伊万里 金銀彩山葡萄に蝶文小鉢
正面と仮定した面
口径:10.6cm 高さ:6.2cm 高台径:4.6cm
製作年代:17世紀中期
正面と仮定した面から90度右に回転させた面
上の画像の面から更に右に90度回転させた面(正面と仮定した面の反対側の面)
口縁に5mmほどの金繕いがある。
見込み面
降り物や窯疵がある。
伏せたところ
高台畳付き部分にノミホツが1個所ある。
上の画像の反対側
この小鉢は、先日(9月15日)の古美術品交換で、激戦のすえに落札したものです。
ご覧のように、口縁に5mmほどの金繕いがあり、高台畳付き部分にノミホツが1個所ありますが、鑑賞にはさほどの支障はなさそうです。
ところで、「金銀彩」ですが、「金」と「銀」とで彩られ、そこに「赤」まで付加されて文様が描かれたわけですから、文字通り、金・銀財宝や赤い珊瑚を思い浮かべ、豪華絢爛の極みと歓迎し、それが出現した当初は、大変な人気を博したであろうことが想像できます。
しっか~し、「金彩」は使用するにしたがい、使用擦れで「金」は剥げ落ちてきてしまい、金色の輝きを失ってきてしまいました。また、「銀彩」は時の経過とともに酸化し、銀色の輝きを失い、黒ずんできてしまったのです(><)
そんなことから、人々は、まもなく金銀彩にそっぽを向くようになったようで、急速に人気を失い、作られなくなったようです。
その間の事情については、「〚伊万里〛誕生と展開ー創生からその発展の跡をみるー」(小木一良・村上伸之著 創樹社美術出版 平成10年10月1日刊)でも、
「伝世品類、生産窯出土陶片、及び消費地遺跡出土品からみる限り、金銀彩は明暦初期頃から始まっていると考えられ、その多くが万治、寛文前半期の頃に集中しているように思われる。(P.232)」
と記しています。
そのように、金銀彩は、作られた年代が限定されていますので、比較的に製作年代が特定し易いこともありますし(つまり、新しく作られた偽物を掴まないですむこともありますし)、残存数も少ないですから、今では、古伊万里好きにとっては人気の高いアイテムとなっているわけです。
この小鉢には、古木に山葡萄の蔦が絡み付き、山葡萄が2房垂れ下がった様が描かれ、その反対側には蝶が2匹飛んでいるところが描かれています。それを、金と銀と赤で描かれたわけですから、作られた当座は、いかに豪華絢爛であったかが想像されます。
文様は、今の時季にピッタリでしょうか。