▸Netflix等々、配信による映画鑑賞には気持ちが向かわない昭和時代人の私ヌルボ、それよりも近頃熱心なのはこの10年ほとんど読んでなかった漫画のまとめ読み。松田奈緒子「重版出来、柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」に続いて東村アキコ「かくかくしかじか」等を大人買いして一気に読了。やっぱり仕事漫画はいろいろベンキョーになります。・・・って、まず話としておもしろくなくちゃダメですけど。
▸伝えられるところでは緊急事態宣言が39の県で解除され、シネマサンシャイン、ティ・ジョイ、コロナシネマワールド、イオンシネマ、109シネマズ等の大手シネコンでは5月15日頃から徐々に営業を再開。全国では約100館の映画館が営業を再開したとのこと。とりあえずは朗報ですが、このまま終息していくという保証もないので手放しで喜べるものでもないことは言うまでもありません。(私ヌルボが居住する神奈川も39県に入ってないし・・・。)
さて、この「約100館」いう数字ですが、(たぶん)600館近い全国の映画館の2割にも達していません。ただこの先イオンエンターテイメントや松竹は大阪等3府県でも22日に営業再開、TOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマも5月22日から一部劇場の営業再開を発表したとかで、順調にいけば徐々にではあってもふつうに映画館で映画を観られるような状態に向かうのですが、はたして・・・。
しかし映画館が再開しても、これまで制作の側も撮影できない状態が続いていたので、当面はこの数ヵ月間公開延期のままだった作品をまず公開するとしても、続く作品をすぐに用意できるわけでもなさそう。1ヵ月ぶりに再開した興行通信社による全国映画動員ランキングトップ10(5月16~17日)(→コチラ)を見ても新作は1位「心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-」だけで数週間前の韓国のランキングと同じ感じ。ふつうの状態に戻るにはまだしばらくかかりそうです。
▸先々週の本ブログ記事では国民1人が1年間に映画館で映画を観る回数の平均が「日本1.4回で、韓国の約3分の1」と書きましたが、こうした数値とも関連して、とても興味深く読んだのは5月18日付の「韓国エンタメ、世界席巻の理由」と題した記事。(→コチラ。) 韓国映画「哭声/コクソン」にも出演して注目された國村隼さん、「うらやましく思ったのは観客ですね。韓国の人たちは驚くほど映画好きで、常に新作を待っている。・・・目が肥えたお客さんが増えて現場は下手なものは作れない。当然、作品のクオリティーは上がっていきますよね」と語っています。
さらにこの記事で、國村隼さんも桑畑優香さん(ライター、翻訳家)も、そして宇野維正さん(映画・音楽ジャーナリスト)もそろって指摘しているのは、映画や音楽産業を国が(20年ほど前の金大中政権頃から)有望な輸出コンテンツと位置付けて国が育成・制作段階からシステムを整え財政支援をしてきたということ。この点は(先々週の記事で紹介した)「ユリイカ」5月号を読んで私ヌルボ自身痛感したことでもあります。公的支援といえば、昨年釜ヶ崎を主な舞台にした「解放区」という映画が大阪市の修正指示を拒否し助成金を返還して作品を完成させたことが報じられましたが(→コチラ参照)、どうも日本の行政は「観光地の宣伝になる」とかの狭い了見(←昭和語としても戦前?)で助成しているようで、それじゃ質の高い映画作品は育たないわなー・・・。
