前回の記事では、「ドリ」と「スニ」が韓国の男女の伝統的な名前の代表といったものだったこと、しかし今では実際の名前にはほとんど使われなくなっていること等を書きました。
横浜市立図書館で韓国の昔話の本を何冊かみてみたところ、「サンドリ」「スンドリ」「ケドリ」等々がすぐ目に入ってきました。
そんな昔話に基づいた流行歌にキム・セレナの歌う「カプトリとカプスニ(갑돌이와 갑순이)」があります。
1964年に作られた曲(?)のようですが、元は「オンドル夜話」(1938)という歌(→コチラ参照)とのことで、ソチラの歌詞では「パクトリとカプスニ」になっています。歌詞の内容は、同じ村にカプトリ(甲乭이)とカプスニ(甲順이)という男女がいたんだトサ、2人とも相手のことを心の中では好きだったがそれを打ち明けることはなかったトサ、カプスニは別の男に嫁入りしたものの、最初の夜もカプトリを想って泣いたトサ、内心怒ったカプトリも他の女の婿となったが彼も最初の夜カプトリを想って泣いたトサ」という、全然盛り上がりに欠ける歌。ところがなぜかそれなりに知られているようで、京畿道驪州(ヨジュ)郡(2013年から市)では2011年<パクトリとカプスニテーマパーク>という公園ができたそうですよ。(→コチラ参照。)
しかし、2人とも心に秘めていたのに、なんで物語が伝わったのでしょうかねー?
今回の本題。現代の「ドリ」と「スニ」は、少し前回書いたように団体・組織や催しのマスコット、イメージ・キャラクターとして多用されるようになっています。
その中でもとくに知名度が高いのがコレ。
警察庁のキャラクターポドリ(포돌이)とボスニ(포순이)。誕生は1999年。「恐怖の外人球団」で知られる漫画家・李賢世(イ・ヒョンセ)の作です。
なぜ「포(ポ)」なのかというと、policeのpoだけでなく、朝鮮時代の警察に相当する捕盗庁(포도청)、警官に相当する捕卒(포졸)の「捕」も意味しているとのことです。
ポドリとポスニは画像や人形だけでなく、各種のキャンペーン等にも出向いて活躍し、広く親しまれています。
下左の写真は江南のクラブで性暴力防止のキャンペーンをしているところです。
激務のストレスのため、つい非行に走る(?)こともあります。(右写真。)
以下、地方のいろんな「ドリ」と「スニ」を集めてみました。自治体関係や民間施設、催し関係等々さまざまです。
左は原州(ウォンジュ)市のマスコットクォンドリ(꿩돌이)とクォンスニ(꿩순이)。クォン(꿩)はキジです。原州には雉岳山国立公園があって、朝鮮初期からの伝統があるという原州雉岳祭(現在は江原監営祭に含まれる)も催されていてキジが市の鳥に指定されています。
右は忠清南道・保寧(ポリョン)市の大川(テチョン)海水浴場で1998年から開かれているマッド・フェスティバルのキャラクターモドリ(머돌이)とモスニ(머순이)。マッドはmadじゃなくてmud、つまり泥んこ祭。その英語mudのハングル表記が머드なのでこの名に。
左は全国生産量の6割を占めるというチャメ(참외.マクワウリ)の特産地・慶尚北道星州(ソンジュ)にあるチャメ生態学習園のチャムドリ(참돌이)とチャムスニ(참순이)像。もちろんチャメ(참외)のチャム(참)から命名。
右の黄色い三角顔は何かと思ったらチーズ(치즈)なんですね。全羅北道任実(イムシル)にあるチーズマウル(村)のチドリ(치돌이)とチウニ(치순이)です。
先週サークル仲間のS谷氏とYハラボジは左写真のロープウェイに乗ってきたそうです。場所は慶尚南道統営(トンヨン)市。小毎勿島(ソメムルド)行きの船に乗るつもりでタクシーで港まで行くはずが、なぜかキサアジョシ(運転手さん)の強い勧めでこれに乗ることになったとか。(小毎勿島はその後で行った。) で、この眺めのいい所に立っているのがケドリ(케돌이)とケスニ(케순이)。ケーブルカー(케이블카)だからこの名前。顔面のヒゲのような横線は何かと思ったら、ケーブルカーにこんな横線が入っているのですね。 左は大邱市の西門市場(서문시장.ソムンシジャン)のキャラクターソムンドリ(서문돌이)とソムンスニ(서문순이)。
伝統ある大規模な市場なんですが、このキャラクターは絵といいネーミングといい個性なさすぎでは? そのためか現地でも全然目立ってないようなのが残念。
それと対照的なのが次の2つ。
いやあ、個性的というよりも、ちょっと異様な感じ(笑)さえしてしまうのですが・・・。(笑)
左は2006年全州で開かれた世界ジュニアカーリング選手権大会のマスコットマットリ(맛돌이)とモッスニ(멋순이)です。「マッ(맛)」は「味」、「モッ(멋)」は「粋」で、カーリングとは関係ありません。絵柄の方も扇子と団扇がカーリングの用具より目立ってます。全州は昔から扇子や団扇作りが有名で、2011年には全州扇文化館もオープンしています。しかし、どうもこれはカーリングの大会にかこつけて・・・という地元のコンタンが前面に出過ぎた印象が強いですね。
