ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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中央日報の日本オタク(?)イ・ヨンヒ記者の<自分の日常の延長コラム>に注目!

2014-08-01 12:49:55 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
7月3日の記事で「朝鮮日報」鮮于鉦記者の記事を集中的に紹介しました。(→コチラ。)
 今回は、彼とはかなり異なったタイプの、「中央日報」のイ•ヨンヒ文化スポーツ部門記者についてです。
 彼女は、今年4月から連載コラム「噴水台」も毎週火曜日執筆しています。
 その中で、「日本語版」にも掲載されて最も多くの日本人読者の共感を呼んだのは「韓国と日本から聞こえた「天使の声」」(4月22日)(→コチラ)という見出しのついた記事だと思います。
 あのセウォル号沈没事故の時、生徒たちにライフジャケットを配り、「お姉さんは?」という生徒たちに「船員は最後。君たちを救ってから、私は後から出て行くから」と答えて最後まで乗客を助け、命を落としたパク・ジヨンさんについて書いた記事ですが、そこでイ・ヨンヒ記者は「もう1人の人物が重なる」として、3.11東日本大震災当時、役場の放送室から住民に避難を呼びかけ、最後は津波にのみ込まれて亡くなった南三陸町の役場職員だった遠藤未希さんのことを記していました。そして最後に「私たちも、セウォル号を最後まで守ったこの若い乗務員の名前を、長く忘れないでいたい。日常のために簡単に忘れてしまうような、私がしているこの仕事の重く厳重な責任を再確認させてくれる、この「天使」のことを。」と、自らの仕事に引きつけて締めくくっています。
 イ・ヨンヒ記者は、その翌週のコラム「今、私ができること」(→コチラ)でも「東日本大震災当時、日本人たちのSNSに最も多く登場した文は「今できることをしよう」だった。」と日本のことを書いていました。

 彼女の記事の「持ち味」は、自身の生活に密着した日常感覚です。
 日本語版に載っていない「噴水台」のイ・ヨンヒ記者のコラム中で、いかにも彼女らしいコラムを2つ紹介します。

 1つ目は「今日も私はコンビニに行く」(7月1日)(→コチラ)。
 近所にスーパー(個人経営のマーケット)とコンビニがあるが、自分は少し高くてもコンビニに行く。スーパーだとおばさんがそれは「どこの家に越して来たの?」とか「一人暮らし?」等々好奇心一杯の目つきで訊いてくるのに対し、コンビニはただ黙々と機械的に対応するだけだから・・・。
 ・・・という自身の日常生活から書き起こして、「コンビニ社会学」という本から全国に2万4559のコンビニがあって1日880万人が利用するといった数字を引用し、続けて6月公開の韓国映画「これが私たちの終わりだ(이것이 우리의 끝이다)」を紹介します。
 その映画はまさにコンビニが主人公といった映画で、就職準備生やインディーズミュージシャン等のアルバイトや、あるいは脱北者、中高年の失業者といった人たちが働いていること、彼らに暴言を浴びせる店主も本社から切り捨てられる直前の状態であること、客もまたさまざまで・・・。
 ・・・記事の最後では、また自分のことに戻り、映画館内に貼られた観客のコンビニでのバイト体験談等について書いています。

