ずっと以前に韓国でトップのネット書店<YES24>の会員になって以来、頻繁にメールマガジンが送られてきます。その数は毎月2ケタにはなるのでは?
内容は、図書情報だけでなく、新刊書プレゼント、映画情報(試写会・前売り券等)等のお知らせや、書籍以外のいろんな商品の通販のお知らせ。たとえば各種ギフト、化粧品、食料品、雑貨等々。自転車なんてのもあるなー。
で、肝心の図書情報はというと、月3回くらい送られてくる「YES24다락편지(多楽手紙)」に毎回1つのネタが書かれています。
その「多楽手紙」も、とくに私ヌルボの興味を引くような本の紹介はあまりなくて、ざっと目を通すくらいですが、4月7日(日)の「多楽手紙」は日本の翻訳絵本を取り上げていたので注目しました。
見出しは「林明子18年ぶりの新作絵本(하야시 아키코 18년 만의 신작 그림책)」。
記事本文の訳は次のとおりです。
30年近く続け愛される幼児の絵本があります。満1歳前後の子供がいる家なら誰もが1冊くらい持っている『おつきさまこんばんは』、みなさんご存知でしょう? 真っ暗な夜、屋根の上にあらわれた明るいお月様に挨拶し、過ぎていく雲に隠されたお月様を見て泣きそうな顔になり、再びあらわれたお月様に向かってうれしそうに挨拶する絵本。あまりにも単純な内容の絵本ですが、それで子供たちがより見やすくお月様のあとをついてにっこりと笑い、しかめっ面もして、長い間愛される本になりました。
今回出された『ひよこさん』は林明子が18年ぶりに出した新作であり、2008年に亡くなった夫の文と林明子の絵が調和した作品です。夕暮れ時の黄色い赤ちゃんひよこ1羽が野原に走っていきます。日が暮れて薄暗くなるのに、どこに行くのでしょうか? いつの間にか空には星が浮かんで夜になりました。一人で眠りについた赤ちゃんひよこに誰かが近寄ってきます。母鶏ですね。母鶏は、赤ちゃんひよこをふところにぎゅっと抱いています。朝になってママのふところで目が覚めた赤ちゃんひよこは喜んで叫びます。「あ、お母さんだ。お母さん、おはよう。」
心配する母親とは違って、好奇心いっぱいで無邪気な赤ちゃんひよこは子供たちの姿そのままです。簡潔な文章と温かい絵の中に母と子の間の絶つことのできない無限の愛がいっぱい感じられる絵本です。
【日本で今年2月発売の『ひよこさん』(左)の韓国語版(右)が、もう4月1日に発行。】
日本の絵本の翻訳本が韓国内で多数発行されている状況については、2010年9月12日の記事で書きました。上野の国際子ども図書館で開かれていた特別展に行った時の記録です。
その記事中で紹介した地域別の翻訳出版件数の順位は次のようになっています。
(1)韓国 2177 (2)台湾 1206 (3)中国 537 (4)米国 501 (5)フランス 486
つまり日本の絵本の輸出先は韓国が圧倒的に1位ということです。(→コチラ参照。)
そしてそこでも「韓国で抜群に読まれている絵本」として紹介されていたのが林明子「おつきさまこんばんは」でした。(→コチラ参照。)
上掲の<YES24多楽手紙>の文にもあるとおり、月が上がって、雲に遮られて、また現れるという「あまりにも単純な内容」で、おとなであればたぶん1分(!)で読めるのではないでしょうか? しかし0~2歳児にとっては十分以上に印象的な絵本のようですね。あ、読んだことのない方は→コチラやコチラの記事参照。いろんなブログ記事を見ると、子供たちの反応の強さは信じられないほどです。
韓国語学習者の皆さん、韓国語版の方の文字部分は→コチラのブログ記事(日本語)を参照されたし。5分以上かかる人もいらっしゃるでしょうが、がんばってください。
【『おつきさまこんばんは』の日本語版(左)と韓国語版(右)。韓国語版はなんで月が青く縁取られているのかな? 】
この『おつきさま こんばんは』は、<教保文庫>の絵本の現在(今週)のベストセラー・ランクでも第8位に入っています。
さて『ひよこさん』の方ですが、これは「こどものとも 0.1.2.」の2013年3月号として発行されたものです。つまりわずか2ヵ月前。