▸最近注目した記事その2は、5月17日付の「『愛の不時着』『梨泰院クラス』人気が画期的な理由」と題した飯田一史さん(ライター)の記事。(→コチラ。) 韓国のケーブルテレビtvNで昨年12月~今年2月放送され、最終回は同局のドラマで過去最高の21.7%という視聴率を記録したドラマ「愛の不時着」が日本でも2月からNetflixで配信され大ヒット!ということはどれほど知られているのかな? ご存じなかった方はとりあえず→コチラの記事参照。私ヌルボは韓国での放映中から知ってはいたもののまだ観てません。上述のように配信に対する偏見(??)と、それ以前に今の韓国の(特に進歩系の側)の北朝鮮に対する<片思い>っぽい思い入れ(?)がなんだかなー、といった感じで・・・。これまでの北朝鮮に関係する韓国映画に登場する北朝鮮の兵士やスパイ等を演じる俳優はイ・ビョンホン、チャ・スンウォン等々皆イケメンというのはよく語られる話。「愛の不時着」のヒョンビンも「コンフィデンシャル 共助」で北朝鮮の刑事に扮しているし、「シークレット・ミッション」で北のスパイを演じたキム・スヒョンは同じ役(!)で「愛の不時着」にサプライズ出演とか・・・。しかし、一般的に言って大量の餓死者が出た90年代後半に成長期が重なった世代の北朝鮮人民の体格は、韓国の同世代と比べて見劣りするレベルではないのかなー?(映画やドラマにその点でケチをつけてもしょうがないですけどね。)
とは言っても「愛の不時着」は脱北者の目で見ても北朝鮮の現状をよく描いているそうで、そのうち観るしかないなと思っています。
▸最近注目した記事その2は、5月18日付の「日本の中高年はなぜ若者の韓流ブームを全く理解できないのか」と題した記事。(→コチラ。) 木村幹・神戸大学教授と澤田克己・毎日新聞論説委員(元ソウル支局長等)の対談。大きな変貌を経てきた韓国をどの時代の何に注目してきたか、日本人でも世代によって韓国に対する認識が大きく違うのは考えてみれば当然ですね。とくに年配者の場合昔のことはいろいろ知ってはいても今のことはあまり知りませんからね、・・・とこれはヌルボも反省しなくちゃ。
★★★ NAVERの人気順位(5月19日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) レ・ミゼラブル:ザ・ステージド・コンサート 9.66(56)
②(-) 泣くな、トンズ2:シュクラン ババ(韓国) 9.53(154)
③(新) ネコの執事(韓国) 9.53(38)
④(1) モンマルトルのパパ(韓国) 9.51(116)
⑤(2) サンティアゴの白い杖(韓国) 9.45(22)
⑥(新) トムボーイ 9.43(204)
⑦(3) ライド・ライク・ア・ガール 9.39(138)
⑧(6) ネヴァー・ルック・アウェイ 9.13(123)
⑨(8) 燃え立つ若い女性の肖像 9.04(1,573)
⑩(9) 改葬(韓国) 9.01(88)
①③⑥の3作品が新登場です。
①「レ・ミゼラブル:ザ・ステージド・コンサート」(仮)、⑥「トムボーイ」については後述します。
③「ネコの執事」は韓国のドキュメンタリー。昨年も書いたことがありましたが、近年韓国ではネコの飼い主のことを<執事(집사.チプサ)>といいます。ニャー♥と泣かれると魔法にかかってしまう! ジャージャーメンの代わりにネコのお弁当を配達する中華料理店の店主から給食所を作ってくれてる住民センターの人たち、置き去りにされたネコを心配してご飯をやる魚屋のおばあさん、やはりネコの給食所を作っている釜山・青沙浦(チョンサポ)の青年実業家まで。ネコと一緒に生きていければすべてのものを奪われてもシアワセな<執事>たちの愛の物語です・・・。原題は「고양이 집사」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) 燃え立つ若い女性の肖像 9.22(9)
②(2) パラサイト 半地下の家族[寄生虫](韓国) 9.06(16)
③(3) はちどり(韓国) 8.38(13)
④(4) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 8.00(10)
⑤(5) 1917 命をかけた伝令 7.67(9)
⑥(新) トムボーイ 7.33(9)
⑦(-) ボーダー 二つの世界 7.29(7)
⑧(9) チャンシルは福も多いね(韓国) 7.00(10)
⑨(10) 透明人間 7.00(2)
⑩(新) きみの鳥はうたえる(日本) 6.86(7)
⑥と⑩の2作品が新登場です。
