ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [1月21日(金)~1月23日(日)]と作品紹介 ▶ハン・ヒョジュがアクション時代劇の主演だって!? ▶半世紀前ミシン縫製工だった(元)少女たちのドキュメンタリーに注目!

2022-01-28 23:43:57 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事中、注目の韓国映画[エンタメ系]は先行上映でごく少ない上映館数ながら10位にランクインしている「海賊:鬼の旗」。ストーリーはどーでもいい下の記事参照ということで、私ヌルボが「オッ!!」と思ったのはカン・ハヌルクォン・サンウという人気男優に対する主演女優がハン・ヒョジュということ。はて、ハン・ヒョジュが今まで時代劇に出たことがあったかな?と考えてもすぐには思い出せず。調べてみたら、そうか「王になった男」がありましたね。しかし光海君(イ・ビョンホン)の妃役でもちろん美人なんだけどそんな目立つ役柄でもなかったような・・・。彼女の時代劇ドラマでは何と言っても「トンイ」の印象が強く、→コチラ<韓国ドラマ時代劇 美人女優 ランキング>
という記事を見たらやっぱり「トンイ」のハン・ヒョジュが1位。ちなみに2位は「奇皇后」のハ・ジウォン、3位は「師任堂」のイ・ヨンエと続きます。
 ただ、今回の作品はアクションで、それも義賊とは言っても海賊船の主なので、初めて刀を振るったりしてお妃様とは大違い。どんな塩梅(←老人語か?)になってるでしょうね、・・・ということで、たぶんそのうち日本でも公開されるでしょうから期待しましょう。

▶注目の韓国映画[ドキュメンタリー]は、原題「미싱타는 여자들(ミシンに乗る女たち)」で、なんだかよくわからないので私ヌルボの判断で「ミシン縫製工だった少女たち」と仮題をつけてみました。内容はというと、→コチラの記事でも紹介した全泰壱[チョン・テイル]が「勤労基準法を遵守せよ」と叫んで焼身自殺をした1970年から80年頃、やはり平和市場近辺の工場で働いていた労働者が1万5千人ほどもいました。そのうちの80%は女性たちでしたが、下は12歳、多くは16歳ほどで、家族を扶養し、特に兄弟たちを学校に送るためにお金を稼ぎ始めた10代の少女たちでした。労働時間は朝8時から夜11時まで。1日15時間労働です。
 当時の彼女たちは家が貧しかったり、あるいは「女には勉強は不要」とのいう理由で地方からソウルに出てミシン縫製工場やカツラ製造等の輸出産業の工場の労働者になった少女たちが大半を占めていました。小・中学校で成績がよくても、兄や弟の学費を稼ぐという役割を姉妹が担うのは普通だったのです。(※「82年生まれ、キム・ジヨン」にも関連のセリフがありましたね。) その少女労働者たちも今は50代後半以上になりました。今韓国の<#MeToo>運動の主な担い手はかつての縫製工場の女子労働者よりもずっと後の世代なのですが、急速に変わってきている韓国社会で半世紀前に青春時代を過ごした彼女たちの証言を記録し若い世代に伝えることはとても意義あることだと思います。
 実は本ブログでは関連の過去記事がいろいろあります。
 彼女たちは<コンスニ>、そして補助役は<シダ>と呼ばれたりしていましたが、<コンスニ>については→コチラの記事参照。この記事の中の「四季」という歌もご存知なければぜひ聴いてみて下さい。
 なお、<シダ(시다)という言葉は日本語の<下>に由来する言葉です。
 70~80年代、平和市場近辺だけでなく、ソウル南西部の九老工団[工業団地]も多くの女子労働者が苛酷な労働環境で働いていた工場の密集地でした。「九老アリラン」(1989)はそこの縫製工場で働く労働者たちの物語です。(チェ・ミンシクやイ・ギョンヨンが出演している。) また、あの「ペパーミント・キャンディー」の主人公 (と、かつての仲間たち)も九老地区の労働者で、おそらく夜学の仲間と思われます。その関係記事は→コチラ、そして何十年も経ってデジタル団地へと変貌した九老地区には往時の女子労働者たちの労働と生活を物語る資料を展示している九老工団労働者生活体験館があります。→コチラと→コチラ参照。
 そして、全羅北道から高校進学を断念してその九老工団で働きながら高校の夜間部に通学し、先生に文才を認められて専門大学に進学、その後韓国の代表的な小説家となったのが申京淑(シン・ギョンスク)でした。彼女の代表作(の1つ)の「離れ部屋」は彼女の自伝的小説ですが、4年前に読み直して「「ペパーミント・キャンディー」と共通する点がずいぶん多いことに気づき、イ・チャンドン監督が間違いなくこの小説を読んだことを確信しました。→コチラ参照。
 うーむ、いろんなことが関連していてキリがなくなってきた感じだなー・・・。
    
【 朴正熙大統領記念図書館にある縫製工場の労働者たちの展示物(左)。「世界一になろう」等の貼り紙がある。右は九老工団労働者生活体験館での資料映像(日本語字幕)。ミシンは日本製のJUKI。】

    ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績1月21日(金)~1月23日(日) ★★★
          6週連続1位の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」 700万人を超える

【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・スパイダーマン・・・・・・・・・・・・12/15 ・・・161,586 ・・・・・7,168,970 ・・・・・71,889 ・・・・1,216
       :ノー・ウェイ・ホーム
2(3)・・SING/シング・・・・・・・・・・・・・・1/05 ・・・107,898・・・・・・・・664,722 ・・・・・・6,124 ・・・・1,038
       :ネクストステージ
3(2)・・特別手荷物[特送](韓国) ・・・・・1/12・・・・・88,580・・・・・・・・394,208・・・・・・・3,810・・・・・・882
4(4)・・警官の血(韓国) ・・・・・・・・・・・・・1/05 ・・・・57,357・・・・・・・・656,630・・・・・・・6,479・・・・・・711
5(6)・・ハウス・オブ・グッチ ・・・・・・・・・1/12 ・・・・19,861・・・・・・・・108,035・・・・・・・1,065・・・・・・402
6(7)・・キングスマン ・・・・・・・・・・・・・・12/22 ・・・・19,161・・・・・・1,004,237 ・・・・・10,085・・・・・・360
       :ファーストエージェント
7(5)・・ウエスト・サイド・ストーリー・・1/12 ・・・・12,286・・・・・・・・107,675・・・・・・・1,105・・・・・・426
8(新)・・バイオハザード ・・・・・・・・・・・・1/19 ・・・・・・9,866・・・・・・・・・19,983・・・・・・・・・182・・・・・・259
       :ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ
9(新)・・アナザーラウンド・・・・・・・・・・・1/19 ・・・・・・6,846・・・・・・・・・12,195・・・・・・・・・114・・・・・・175
10(新)・・海賊:鬼の旗(韓国)・・・・・・・・1/26 ・・・・・・5,754・・・・・・・・・18,759・・・・・・・・・118・・・・・・・14
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 8~10位の3作品が新登場です。
 8位「バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」はアメリカのアクション&ホラーシリーズの新作。日本でも1月28日公開(←明日だ!)で諸情報が多々流されているので説明は省略します。・・・が、シリーズ第1作からもう20年。現実をみると全然荒唐無稽な設定ではないですね。韓国題は原題通り「레지던트 이블: 라쿤시티(Resident Evil: Welcome to Raccoon City)」です。
 9位「アナザーラウンド」はデンマーク・スウェーデン・オランダ合作のドラマ。日本では昨年9月公開で現在も上映されているので説明は省略します。韓国題は「어나더 라운드」です。
 10位「海賊:鬼の旗」は韓国のアクション&コメディ時代劇。自称高麗一の剣士で義賊団の頭目のムチ(カン・ハヌル)と海賊船の主である女性ヘラン(ハン・ヒョジュ)。1隻の船で運命を共にすることになった彼らですが、生まれて以来互いに風の止む日のないように衝突しながらも航海を続けてきました。そんなある日、倭寇船を掃討していた彼らは、跡形もなく消えた王室の宝物がどこかに隠されているという事実を知り、海賊人生で二度とない最大規模の宝物を求めて危険な冒険に乗り出します。しかし、消えた宝物を捜すのは彼らだけではなかったのです。望むものを手に入れるためには手段を問わない逆賊プ・フンス(クォン・サンウ)もまた宝物を求めて登場してきます。はたして宝物の行方はどこに? そして誰の手に…? 原題は「도깨비 깃발」です。

【独立・芸術映画】
順位 ・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・アナザーラウンド ・・・・・・・・・・・1/19・・・・・・・・・6,846・・・・・・・12,195・・・・・・・・・・114 ・・・・・・175
2(1)・・ドライブ・マイ・カー(日本) ・・・12/23・・・・・・・・・3,049・・・・・・・44,759・・・・・・・・・・423 ・・・・・・・66
3(2)・・青春の君・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/12・・・・・・・・・2,216・・・・・・・12,506・・・・・・・・・・105 ・・・・・・・64
4(新)・・ミシン縫製工だった女性たち(韓国)・・1/20 ・・・1,753・・・・・・・・4,017・・・・・・・・・・・30・・・・・・・・34
5(3)・・フランス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/13・・・・・・・・・1,380 ・・・・・・・・6,891・・・・・・・・・・・66・・・・・・・・52

 1・4位の2作品が新登場です。
 1位「アナザーラウンド」については上述しました。 
 2位「ミシン縫製工だった少女たち」(仮)は韓国のドキュメンタリー。第25回釜山国際映画祭(2020)、第13回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭(2021)で招待作として上映される等、いくつもの映画祭で上映され注目されている作品です。冒頭で記したように原題は「미싱타는 여자들(ミシンに乗る女たち)」で、「ミシンという車輪に乗って空に舞い上がるような女性労働者を想像してつけた」とのことですが、内容に即して訳した方がいいだろう、という私ヌルボの判断で仮題をつけてみました。
 本作のあらましは冒頭に書いた通りです。
 スタートは2018年1月。ソウル市縫製歴史館デジタル映像アーカイブのためにキム・ジョンヨン監督が行った縫製労働者32人へのインタビュー取材から始まりました。その話をまとめるためにキム監督は様々な工場を回って現場のミシン師に会う中で70年代の清渓被服働組合出身の2人に会い、あの全泰壱時代の若い女性労働者の記録がないことに気づき、映画制作を決心します。以後イ・ヒョンネ監督が演出に参加し、絵や合唱等も含めて様々な資料も盛り込まれました。
 証言の中で、当時の女性労働者たちは労組活動をしながら新しい世界に出会い、そこで仲間たちと共に平凡な10代の日常を過ごしたこと、そして特に労組で運営していた労働教室では勤労基準法や労働者の権利について学び、労働条件を改善するために連帯して闘うことを学び座り込み等に積極的に参加したことは充実した経験だった等々と語っています。このドキュメンタリーは、そのように今とはずいぶん違う青春時代を生きた女性たちが今日の青春に送るメッセージでしょう。
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