違う違うあっちやで
最近私は週に1度ぐらい、大阪市内に研修にいっている。バリアフリーだったり、障がい者の人権だったりいろいろ。朝の通勤ラッシュをさけて朝早く家をでる私。目の見えない私。網膜色素変性症な私デスペア。
昨日も、研修会場の最寄り駅から汗だくだくで歩く私。暑すぎて、朝8時前でもあつすぎて、通り道のローソンで休憩してから研修会場へ。途中、小学校があがあるのだけども、最近はこどもたちの声がまったくしない。そうか、もう夏休みなのね。
夕方、17時すぎに研修会場から駅にあるく。白杖をもちよぼよぼあるく。
すると、向こうのほうから、こどもの自転車の音。そして、私の横でたちどまる。
だれかわかる?
いきなり私の腰あたりから声がする。そう、小学5年生の男の子2ひと組。ほんとこの人は仲がいいな。学校にいいくときも一緒だし、あそぶのも一緒。一人はリーダー的な男の子で、必ず私に声をかけるのは彼、そしてもうひとり、人のよさそうな、おちょうしものの男の子。いい関係性だね。二人が気が合うのもわかる。
いきなり、だれかわかる?と問いかけられる私。
場所と時間、そしてこどもの声、二人組。それで、私はすぐにわかった。
小学5年やろ。
どこいくん?
とまた同じ質問、何しにいってたん、どこに帰るん?ひとりで暮らしてるの?
なんか前回も同じようなこときかれたな、ただ、今回は、私がどうやって暮らしているかにまで興味がわいてきたよう。
そうやで、ひとりで暮らしてるよ。
ふーん。
じゃあね、はよおうちかえりや。
どこいくん?
またどこいくん?と聞いてくる。駅やで、小学校の前とおって駅にいくんやで。
小学校どっちかわかる?
わかるよ。あっちやろ、と私の進行方向を12時として、2時方向を指さ明日。まちがいなくこの方向に学校はある。じゃないと、視覚障碍者はひとりであるけない。必ず、ランドマークの建物がどこにあるか、イメージしながらあるく。
ちがうちがう、あっちやでとこども。
えっ?と驚く私。私の頭の中のイメージがくるっていたのか。教えてくれてありがとう。
あっちというこどもの指差しがわからないので、適当に、私も指さす、4時の方向を指さす。
違う違う、あっちあっち。今度はもうひとりの男のもくわって、二人であっちあっち。
10時のほうを指さす、9時のほうを指さす私。すべて違うというこども。
そうか、このこどもは、盲人のおっちゃんをからかっているんだなとやっと気づく。
こういうとき、こどものいない私は対応方法がわからない。なんとかして、こどもにわからせたい。
目の見えない人にウソの情報を教えたら、危ないんだよ。道をまちがえて、道路にとびでてしまって車にはねられて死んじゃうだよ。
うん、わかった。ごめん。おっちゃん。
と言ってほしい、そういうふうになるには、どうすればいいかわからない。いくら、コミュニケーションの研修をうけても、こどもの扱い方はわからない。
視覚障害者のおっちゃんに興味をもってくれて、知ろうとしてくれるのは、とってもありがたい。そこから、どうやって視覚障害者について知ってもらうか、難しいね。
あそうそう、あっちやでの前に、こどもは、ねえねえ、メガネはずしてみて?と私に行ってくる。私がいつもかけているサングラス。
どうやら、目の見えない人の目っていうのは、自分たちとは違った目をしていると思っているらしい。
サングラス遮光眼鏡をはずす私。
ほんとは見えてるやろ?
そこから、また指が何本かテストがはじまる。こどもは正解しているかどうかおしえてくれないのよね。じゃあこれは?これは?とどんどん指本数あてが続く。
まあかわいんだけど、おもしろいんだけど、なんとか、この悪ガキを、こっちに引き込みたいね。いつか、10年後か20年後、
おじさん、僕のことおぼえてますか?今はヘルパーやってます。
え?だれでしたっけ?
そんな未来がくるといいな。
PS
悪ガキといえば、スマイレージになる前のエッグのころの、福田花音、前田憂佳、小川紗季を思い出すね。きっと彼女たちも、街で変な盲人おっちゃんをみかけたら、からかうんだろうな。