⑥「トムボーイ」については後述します。
⑩「きみの鳥はうたえる」は、佐藤泰志の同名小説の映画化作品で、18年の映画芸術 2018年日本映画ベストテン1位、同キネマ旬報のベストテン3位等高い評価を得ましたが、地味目なためかあまり一般受けはしませんでした。韓国でもまあ同じ感じ。韓国題は「너의 새는 노래할 수 있어」です。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月15日(金)~5月17日(日) ★★★
アパルトヘイト反対の収監者たちの脱出劇「エスケープ・フロム・プレトリア」が1位に
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(3)・・エスケープ・フロム・プレトリア ・・5/06 ・・・・・・・32,837・・・・・・・・67,815・・・・・・・・・・593・・・・・・・・529
2(新)・・ザ・プラットフォーム ・・・・・・・5/13 ・・・・・・・・・・22,515・・・・・・・・29,771・・・・・・・・・・279・・・・・・・・228
3(新)・・野生の呼び声 ・・・・・・・・・・・・・・5/14 ・・・・・・・・・・17,062・・・・・・・・19,873・・・・・・・・・・172・・・・・・・・505
4(1)・・レイニーデイ・イン・ニューヨーク・・5/06・・・・・・13,138・・・・・・・・73,954・・・・・・・・・・659・・・・・・・・470
5(2)・・トロールズ ミュージック★パワー・・4/29 ・・・・・・9,998 ・・・・・・・135,739・・・・・・・・1,044・・・・・・・・229
6(76)・・トムボーイ ・・・・・・・・・・・・・・・・5/14 ・・・・・・・・・・・9,197・・・・・・・・14,534・・・・・・・・・・130 ・・・・・・・・361
7(5)・・さらば、わが愛/覇王別姫・・1993/12/24・・・・・・・・・8,213・・・・・・・・74,460・・・・・・・・・・666 ・・・・・・・・301
8(4)・・あの山を越えて韓国)・・・・・・・・・4/30 ・・・・・・・・・・・7,574・・・・・・・・93,833・・・・・・・・・・699 ・・・・・・・・276
9(新)・・レ・ミゼラブル・・・・・・・・・・・・・・5/13 ・・・・・・・・・・・4,911 ・・・・・・・・7,869・・・・・・・・・・106 ・・・・・・・・333
:ザ・ステージド・コンサート
10(新)・・シー・フィーバー・・・・・・・・・・・5/13 ・・・・・・・・・・・4,353・・・・・・・・・7,124・・・・・・・・・・・62 ・・・・・・・・266
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新型コロナの状況が読みづらいこともあってか、2・3・6・8・10位と新登場が多いわりには観客数は足踏み状態です。
2位「ザ・プラットフォーム」(仮)は、スペインの近未来SF&ホラー。舞台は<ザ・ピット>と呼ばれるタワー型の刑務所。上から下まで多くの階に分けられています。その数は何十、いや、それ以上? 各階に年齢・性別もさまざまな受刑者が2人ずつ住んでいます。物語はこの中だけで展開します。タイトルの<ザ・プラットフォーム>とは、上から下りてくる食事を乗せた台のこと。ところがそこに置かれている食料は上の階からどんどん食べられるので、下に行けば行くほど減少し、また残飯か、それよりひどい状態になっています。もしここで迷って手を出さずにいると、台はわずか2分間で下の階に下りていってしまいます。つまり、この建物はある意味例の「パラサイト」よりも直接的に格差社会を表現しているといえます。ここで生き残っていくためには上の階に昇るしかないわけですが・・・。トロント国際映画祭等で観客賞を受賞する等、注目のカルト作とのことです。韓国題は「더 플랫폼」。日本では3月からNetflixで配信されています。劇場公開は未定かな?
3位「野生の呼び声」は、もちろんジャック・ロンドンの名作の実写映画化作品。日本公開でも2月28日公開されていますが、新型コロナ禍のため3月末以降は上映館も観客も非常に少ない状態で、現在は大分県中津市の1館のみ。7/3~ブルーレイ+DVDセット発売、6/17先行デジタル配信とのことです。(→コチラ。)
6位「トムボーイ」は、2011年製作のフランスのドラマ。16年公開の「ぼくの名前はズッキーニ」の脚本を手掛けたセリーヌ・シアマ監督の作品です。新しく引っ越してきたミカエル(ゾエ・エラン)は青が好きで、サッカーの技術もすばらしく、短い髪もとてもよく似合っている男の子。・・・と思ったら本当の名前はロールという女の子だって!? 近所の子供たちの仲間に入りたくて男の子に扮したとは・・・。ところが、周りの子どもたちはすっかり男の子だと思い込み、リザ(ジャンヌ・ディソン)という女の子はミカエルに淡い恋心を抱いちゃったりして・・・。そこで正体を明かして簡単に笑って終わり、とはならないようなんですね・・・。なかなか言い出せないことはあるし、もしかして子供の世界にもトランスジェンダーの問題? 涙ぐましく美しく、眩しかった10歳の夏の秘密の物語です。韓国題は「톰보이」。日本では11年のフランス映画祭で上映されましたが、一般劇場公開はなく今に至っています。
9位「レ・ミゼラブル:ザ・ステージド・コンサート」(仮)は、昨年ロンドン・イーストエンドを沸かせたミュージカルの実況版。ジャン・バルジャン役のアルフィー・ボー、ジャヴェール警部役のマイケル・ボールをはじめ定評のある歌手たちが観客を魅了します。韓国題は「레미제라블: 뮤지컬 콘서트」。日本公開は未定なのかな? ※右画像は今日本で買えるチケット。8,870円か、うーむ・・・。なお、右の木版画の少女像は日本公演のポスター等々よく見るものですが、モトは顔だけでなく大きなホウキを持ったコゼットの姿で、詳しくは→コチラの記事あるいは→ウィキペディア参照。
10位「シー・フィーバー」(仮)は、アイルランド・スウェーデン・ベルギー・イギリス合作のホラー。海洋生物の行動パターンを研究している女性科学者シヴォーン(ハーマイオニー・コーフィールド)は、実習のために漁船ニアム・チン=オワル号にジェラード船長(ダグレイ・スコット)夫妻等6人の乗組員と共に乗船します。より大きな収穫を得るために彼らは沿岸警備隊から警告を受けていたアクセス禁止水域に進入します。すると彼らの船は未知の、浅瀬のような物体に遭遇し行く手を阻まれます。そこで彼らは青緑色のスライムのような奇妙なものを発見、ダイビングギアを着装したシヴォーンが潜って見るとそれは網でも引き上げられないほどの巨大な生命体でした。また漂っていた別の船に乗り込んだ別の仲間たちはその船室内にいた人々の死を確認します。その後まもなく、乗組員の間で熱が広がり、1人また1人と死を迎えることになります・・・。韓国題は「씨 피버」。日本公開は未定のようです。もしかして配信で観られる?
