキム・ヨンホ(ソル・ギョング)も含めて、かつての「カリボン峰友会」の仲間たち。20年ぶりに同じ場所に集まったのです。
 私ヌルボ、まず最初に「そうだったのか!」と思ったのがこの「カリボン」でした。ソウルの加里峰(가리봉.カリボン)洞のことです。
 ところが、野遊会の場所の向こうに鉄道橋が見え、その先にトンネルがあるというこの場所。対岸の山の眺めといい、とても都市近郊とは思えません。<居ながらシネマ>の記事(→コチラ)等によると、撮影地は内陸部の忠清北道・堤川(ジェチョン)市で、それも市街地から遠く離れた忠北線の三灘(サムタン)駅近くの河原です。※現地にはこの映画の撮影地という記念碑があります。→関係記事(1)、→(2)
 ということは、映画の中ではこの場所は一体どこという設定になっているのでしょうね? ソウル市内でないとしても、ソウルから遠くないどこかということかな?

 「ソウルの加里峰のことか?」という推測が正しかったことは、上映時間の半ばを過ぎた1984年秋の<祈り>の章の冒頭の映像でわかりました。
  
    
 正面に見える食堂の前の空き地で、ホンジャ(左はキム・ヨジン)が自転車の練習をしているところにヨンホが通りかかる場面です。右は同じ章の後の方。夜ヨンホが店の前で自転車を乗り回しています。コチラの画像だとはっきりと「공단식당(コンダンシクタン)」という字が読み取れます。つまり「工団食堂」です。<工団>という熟語は日本ではふつう用いられませんが<工業団地>のこと。あの「開城工団」の「工団」ですが、ここでは「九老工団」のことです。といえば、韓国映画にくわしい方なら「九老アリラン」(1989)を思い起こすかも。その九老地区にある食堂なのです。※ただし、撮影地は群山市のセット。→コチラの<DAUM>のQ&A記事によると、約1000坪のさら地に黄土や石を敷いた上に油性塗料と色素を混ぜた水をかけて黒っぽい地麺にしたとか、この食堂の他、美容室やランドリー等を作り、食堂の前に練炭を積んだり、公衆電話や周辺の壁や電柱の張り紙・ポスターといった小物まで気を使って80年初頭を再現したそうです。

 <祈り>の次の章は<面会>。1980年5月です。ということは、あの<光州事件>が起こった時で、この章の内容もそれに関わるものです。
 しかし、ここまで1時間43分、「なんでこれが<光州事件>の映画なんだ?」と疑問を抱きつつ観ていた人は多いのではないでしょうか? <光州事件>の映画ということを知らずに観たら、最後までこの章が光州事件の時の出来事ということもわからないかも・・・。
 この章の内容については委細はあえて省略します。

 そして最後の章が<遠足>。1979年秋です。季節は違いますが、最初の章の20年前で、同じ場所です。
 本作品のほとんどすべての内容紹介が「この章は、当時のヨンホが20歳の純粋な青年だったことを最終章と対比的に描いている」といったことを記しています。それは間違いではありません。が、それだけではないのです。
 最初は20人余の若い男女が歌いながら川岸を歩いていく場面です。その歌はあのキム・ミンギ作曲の「朝露(アチミスル)」。ヤン・ヒウンの歌で広く知られ、民主化運動の象徴ともいうべき歌です。※→関連過去記事
 仲間たちから離れて野花を摘んでいるヨンホに話しかけた女性がユン・スニム(ムン・ソリ)です。カメラのこと等を話すヨンホに好感を抱いた彼女が渡したのがハッカ飴(ペパーミント・キャンディー)でした。「ハッカ飴がお好きなんですか?」とヨンホが問うと、返ってきた答えは「私の工場では1日に千個のハッカ飴を包むんです」
 つまり、彼女も工業団地で働いていた労働者だったのです。(<面会>の章で彼女は「ソウルのどこから来たんですか?」との問いに「永登浦区加里峰洞ですけど」と答えています。)
 この会話で、2人は同じ職場ではないことがわかります。では、この加里峰峰友会という会は一体どういう会なのか? 答えは九老工団の(各工場を越えた)夜学と思われます。日本のウィキペディアの「ペパーミント・キャンディー」の項目には書かれていませんが、→韓国のウィキペディアにはあり、他の多くの韓国サイトにも同様の記述があります。
 つまり、ヨンホたちはそれだけ意識が高く、向上心も旺盛な労働者だったということ。組合活動や(同年11月14日に暗殺された)朴正熙政権に対する民主化闘争に関心を持っていた(関わっていた?)ことが推測されます。また、当時は→コチラの過去記事に書いたように、当時多くの大学生たちが自分の履歴を隠して九老工団の労働現場に身を投じ、労働者の組織化や待遇改善闘争に乗り出しました。<ヴ・ナロード>の韓国版といったところでしょうか。<祈祷>の章で、先輩の警察官がヨンホに「おまえ、この近くの工場で働いていたんだってな」という場面があるので、もしかしたらヨンホもそんな学生のひとりだったのかな?とも思いましたが、この点は思い過ごしだったようです。
 (話は戻って)この遠足で、仲間たちが川辺で車座になって歌った歌は「ナ オットッケ」(나 어떡해.僕はどうしよう)。1977年の大学歌謡祭でサンドペプルスというソウル大学のバンドが歌って大賞を受賞し、広く知られた歌です。この歌が最初の<野遊会>の章でヨンホが叫ぶように歌った歌です。これは歌詞の内容がまさにヨンホの心情に重なっていたということでしょう。

 ・・・ということで、ここまでのとりあえずの結論は、「ペパーミント・キャンディー」は<光州事件の映画>であるとともに、<九老工団関係の映画>でもあるということです。

 知っていること、調べたことをいろいろ書き連ねていったら例によってどんどん長くなり、1回では収まりがつかなくなってしまいました。あとは続きに回します。

 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ②映画で振り返る九老・加里峰・大林洞の40年の歴史>
 →<早稲田松竹で観た「ペパーミント・キャンディー」 ③申京淑の自伝的小説「離れ部屋」を読んで気づいた3つの共通項>
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする