ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国で公開中の映画 <NAVER映画>の人気順位 [1月26日(水)現在] ▶ドキュメンタリー「観ることを愛する」は今存続の危機にある仁川にある<韓国で最初の劇場>に寄せるファンや映画人の声を伝える

2022-01-30 23:42:35 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事で注目の韓国映画は、何と言っても「観ることを愛する(보는 것을 사랑한다)」というドキュメンタリーです。
 日本では最近報じられた岩波ホールが今年7月末に閉館するというニュースは多くの映画ファンにとって衝撃的なものでした。もちろん私ヌルボも同じです。
 90年代頃からシネコンの急増等映画や映画館を取り巻く環境が大きく変わってきた中で単館運営の映画館の数はずいぶん減りました。しばらく前、私ヌルボは2019年頃「「紙の新聞と映画館は高齢者限定のもので、遠からず消えてゆくものだ」といった内容のツイートをたまたま目にして大きな衝撃を受けましたが、<紙の新聞>の発行部数(全国)は最近10年は1年当たり約150万部ずつ減っていて、購読していない家庭も珍しくはなくなったようです。そして映画館もコロナ禍とそれに伴うネフリ等々配信の急増もあって岩波ホールならずとも厳しい状況に置かれています。
 そんな事情は韓国でももちろん同様。昨年8月末にはソウルの代表的な映画館ソウル劇場が閉館しました。(→コチラ参照。「金子文子と朴烈」等のイ・ジュニク監督はソウル劇場の宣伝部長だった等々興味深い情報満載。)
 この「観ることを愛する」もやはり現在存続の危機に直面している仁川の愛観(館)劇場という映画館についての多くの映画ファンや映画人たちの声を中心に作られたドキュメンタリーです。
 この愛観劇場が注目されるのは「歴史ある劇場」ということで、それも→コチラの記事(韓国語)によると、なんと韓国で最初の劇場とのことです。以前定説とされていたのは1902年ソウル貞洞に高宗在位40周年記念イベントを開くために建てられた協律社ということだったそうですが、その後の研究でそれより10年前の1892年仁川で仁富座という劇場が設立されていたことが明らかになったとのことです。ただこれは日本人が作った日本人のための劇場で、→コチラの記事(韓国語)では「歌舞伎、能、文楽、狂言等日本の芸能が演じられていた」とあります。
 では朝鮮人が設立した最初の劇場はというと、先の協律社とは同音異字の協律舍で、1895年にやはり仁川に建てられました。そしてこれが今の愛観劇場の前身です。この1895年はリュミエール兄弟が世界で初めて映画を有料公開した年なので、協律舍等が映画の上映を始めたのは当然もっと後になりますね。
 協律舍は1911年築港舍と名称が変わり、そして1921年に劇場になったそうです。しかし[館]の字は同音관(グァン)の[観]と間違われることも多く、このドキュメンタリーのタイトルからしてまさに「観ることを愛する」ですから監督からして誤解しているとしか思えません。いや、ほとんどの人が誤解しているのでソチラが一般化しちゃったということかも・・・。
 はてさて、<韓国で最初の劇場>の歴史をたどるとほとんど韓国映画館史の話になり、まさに現在の劇場存続の危機まで書くとなるとこの先まだまだ長くなるのでひとまずここで筆(?)を置き、続きは追って書くことにします。
 なお、現在の愛観劇場は1960年の新築後400席規模の劇場として再開館したもので、今は昔の姿を見つけるのは難しいとのこと。下画像のように堂々とした外観で、館内も広々としています。
     

    ★★★ NAVERの人気順位(1月26日(水)現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
 ※[記者・評論家による順位]とも①等の右の( )は前週の順位。評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
  「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) チャン・ミノ ドラマ 最終回(韓国)  9.91(465)
②(新) 観ることを愛する(韓国)  9.70(10)
③(新) ミシン縫製工だった少女たち(韓国)  9.60(25)
④(1) Beyond LIVE NCT: Resonance(韓国)  9.53(34)
⑤(3) SING/シング:ネクストステージ  9.44(1,814)
⑥(新) 「劇場版 Free!-the Final Stroke-」前編(日本)  9.43(21)
⑦(2) ヴァイオレット・エヴァーガーデン オーケストラコンサート2021(日本)  9.33(18)
⑧(5) 君に行く道(韓国)  9.24(273)
⑨(6) コーダ あいのうた  9.23(724)
⑩(8) ブルーバースデー(韓国)  9.08(48)

 ①②③⑥の4作品が新登場です。
 ①「スタートロット:ザ・ムービー」は、トロット(演歌)の人気歌手6人の公演記録映画「ミスタートロット:ザ・ムービー」(2020)にも出ていたチャン・ミノ[チャン・ミンホ](장민호)の公演記録映画。歌、ダンスからパフォーマンスまで! ミスター・トロット、チャン・ミノの(意外にも)初の単独コンサートの実況と、未公開映像です。1997年に19歳でアイドルデビューするも長い間芽が出なかった彼の初めてのヒット曲が2013年の「남자는 말합니다(男が言います)」(→YouTube)で、「男に言わせるな」のタイトルの日本語バージョンも出ていますね。こういうトロットのステージ等を見ると、BTS等のK-Popばかりが韓国の恵田ではないとつくづく思います。原題は「장민호 드라마 최종회」です。
 ②「観ることを愛する」は韓国のドキュメンタリー。冒頭に記したように、現在存続の危機にある仁川の映画館についてのドキュメンタリーです。仁川は1980年代<シネマ天国>でした。当時の街は劇場でいっぱいで、そこで夢を育てた映画人も大勢います。その後3~40年が経つ間に、映画や劇場をめぐる状況は大きく変わってきました。その中で、韓国初の劇場、仁川の愛観劇場は黙々と歴史を積み重ねてきました。ところがコロナ禍の今、ついにこの劇場さえも消え去る危機にさらされています。本作は、頭の中にまだ生きている愛観劇場の思い出等、多くの映画ファンやボン・ジュノ監督をはじめとする映画人たち等60人余りに達する人々の熱い話で構成されています。原題は「보는 것을 사랑한다」です。
 ③「ミシン縫製工だった少女たち」については、→1つ前の記事で詳述しました。
 ⑥「「劇場版 Free!-the Final Stroke-」前編」は日本では昨年9月公開。京アニの作品は気に入っていて音楽関係を中心に10作品ほど観てきましたが、高校の部活物でも運動部関係は自分が無縁だったこともあって本作もこれまでの<Free!>シリーズも未見です。まあ韓国でも相当な高評価でけっこうなことです。韓国題は「프리! 더 파이널 스트로크 전편블루버스데이」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ドライブ・マイ・カー(日本)  8.44(9)
②(2) ファースト・カウ  8.40(10)
③(3) ハッピーアワー(日本)  8.00(4)
④(4) チタン  7.86(7)
⑤(5) パワー・オブ・ザ・ドッグ  7.75(4)
⑥(6) 海辺の一日  7.71(7)
⑦(7) ドント・ルック・アップ  7.60(5)
⑧(8) ウエスト・サイド・ストーリー  8.00(4)
⑨(9) 君に行く道(韓国)  7.20(5)
⑩(10) スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム  7.10(10)

 前週と評点・順位とも変わりありません。
コメント
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