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・エスケープ・フロム・プレトリア ・・・・5/06・・・・・・・・32,837・・・・・・・・・67,815・・・・・・・・・・593 ・・・・・・・529
2(1)・・レイニーデイ・イン・ニューヨーク ・・5/06・・・・・・・・13,138・・・・・・・・・73,954・・・・・・・・・・659 ・・・・・・・470
3(31)・・トムボーイ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/14・・・・・・・・・9,197・・・・・・・・・14,534・・・・・・・・・・130 ・・・・・・・361
4(3)・・さらば、わが愛/覇王別姫 ・・・・・1993/12/24・・・・・・・・・8,213・・・・・・・・・74,460・・・・・・・・・・666 ・・・・・・・301
5(4)・・私の青春はあなたのもの ・・・・・・・・・・4/29・・・・・・・・・4,011・・・・・・・・・80,871・・・・・・・・・・684 ・・・・・・・189
3位「トムボーイ」が新登場ですが、これについては上述しました。
▸伝えられるところでは緊急事態宣言が39の県で解除され、シネマサンシャイン、ティ・ジョイ、コロナシネマワールド、イオンシネマ、109シネマズ等の大手シネコンでは5月15日頃から徐々に営業を再開。全国では約100館の映画館が営業を再開したとのこと。とりあえずは朗報ですが、このまま終息していくという保証もないので手放しで喜べるものでもないことは言うまでもありません。(私ヌルボが居住する神奈川も39県に入ってないし・・・。)
さて、この「約100館」いう数字ですが、(たぶん)600館近い全国の映画館の2割にも達していません。ただこの先イオンエンターテイメントや松竹は大阪等3府県でも22日に営業再開、TOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマも5月22日から一部劇場の営業再開を発表したとかで、順調にいけば徐々にではあってもふつうに映画館で映画を観られるような状態に向かうのですが、はたして・・・。
しかし映画館が再開しても、これまで制作の側も撮影できない状態が続いていたので、当面はこの数ヵ月間公開延期のままだった作品をまず公開するとしても、続く作品をすぐに用意できるわけでもなさそう。1ヵ月ぶりに再開した興行通信社による全国映画動員ランキングトップ10(5月16~17日)(→コチラ)を見ても新作は1位「心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-」だけで数週間前の韓国のランキングと同じ感じ。ふつうの状態に戻るにはまだしばらくかかりそうです。
▸先々週の本ブログ記事では国民1人が1年間に映画館で映画を観る回数の平均が「日本1.4回で、韓国の約3分の1」と書きましたが、こうした数値とも関連して、とても興味深く読んだのは5月18日付の「韓国エンタメ、世界席巻の理由」と題した記事。(→コチラ。) 韓国映画「哭声/コクソン」にも出演して注目された國村隼さん、「うらやましく思ったのは観客ですね。韓国の人たちは驚くほど映画好きで、常に新作を待っている。・・・目が肥えたお客さんが増えて現場は下手なものは作れない。当然、作品のクオリティーは上がっていきますよね」と語っています。
さらにこの記事で、國村隼さんも桑畑優香さん(ライター、翻訳家)も、そして宇野維正さん(映画・音楽ジャーナリスト)もそろって指摘しているのは、映画や音楽産業を国が(20年ほど前の金大中政権頃から)有望な輸出コンテンツと位置付けて国が育成・制作段階からシステムを整え財政支援をしてきたということ。この点は(先々週の記事で紹介した)「ユリイカ」5月号を読んで私ヌルボ自身痛感したことでもあります。公的支援といえば、昨年釜ヶ崎を主な舞台にした「解放区」という映画が大阪市の修正指示を拒否し助成金を返還して作品を完成させたことが報じられましたが(→コチラ参照)、どうも日本の行政は「観光地の宣伝になる」とかの狭い了見(←昭和語としても戦前?)で助成しているようで、それじゃ質の高い映画作品は育たないわなー・・・。
