会社に戻ると、机の上には外線電話の取り次ぎのメモがあり、電話を下さいと書いてあります★
《少し時間を取り過ぎたな・・・》
すぐに相手先に電話を掛けて、不在をお詫びして用件を片付けました★
しばらくすると、
『よー、グルメッチー!さっき喫茶店でお客さんを泣かしてたな!』
と、声が掛かりました★
振り返ると、三つ年上の男性社員です★
《うっ!まずい!見られたか! よりによってコイツとは!》
この男は所謂(いわゆる)放送局、おしゃべり男なんです★この男には昔から悩まされています★黙っていれば何事もなく済むものを、いちいち廻りに聞こえるように、それも脚色して声を掛けるものですから、何も知らない人が聞いたら誤解してしまいます★何でもない小さい事を大袈裟に言う男なので、私はアンプと呼んでいましたが・・・★
『あー、先輩、喫茶店に居たんですか』
『そうだよ、俺が入ったらお前が見えたんだよ、お客さんと一緒だったから、声を掛けようと思ったけど、なんか、深刻そうに話してたからさ-、やめたよ~、ははは~』
《相変わらず、何という非常識な奴だ、深刻そうにしてなければ間違いなくこちらへ来たな》
『そうですか』
私は気の無い返事をします★
『深刻な話は何だったんだ?金でも返せってか!あははは-』
廻りの人間は仕事をしている振りをしていますが、明らかに聞き耳を立てています★
『お客さんの事は何も言えませんので!』
変に言い訳がましい事を言うと、余計に厄介になるので、相手のプライベートの事だと言ってその場から逃げました★
《まったく、五月蝿(うるさ)い奴だ》
この男は以前、私の家に夜中の1時頃にいきなり来て、酒臭い息を吐きながら、『一晩泊めろ!』ときかなかったんです★私は嫌でしたが、仕方なく泊めたんです★ところが、翌日、私の家が狭いだの、散らかっていたなどと、社内中に吹聴して廻ったんです★
ここにも横暴野郎がいるのです★
《まったくもう!》
続く