 次はこれも自分自身の日常からネタを拾った「これ以外に生きていく道がないんです」と題したコラム。(→コチラ。)
 朝に出勤時に乗ったタクシーの運転手氏は60代前半くらい。ところが車線変更はヘタだし、左折ができず直進してしまうこと数度、ずいぶん遠回りしてやっと中央日報前、それも歩道に横付けできず赤信号で止まった時に「アガシ、ここで降りていただいてもいいですか?」と横断歩道の前で降ろされるはめに。3千ウォンばかり余分に払いつつ「タクシー始めて間もないみたいねっ!」というと、運転手氏「元々方向音痴なんですけど、他に生きてく道がないんで・・・」。
 ・・・と、ここまでがコラム全体の3分の2。そしてドイツの作家Horst Eversの本に登場する間違った職業選択に悩む患者を癒すセラピストの話を紹介した後、次のようにコラムを結んでいます。
 「直進本能」の運転手も多分、われわれは自分に適した仕事をしているのか、それを可能にする社会であるかという質問を投げるぼく私の前に現れたのではないか?あるいはアイデア貧困に苦しんでいる子羊にコラム素材を提供するという使命を帯びて? だから許すとしようる才能もないことを臆面もなく引き受けて世界を台無しにする者が無数の中で、彼は駄目にしたのはわずか(?)私の通勤だけだから。
 いやあ、アタマにきたのを必死に抑えつつ書いた(笑)という感じですね。

 このように、彼女の書くコラムは自分の日常の出来事を「導入」のレベルを超えて書き込んだものが目立ちます。
 ちょっと残念なのは、社会的・政治的等の巨視的な観点からの分析・考察が全然食い足りないこと。
 たとえば「“美男子”応援団も送ってもらえませんか」(7月15日)(→コチラ.日本語版)
という記事。例の北朝鮮のアジア大会参加をめぐるネタなのですが、「美女応援団の派遣が本当に南北関係の改善に役立つならば、美男子軍団も共に送ってほしいと提案したい」というくだりなど、どうも自分自身の願望(!?)を超えての建設的な主張とは思えません(笑)。

 最初に掲げた記事のようにイ・ヨンヒ記者が日本の話題や出来事を記事に取り込んでいるのは、彼女が日頃から日本に興味を持ち、いろいろな情報に接しているからと思われます。
 「ある日本人青年のフリーハグ」(6月10日)(→コチラ)を読むと、「日本人が韓国でフリーハグをしてみた」という動画(→コチラコチラ)をYouTubeに上げた桑原功一さんは友だちなのかな?
 また彼女が観ている日本映画やドラマ、読んでいる日本漫画の数ももしかしたら私ヌルボ以上!
 映画では「舟を編む」「笑の大学」等、ドラマでは「半沢直樹」「職場の神」(←日韓の比較)「独身貴族」等、漫画はとくに多く「自虐の詩」「AKIRA」「8」「進撃の巨人」「やさしくしないで」「聖☆おにいさん」「銀の匙」「美味しんぼ」(←「あの」福島原発関連)等々。またAKB48総選挙等についても書いています。
 これらは、「中央日報(日本語版)」でサイト内検索するとおおよそはヒットします。(→コチラ。)
 ※7月22~27日に開かれていた第18回ソウル国際マンガ・アニメーション映画祭(SICAF)で、彼女が組織委員会のメンバーになっている(→コチラ)のはナルホドね、です。
 ※2009年の→コチラの草剛についての記事で、彼女は自らSMAPのファンだと明かしています。この記事で日本の流行語の「草食男」「干物女」を紹介していますが、これはチョシンナム(초식남.草食男)として韓国でも定着したこの言葉についての最初の新聞記事、・・・かどうかはわかりませんが、早い時期のものであることには間違いありません。(干物女(건어물녀)の方もそれなりに・・・・。)

 「噴水台」のコラム中で、イ・ヨンヒ記者のファンの男性読者ならずとも「これは何だ!?」と驚いたと思われるのが6月17日の「「誰かと人生を共有する」…それは人間でなくても関係ない」(→コチラ)の冒頭。この頃、2人の男といい感じの関係になっている。1人は年上で優しい性格、1人は年下で少し神経質。」ですからねー(笑)。
 読み進むと、何のことはない映画「her/世界でひとつの彼女」関連の内容なんですけどね。