右は最初見て何なのかわかりませんでした。「トロロご飯かな?」などとも考えながら説明を読むと全羅南道羅州(ナジュ)市の栄山浦(ヨンサンポ)名物ガンギエイ(홍어. ホンオ)と濁り酒(탁주.タクチュ)なんですと。名前はホンドリ(홍돌이)とタクスニ(탁순이)。私ヌルボは行ったことがありませんが、コチラや→コチラの記事(日本語)を読むと栄山浦はなかなか風情のある街のようで、行ってみたくなりました。この(洗練されていない)キャラクターはホンオとマッコリの庶民的でエグい臭い&味と、街の侘しさが表れているようにも思えます。
次回はガラッと変わった内容になります。
→<「ドリ」と「スニ」をめぐるいろいろ ③80年代のコンスニ(女子労働者)と<偽装就業者>>
横浜市立図書館で韓国の昔話の本を何冊かみてみたところ、「サンドリ」「スンドリ」「ケドリ」等々がすぐ目に入ってきました。
そんな昔話に基づいた流行歌にキム・セレナの歌う「カプトリとカプスニ(갑돌이와 갑순이)」があります。
1964年に作られた曲(?)のようですが、元は「オンドル夜話」(1938)という歌(→コチラ参照)とのことで、ソチラの歌詞では「パクトリとカプスニ」になっています。歌詞の内容は、同じ村にカプトリ(甲乭이)とカプスニ(甲順이)という男女がいたんだトサ、2人とも相手のことを心の中では好きだったがそれを打ち明けることはなかったトサ、カプスニは別の男に嫁入りしたものの、最初の夜もカプトリを想って泣いたトサ、内心怒ったカプトリも他の女の婿となったが彼も最初の夜カプトリを想って泣いたトサ」という、全然盛り上がりに欠ける歌。ところがなぜかそれなりに知られているようで、京畿道驪州(ヨジュ)郡(2013年から市)では2011年<パクトリとカプスニテーマパーク>という公園ができたそうですよ。(→コチラ参照。)
しかし、2人とも心に秘めていたのに、なんで物語が伝わったのでしょうかねー?
今回の本題。現代の「ドリ」と「スニ」は、少し前回書いたように団体・組織や催しのマスコット、イメージ・キャラクターとして多用されるようになっています。
その中でもとくに知名度が高いのがコレ。
警察庁のキャラクターポドリ(포돌이)とボスニ(포순이)。誕生は1999年。「恐怖の外人球団」で知られる漫画家・李賢世(イ・ヒョンセ)の作です。
なぜ「포(ポ)」なのかというと、policeのpoだけでなく、朝鮮時代の警察に相当する捕盗庁(포도청)、警官に相当する捕卒(포졸)の「捕」も意味しているとのことです。
ポドリとポスニは画像や人形だけでなく、各種のキャンペーン等にも出向いて活躍し、広く親しまれています。
下左の写真は江南のクラブで性暴力防止のキャンペーンをしているところです。
以下、地方のいろんな「ドリ」と「スニ」を集めてみました。自治体関係や民間施設、催し関係等々さまざまです。
右は忠清南道・保寧(ポリョン)市の大川(テチョン)海水浴場で1998年から開かれているマッド・フェスティバルのキャラクターモドリ(머돌이)とモスニ(머순이)。マッドはmadじゃなくてmud、つまり泥んこ祭。その英語mudのハングル表記が머드なのでこの名に。
右の黄色い三角顔は何かと思ったらチーズ(치즈)なんですね。全羅北道任実(イムシル)にあるチーズマウル(村)のチドリ(치돌이)とチウニ(치순이)です。
伝統ある大規模な市場なんですが、このキャラクターは絵といいネーミングといい個性なさすぎでは? そのためか現地でも全然目立ってないようなのが残念。
それと対照的なのが次の2つ。
いやあ、個性的というよりも、ちょっと異様な感じ(笑)さえしてしまうのですが・・・。(笑)
右は最初見て何なのかわかりませんでした。「トロロご飯かな?」などとも考えながら説明を読むと全羅南道羅州(ナジュ)市の栄山浦(ヨンサンポ)名物ガンギエイ(홍어. ホンオ)と濁り酒(탁주.タクチュ)なんですと。名前はホンドリ(홍돌이)とタクスニ(탁순이)。私ヌルボは行ったことがありませんが、コチラや→コチラの記事(日本語)を読むと栄山浦はなかなか風情のある街のようで、行ってみたくなりました。この(洗練されていない)キャラクターはホンオとマッコリの庶民的でエグい臭い&味と、街の侘しさが表れているようにも思えます。
次回はガラッと変わった内容になります。
→<「ドリ」と「スニ」をめぐるいろいろ ③80年代のコンスニ(女子労働者)と<偽装就業者>>
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