▸最近注目した記事その2は、5月17日付の「『愛の不時着』『梨泰院クラス』人気が画期的な理由」と題した飯田一史さん(ライター)の記事。(→コチラ。) 韓国のケーブルテレビtvNで昨年12月~今年2月放送され、最終回は同局のドラマで過去最高の21.7%という視聴率を記録したドラマ「愛の不時着」が日本でも2月からNetflixで配信され大ヒット!ということはどれほど知られているのかな? ご存じなかった方はとりあえず→コチラの記事参照。私ヌルボは韓国での放映中から知ってはいたもののまだ観てません。上述のように配信に対する偏見(??)と、それ以前に今の韓国の(特に進歩系の側)の北朝鮮に対する<片思い>っぽい思い入れ(?)がなんだかなー、といった感じで・・・。これまでの北朝鮮に関係する韓国映画に登場する北朝鮮の兵士やスパイ等を演じる俳優はイ・ビョンホン、チャ・スンウォン等々皆イケメンというのはよく語られる話。「愛の不時着」のヒョンビンも「コンフィデンシャル 共助」で北朝鮮の刑事に扮しているし、「シークレット・ミッション」で北のスパイを演じたキム・スヒョンは同じ役(!)で「愛の不時着」にサプライズ出演とか・・・。しかし、一般的に言って大量の餓死者が出た90年代後半に成長期が重なった世代の北朝鮮人民の体格は、韓国の同世代と比べて見劣りするレベルではないのかなー?(映画やドラマにその点でケチをつけてもしょうがないですけどね。)
とは言っても「愛の不時着」は脱北者の目で見ても北朝鮮の現状をよく描いているそうで、そのうち観るしかないなと思っています。
▸最近注目した記事その2は、5月18日付の「日本の中高年はなぜ若者の韓流ブームを全く理解できないのか」と題した記事。(→コチラ。) 木村幹・神戸大学教授と澤田克己・毎日新聞論説委員(元ソウル支局長等)の対談。大きな変貌を経てきた韓国をどの時代の何に注目してきたか、日本人でも世代によって韓国に対する認識が大きく違うのは考えてみれば当然ですね。とくに年配者の場合昔のことはいろいろ知ってはいても今のことはあまり知りませんからね、・・・とこれはヌルボも反省しなくちゃ。
★★★ NAVERの人気順位(5月19日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) レ・ミゼラブル:ザ・ステージド・コンサート 9.66(56)
②(-) 泣くな、トンズ2:シュクラン ババ(韓国) 9.53(154)
③(新) ネコの執事(韓国) 9.53(38)
④(1) モンマルトルのパパ(韓国) 9.51(116)
⑤(2) サンティアゴの白い杖(韓国) 9.45(22)
⑥(新) トムボーイ 9.43(204)
⑦(3) ライド・ライク・ア・ガール 9.39(138)
⑧(6) ネヴァー・ルック・アウェイ 9.13(123)
⑨(8) 燃え立つ若い女性の肖像 9.04(1,573)
⑩(9) 改葬(韓国) 9.01(88)
①③⑥の3作品が新登場です。
①「レ・ミゼラブル:ザ・ステージド・コンサート」(仮)、⑥「トムボーイ」については後述します。
③「ネコの執事」は韓国のドキュメンタリー。昨年も書いたことがありましたが、近年韓国ではネコの飼い主のことを<執事(집사.チプサ)>といいます。ニャー♥と泣かれると魔法にかかってしまう! ジャージャーメンの代わりにネコのお弁当を配達する中華料理店の店主から給食所を作ってくれてる住民センターの人たち、置き去りにされたネコを心配してご飯をやる魚屋のおばあさん、やはりネコの給食所を作っている釜山・青沙浦(チョンサポ)の青年実業家まで。ネコと一緒に生きていければすべてのものを奪われてもシアワセな<執事>たちの愛の物語です・・・。原題は「고양이 집사」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) 燃え立つ若い女性の肖像 9.22(9)
②(2) パラサイト 半地下の家族[寄生虫](韓国) 9.06(16)
③(3) はちどり(韓国) 8.38(13)
④(4) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 8.00(10)
⑤(5) 1917 命をかけた伝令 7.67(9)
⑥(新) トムボーイ 7.33(9)