 それよりも、私ヌルボにとってオドロキだったのは<メディア・ブッダ>という仏教系サイト中にある2013年3月の→コチラ(韓国語)の記事。筆者はファン・ピョンウ韓国文化遺産政策研究所所長で、例の対馬の盗難仏像返却問題についてです。これによると・・・、
 2013年1月30日警察と文化財庁は盗難の事実と差し押さえた仏像を公開し、日本に返すと公式に発表した。その時まで政府と全メディアは国際法的に返さなければならないとしていたが、中央日報のイ•ヨンヒ記者だけは違っていた
 イ・ヨンヒ記者は筆者に、そのまま返すことが正しいかと訊ねてきた。筆者は「盗難犯は法によって厳正に処理するが、仏像の過去の流出経路が明らかにされるまで、日本に返すべきではない」と言い、「韓日両国の共同調査を通じて仏像の伝来過程を明らかにし、調査期間中はユネスコの仲裁を経て第3国に遺物を預けておく方法等を検討してみるべきだ」との立場を明らかにし、記事化された。
  その後、一方的に返さなければならないという世論よりも、ちょっと考えてみようという世論が形成され始めた。

 ・・・というわけです。アララ、そうだったの!という感じですね。逆にいえば、このところよく話題となる韓国の「国民情緒」といったものを彼女が体現しているとも解釈できそうです。

 いろいろイ・ヨンヒ記者の記事をまとめ読みしてみると、彼女の長所が生かされた記事もあれば、上述したような弱点が露わになっている記事も見受けられます。
 「中央日報」という大新聞が、新聞の顔ともいうべき連載コラムに、週1とはいえ論説委員等ではないこのような若手(?)記者を起用するというのは1つの英断、かどうかはよくわかりませんが、あの「広島と長崎への原爆投下は神の懲罰」と書くようなベテラン記者もいることも思えば評価すべきかも・・・。
 しかし、日常的な感性の延長という視点だけで政治や外交の問題を論じてほしくはないなー。

 ※いろいろリンクを張った記事は見たが、イ・ヨンヒ記者の顔写真を見てないぞ、という方は、→コチラの俳優ハ・ジョンウ熱賛記事(韓国語)を見てみてください。

★[8月5日の追記]
 このような内容の記事をブログに載せた旨、昨日の昼過ぎイ・ヨンヒ記者に拙いハングルでメールを送ったところ、なんと夜ご本人から返信が届きました。それも日本語で。読んで、「しまった!」と思ったのは記事の最後の方で書いた盗難仏像のことです。
 イ・ヨンヒ記者によると、事実は次のとおりです。
  「盗難仏像の記事に関しては、仏像を返すべきだという意見と反対の意見を取材する中、ファン・ピョンウ所長に電話をかけて意見を聞いただけであって、私の個人的な意見とは関係がありません。記事の末尾にファン所長のコメントが載ってはいますが。」
 私ヌルボ、この記事を書く時に一応当の記事を探しはしたものの見つからず、そのまま一方の側の情報(ファン・ピョンウ所長の記事)だけで判断してしまいましたね。ファン所長の受けとめ方や記事の書き方に問題があるのかもしれませんが、誤解してしまった責任はヌルボ自身にもあったと反省しています。

 また、ヌルボが批判的に書いた部分については、メールの最後で次のように書かれていました。
  「日常的な経験をより広い視点から解釈するコラムを書こうとしますが、まだインサイトが足りないため、常に失敗しますね。(^^) これからもっとがんばります。감사합니다.」
 忙しい中、時間を割いてわざわざ返信を送って下さったことに感謝! これからも(日本にも読者がいることも念頭に置いて)良い記事を書いてくれることを期待します。
 ※イ・ヨンヒ記者の漢字名は「李英喜」とのことです。
  ※イ・ヨンヒ記者のブログ(→コチラ)では、現在連載中の「噴水台」や「本の中へ(책 속으로)」や、その他の過去記事を読むことができます。
  なお、そこのprofileによると生年月日は「1980.1.11 (양)」とあるので、ヌルボが「若手(?)記者」と書いた箇所は(?)を削って「若手記者」に訂正します。(関係ないですけど、1980年でも旧正月前だとまだ1979年の継続で(양)つまり未年なんですね。)

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