横浜市立図書館にあったので読んでみました。
こちらも文字部分は少ないので、おとなだとやはり2分以内で読めます。福音館書店のサイト内の紹介ページは→コチラ。
この本の折込み付録の説明によると、5年前に亡くなった征矢清(1935~2008)さんが夫人の林明子さんに書き残したお話とのことです。
母性愛に満ちた絵本なので、おとなにとってはコチラの方が感動すると思います。(笑)
韓国版のタイトルはで、単なる「병아리(ひよこ)」なのはなぜかな? 子供相手にていねいな言葉を用いると不自然なのかも。
さて、なんとなくこの『병아리』について<YES21>の説明を見ていて、「エッ!?」と驚いたのが翻訳者のキム・ナムジュという女性。主な翻訳書を見てみてください。
黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』・佐野洋子『100万回生きたねこ』・村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(韓国題:一角獣の夢)』・吉本ばなな『キッチン』・東野圭吾『聖女の救済』・江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso』・小川洋子『博士の愛した数式』・安部公房『砂の女』等々、その他いろいろ。
いったい何なんだ、このプデチゲのような(←意味不明)ごちゃまぜ状態は!?
今、韓国での絵本の売れ行きランキング上位20位までについて、作家を国別で見ると、韓国6、日本3、その他11。(40位まで見ると、学習絵本が入ってくるので、もっと韓国が多くなります。)
しかし、以前の記事でも書いたように、日本と韓国の間をみると、日本の絵本は大量に韓国で翻訳・出版されているのに、その逆はあいかわらず非常に少ないという状況は変わっていないようです。
たまたま「韓国児童書出版の動向」と題された記事が見つかりました。韓国の児童書関係者によるものと思われる、くわしいレポートです。
これによると、90年代以降の児童書文化の大きな流れのポイントは以下のとおりです。
・韓国では、長い間“児童文学は幼稚である”という社会の認識と闘ってきた。また作家の大部分は男性で占められていた。
・そのような状況に変化の兆しが見え始めたのは1990年代からで、女性も作家として登場し始めた。
・“ママ”作家たちは、“教訓性”という児童文学の伝統を超え、子供たちの感受性に即した童話を発表した。そして韓国の児童文学は長い停滞期から脱却し、ルネサンスを迎えた。
・2000年代に入って、多くの児童文学賞がスタートし、作家教室、大学の文芸創作科出身の作家たちが多数登場した。彼らは権威的な政治環境やイデオロギーに束縛されない自由な世代の作家で、既存の作家とは異なる奇抜な想像力を発揮している。
・韓国は絵本文化が根付いてからわずか20年である。韓国の経済成長のスピードに似て、絵本産業もまた短期間のうちに飛躍的な発展を遂げた。
他の分野同様、絵本文化もやはり90年代から新しい時代に入ったということですね。
私ヌルボも韓国の絵本(原書&翻訳書)をこれまでそれなりに(30冊くらい?)読んできましたが、たしかに日本でももっと翻訳・出版が進むといいとおもいます。
たとえば、チェ・スッキ(최숙희)という人気絵本作家。ベスト20中に5作品も入っています。
【1年生の教科書にも載っているチェ・スッキ作「ケンチャナ(いいじゃん)」。一目で彼女の絵だとわかります。(英語版もある。)】
上の画像の「괜찮아(ケンチャナ.いいじゃん)」の内容は→コチラで見ることができます。
しかし、今のところ彼女の絵本で翻訳されているのは『檀君』だけ。(それもキム・セシル作で、絵だけ担当。)
他にも、いい絵本がたくさんあります。韓国語が初級レベルでも、絵本だととっつきやすく読みやすくてオススメなんですけどねー。
あ、韓国の絵本といえば、この分野で大竹聖美さんという方のお名前をこれまでしばしばお見かけしましたね。関係記事は→コチラやコチラ。
うーむ、記事をまとめるどころか、広がってきてしまったゾ、ということでおわりにします。