⑦(-) ボーダー 二つの世界 7.29(7)
⑧(9) チャンシルは福も多いね(韓国) 7.00(10)
⑨(10) 透明人間 7.00(2)
⑩(新) きみの鳥はうたえる(日本) 6.86(7)
⑥と⑩の2作品が新登場です。
⑥「トムボーイ」については後述します。
⑩「きみの鳥はうたえる」は、佐藤泰志の同名小説の映画化作品で、18年の映画芸術 2018年日本映画ベストテン1位、同キネマ旬報のベストテン3位等高い評価を得ましたが、地味目なためかあまり一般受けはしませんでした。韓国でもまあ同じ感じ。韓国題は「너의 새는 노래할 수 있어」です。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月15日(金)~5月17日(日) ★★★
アパルトヘイト反対の収監者たちの脱出劇「エスケープ・フロム・プレトリア」が1位に
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(3)・・エスケープ・フロム・プレトリア ・・5/06 ・・・・・・・32,837・・・・・・・・67,815・・・・・・・・・・593・・・・・・・・529
2(新)・・ザ・プラットフォーム ・・・・・・・5/13 ・・・・・・・・・・22,515・・・・・・・・29,771・・・・・・・・・・279・・・・・・・・228
3(新)・・野生の呼び声 ・・・・・・・・・・・・・・5/14 ・・・・・・・・・・17,062・・・・・・・・19,873・・・・・・・・・・172・・・・・・・・505
4(1)・・レイニーデイ・イン・ニューヨーク・・5/06・・・・・・13,138・・・・・・・・73,954・・・・・・・・・・659・・・・・・・・470
5(2)・・トロールズ ミュージック★パワー・・4/29 ・・・・・・9,998 ・・・・・・・135,739・・・・・・・・1,044・・・・・・・・229
6(76)・・トムボーイ ・・・・・・・・・・・・・・・・5/14 ・・・・・・・・・・・9,197・・・・・・・・14,534・・・・・・・・・・130 ・・・・・・・・361
7(5)・・さらば、わが愛/覇王別姫・・1993/12/24・・・・・・・・・8,213・・・・・・・・74,460・・・・・・・・・・666 ・・・・・・・・301
8(4)・・あの山を越えて韓国)・・・・・・・・・4/30 ・・・・・・・・・・・7,574・・・・・・・・93,833・・・・・・・・・・699 ・・・・・・・・276
9(新)・・レ・ミゼラブル・・・・・・・・・・・・・・5/13 ・・・・・・・・・・・4,911 ・・・・・・・・7,869・・・・・・・・・・106 ・・・・・・・・333
:ザ・ステージド・コンサート
10(新)・・シー・フィーバー・・・・・・・・・・・5/13 ・・・・・・・・・・・4,353・・・・・・・・・7,124・・・・・・・・・・・62 ・・・・・・・・266
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新型コロナの状況が読みづらいこともあってか、2・3・6・8・10位と新登場が多いわりには観客数は足踏み状態です。
2位「ザ・プラットフォーム」(仮)は、スペインの近未来SF&ホラー。舞台は<ザ・ピット>と呼ばれるタワー型の刑務所。上から下まで多くの階に分けられています。その数は何十、いや、それ以上? 各階に年齢・性別もさまざまな受刑者が2人ずつ住んでいます。物語はこの中だけで展開します。タイトルの<ザ・プラットフォーム>とは、上から下りてくる食事を乗せた台のこと。ところがそこに置かれている食料は上の階からどんどん食べられるので、下に行けば行くほど減少し、また残飯か、それよりひどい状態になっています。もしここで迷って手を出さずにいると、台はわずか2分間で下の階に下りていってしまいます。つまり、この建物はある意味例の「パラサイト」よりも直接的に格差社会を表現しているといえます。ここで生き残っていくためには上の階に昇るしかないわけですが・・・。トロント国際映画祭等で観客賞を受賞する等、注目のカルト作とのことです。韓国題は「더 플랫폼」。日本では3月からNetflixで配信されています。劇場公開は未定かな?
