☆だれもいない寂寥感
せっかくの休みなのにルイがいない。
女房も店に出ているからわが家にはぼくひとりである。たったひとりで過ごす土曜日というのは何年ぶりだろうか。女房がいなくてもシェラやむぎがいた。たったひとりの休日なんて記憶にない。
外は雨だし、しかたなく家にこもっている。むしろ、雨が幸いした。晴れていたりしたてもひとりで散歩なんかする気になれなかっただろう。
いまも振り向くと背後にシェラがいたり、むぎが見ていたり、ルイが悪さをしていたりするような気がしてならない。
もし、シェラやむぎが健在だったらどうしただろうか。雨だし、寒いからやっぱり家にこもっているだろう。だからといって、シェラやむぎと家の中で遊ぶことはあまりしなかった。お互いに見える場所にいればそれでよかった。そんな関係がいまとなってはなつかしい。
ルイは、ケージから放てば何をするかわからない。見張っているか、遊んでやっているか、ケージに閉じこめておくしかない。おとなしくひとりで遊びはじめたと思うと、ぼくの手帳を噛んでいたりする。油断も隙もあったものじゃない。
☆気を引くための悪行の数々
きょうのルイは受難の日である。去勢手術のため、今夜は病院でお泊りとなる。時間的に、手術はもう終わっているだろう。
昨年末にシェラが点滴のために病院にひと晩泊まったときは、ずっと吠えていたので声が枯れていた。ルイはそんなことないだろうが、弱虫だから一緒に泊まっているほかの犬に反応してしまうだろう。明日、どんな様子で帰ってくることやら……。
それにしても、男の子の去勢手術というのは、同じ男としてとっても辛いものがある。まるでわがことのように痛みを感じてしまう。ただ、このところ、あまりにも傍若無人が目にあまるので期待もある。少しはおとなしくなってくれないだろうかという……。
こちらの関心を引こうと悪さをしているのはわかるのだが、のべつまくなしやられるといささか疲れる。
外から帰ってきて靴をしまわずに置いておくとすぐにリビングまでくわえてくる。大きな靴を、「よいしょ、よいしょ」と運んでくるさまは思わず笑いがこぼれてしまうほどかわいいのだが、気づかずにいたら確実にかじられて靴は一巻の終わりだろう。
それにしても退屈きわまりない休日である。