内容は、図書情報だけでなく、新刊書プレゼント、映画情報(試写会・前売り券等)等のお知らせや、書籍以外のいろんな商品の通販のお知らせ。たとえば各種ギフト、化粧品、食料品、雑貨等々。自転車なんてのもあるなー。
で、肝心の図書情報はというと、月3回くらい送られてくる「YES24다락편지(多楽手紙)」に毎回1つのネタが書かれています。
その「多楽手紙」も、とくに私ヌルボの興味を引くような本の紹介はあまりなくて、ざっと目を通すくらいですが、4月7日(日)の「多楽手紙」は日本の翻訳絵本を取り上げていたので注目しました。
見出しは「林明子18年ぶりの新作絵本(하야시 아키코 18년 만의 신작 그림책)」。
記事本文の訳は次のとおりです。
30年近く続け愛される幼児の絵本があります。満1歳前後の子供がいる家なら誰もが1冊くらい持っている『おつきさまこんばんは』、みなさんご存知でしょう? 真っ暗な夜、屋根の上にあらわれた明るいお月様に挨拶し、過ぎていく雲に隠されたお月様を見て泣きそうな顔になり、再びあらわれたお月様に向かってうれしそうに挨拶する絵本。あまりにも単純な内容の絵本ですが、それで子供たちがより見やすくお月様のあとをついてにっこりと笑い、しかめっ面もして、長い間愛される本になりました。
今回出された『ひよこさん』は林明子が18年ぶりに出した新作であり、2008年に亡くなった夫の文と林明子の絵が調和した作品です。夕暮れ時の黄色い赤ちゃんひよこ1羽が野原に走っていきます。日が暮れて薄暗くなるのに、どこに行くのでしょうか? いつの間にか空には星が浮かんで夜になりました。一人で眠りについた赤ちゃんひよこに誰かが近寄ってきます。母鶏ですね。母鶏は、赤ちゃんひよこをふところにぎゅっと抱いています。朝になってママのふところで目が覚めた赤ちゃんひよこは喜んで叫びます。「あ、お母さんだ。お母さん、おはよう。」
心配する母親とは違って、好奇心いっぱいで無邪気な赤ちゃんひよこは子供たちの姿そのままです。簡潔な文章と温かい絵の中に母と子の間の絶つことのできない無限の愛がいっぱい感じられる絵本です。
【日本で今年2月発売の『ひよこさん』(左)の韓国語版(右)が、もう4月1日に発行。】
日本の絵本の翻訳本が韓国内で多数発行されている状況については、2010年9月12日の記事で書きました。上野の国際子ども図書館で開かれていた特別展に行った時の記録です。
その記事中で紹介した地域別の翻訳出版件数の順位は次のようになっています。
(1)韓国 2177 (2)台湾 1206 (3)中国 537 (4)米国 501 (5)フランス 486
つまり日本の絵本の輸出先は韓国が圧倒的に1位ということです。(→コチラ参照。)
そしてそこでも「韓国で抜群に読まれている絵本」として紹介されていたのが林明子「おつきさまこんばんは」でした。(→コチラ参照。)
上掲の<YES24多楽手紙>の文にもあるとおり、月が上がって、雲に遮られて、また現れるという「あまりにも単純な内容」で、おとなであればたぶん1分(!)で読めるのではないでしょうか? しかし0~2歳児にとっては十分以上に印象的な絵本のようですね。あ、読んだことのない方は→コチラやコチラの記事参照。いろんなブログ記事を見ると、子供たちの反応の強さは信じられないほどです。
韓国語学習者の皆さん、韓国語版の方の文字部分は→コチラのブログ記事(日本語)を参照されたし。5分以上かかる人もいらっしゃるでしょうが、がんばってください。
【『おつきさまこんばんは』の日本語版(左)と韓国語版(右)。韓国語版はなんで月が青く縁取られているのかな? 】
この『おつきさま こんばんは』は、<教保文庫>の絵本の現在(今週)のベストセラー・ランクでも第8位に入っています。
さて『ひよこさん』の方ですが、これは「こどものとも 0.1.2.」の2013年3月号として発行されたものです。つまりわずか2ヵ月前。
横浜市立図書館にあったので読んでみました。
こちらも文字部分は少ないので、おとなだとやはり2分以内で読めます。福音館書店のサイト内の紹介ページは→コチラ。