3位「野生の呼び声」は、もちろんジャック・ロンドンの名作の実写映画化作品。日本公開でも2月28日公開されていますが、新型コロナ禍のため3月末以降は上映館も観客も非常に少ない状態で、現在は大分県中津市の1館のみ。7/3~ブルーレイ+DVDセット発売、6/17先行デジタル配信とのことです。(→コチラ。)
6位「トムボーイ」は、2011年製作のフランスのドラマ。16年公開の「ぼくの名前はズッキーニ」の脚本を手掛けたセリーヌ・シアマ監督の作品です。新しく引っ越してきたミカエル(ゾエ・エラン)は青が好きで、サッカーの技術もすばらしく、短い髪もとてもよく似合っている男の子。・・・と思ったら本当の名前はロールという女の子だって!? 近所の子供たちの仲間に入りたくて男の子に扮したとは・・・。ところが、周りの子どもたちはすっかり男の子だと思い込み、リザ(ジャンヌ・ディソン)という女の子はミカエルに淡い恋心を抱いちゃったりして・・・。そこで正体を明かして簡単に笑って終わり、とはならないようなんですね・・・。なかなか言い出せないことはあるし、もしかして子供の世界にもトランスジェンダーの問題? 涙ぐましく美しく、眩しかった10歳の夏の秘密の物語です。韓国題は「톰보이」。日本では11年のフランス映画祭で上映されましたが、一般劇場公開はなく今に至っています。
9位「レ・ミゼラブル:ザ・ステージド・コンサート」(仮)は、昨年ロンドン・イーストエンドを沸かせたミュージカルの実況版。ジャン・バルジャン役のアルフィー・ボー、ジャヴェール警部役のマイケル・ボールをはじめ定評のある歌手たちが観客を魅了します。韓国題は「레미제라블: 뮤지컬 콘서트」。日本公開は未定なのかな?
10位「シー・フィーバー」(仮)は、アイルランド・スウェーデン・ベルギー・イギリス合作のホラー。海洋生物の行動パターンを研究している女性科学者シヴォーン(ハーマイオニー・コーフィールド)は、実習のために漁船ニアム・チン=オワル号にジェラード船長(ダグレイ・スコット)夫妻等6人の乗組員と共に乗船します。より大きな収穫を得るために彼らは沿岸警備隊から警告を受けていたアクセス禁止水域に進入します。すると彼らの船は未知の、浅瀬のような物体に遭遇し行く手を阻まれます。そこで彼らは青緑色のスライムのような奇妙なものを発見、ダイビングギアを着装したシヴォーンが潜って見るとそれは網でも引き上げられないほどの巨大な生命体でした。また漂っていた別の船に乗り込んだ別の仲間たちはその船室内にいた人々の死を確認します。その後まもなく、乗組員の間で熱が広がり、1人また1人と死を迎えることになります・・・。韓国題は「씨 피버」。日本公開は未定のようです。もしかして配信で観られる?
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・エスケープ・フロム・プレトリア ・・・・5/06・・・・・・・・32,837・・・・・・・・・67,815・・・・・・・・・・593 ・・・・・・・529
2(1)・・レイニーデイ・イン・ニューヨーク ・・5/06・・・・・・・・13,138・・・・・・・・・73,954・・・・・・・・・・659 ・・・・・・・470
3(31)・・トムボーイ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/14・・・・・・・・・9,197・・・・・・・・・14,534・・・・・・・・・・130 ・・・・・・・361
4(3)・・さらば、わが愛/覇王別姫 ・・・・・1993/12/24・・・・・・・・・8,213・・・・・・・・・74,460・・・・・・・・・・666 ・・・・・・・301
5(4)・・私の青春はあなたのもの ・・・・・・・・・・4/29・・・・・・・・・4,011・・・・・・・・・80,871・・・・・・・・・・684 ・・・・・・・189
3位「トムボーイ」が新登場ですが、これについては上述しました。
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