この本の折込み付録の説明によると、5年前に亡くなった征矢清(1935~2008)さんが夫人の林明子さんに書き残したお話とのことです。
母性愛に満ちた絵本なので、おとなにとってはコチラの方が感動すると思います。(笑)
韓国版のタイトルはで、単なる「병아리(ひよこ)」なのはなぜかな? 子供相手にていねいな言葉を用いると不自然なのかも。
さて、なんとなくこの『병아리』について<YES21>の説明を見ていて、「エッ!?」と驚いたのが翻訳者のキム・ナムジュという女性。主な翻訳書を見てみてください。
黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』・佐野洋子『100万回生きたねこ』・村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(韓国題:一角獣の夢)』・吉本ばなな『キッチン』・東野圭吾『聖女の救済』・江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso』・小川洋子『博士の愛した数式』・安部公房『砂の女』等々、その他いろいろ。
いったい何なんだ、このプデチゲのような(←意味不明)ごちゃまぜ状態は!?
今、韓国での絵本の売れ行きランキング上位20位までについて、作家を国別で見ると、韓国6、日本3、その他11。(40位まで見ると、学習絵本が入ってくるので、もっと韓国が多くなります。)
しかし、以前の記事でも書いたように、日本と韓国の間をみると、日本の絵本は大量に韓国で翻訳・出版されているのに、その逆はあいかわらず非常に少ないという状況は変わっていないようです。
たまたま「韓国児童書出版の動向」と題された記事が見つかりました。韓国の児童書関係者によるものと思われる、くわしいレポートです。
これによると、90年代以降の児童書文化の大きな流れのポイントは以下のとおりです。
・韓国では、長い間“児童文学は幼稚である”という社会の認識と闘ってきた。また作家の大部分は男性で占められていた。
・そのような状況に変化の兆しが見え始めたのは1990年代からで、女性も作家として登場し始めた。
・“ママ”作家たちは、“教訓性”という児童文学の伝統を超え、子供たちの感受性に即した童話を発表した。そして韓国の児童文学は長い停滞期から脱却し、ルネサンスを迎えた。
・2000年代に入って、多くの児童文学賞がスタートし、作家教室、大学の文芸創作科出身の作家たちが多数登場した。彼らは権威的な政治環境やイデオロギーに束縛されない自由な世代の作家で、既存の作家とは異なる奇抜な想像力を発揮している。
・韓国は絵本文化が根付いてからわずか20年である。韓国の経済成長のスピードに似て、絵本産業もまた短期間のうちに飛躍的な発展を遂げた。
他の分野同様、絵本文化もやはり90年代から新しい時代に入ったということですね。
私ヌルボも韓国の絵本(原書&翻訳書)をこれまでそれなりに(30冊くらい?)読んできましたが、たしかに日本でももっと翻訳・出版が進むといいとおもいます。
たとえば、チェ・スッキ(최숙희)という人気絵本作家。ベスト20中に5作品も入っています。
【1年生の教科書にも載っているチェ・スッキ作「ケンチャナ(いいじゃん)」。一目で彼女の絵だとわかります。(英語版もある。)】
上の画像の「괜찮아(ケンチャナ.いいじゃん)」の内容は→コチラで見ることができます。
しかし、今のところ彼女の絵本で翻訳されているのは『檀君』だけ。(それもキム・セシル作で、絵だけ担当。)
他にも、いい絵本がたくさんあります。韓国語が初級レベルでも、絵本だととっつきやすく読みやすくてオススメなんですけどねー。
あ、韓国の絵本といえば、この分野で大竹聖美さんという方のお名前をこれまでしばしばお見かけしましたね。関係記事は→コチラやコチラ。
うーむ、記事をまとめるどころか、広がってきてしまったゾ、ということでおわりにします。
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