11月27日に東御市民病院の院長である結城敬院長さんのお話をお聞きしました。この講演会は「市民病院とともに地域医療を語る会」が主催。大勢の市民の皆さんが集まりました。結城院長は佐久総合病院からおいでになり、この7月から院長に就任しています。以下に講演要旨をご紹介します。
東御市民病院は地域密着型病院であり、小さいこと多機能であることが大切だ。それが市民に親しまれる病院だ。しかし人も設備もかかり、黒字にするには難しい。2025年問題がある。団塊の世代がこの時期後期高齢者になり、人口でも3700万人に達する。医療体制の効率化が急務となっている。
専門医と総合医がある。専門医は狭く高い医療だと言われ、総合医は広く浅い医療と言われる。しかしそうではない。総合医は広くかつ深い医療であり、これからの地域医療を担う、医師としての究極の目標だ。
赤字でベッドの稼働率が悪いといわれる。しかしこれには理由がある。もうかる患者さんは重篤な患者であり検査をたくさんすることで病院としても収入増になる。軽症で中程度の患者さんの場合は検査もあまり必要ではない。すぐによくなって退院する。これではベッドの稼働率も悪くもうからない。みんなが健康になることは病院としては喜ぶべきことだが経営的には苦しくなるということだ。
これから未曾有の超高齢化社会が来る。医療費も増える。しかし高齢化社会に皆が元気で患者が増えなければ医療費は増えない、患者を増やさないようにするためには健康であることだ。文明の進歩により人々は歩かなくなり足腰が弱くなっている。これからは病気をみるのではなく健康をみることが大切だ。それが市民病院の仕事だ。早期発見、早期治療より病気にならないようにすることだ。
最近マイオカインというホルモンが注目されている。これは足腰の筋肉から分泌される若返りホルモンであり、ダイエット・糖尿病・動脈硬化・認知症・うつ・成長促進などに効果があると言われている。筋肉組織は単なる運動器官ではなく内分泌器官でもあることがわかってきた。これから「健康のまち‐とうみ」を進めるためには年齢・病気・体力に応じた運動プログラムを開発し、市民に参加してもらうことが大切だ。これは自治体として医療に運動を取り入れるというわが国初の試みになる。
東御には健康トライアングルがある。市民病院、ゆーふる田中、ケアポートみまきがそれだ、そしてここに市内で活動している身体医学研究所が加わることで倍加される。しかし運動が科学的根拠になりにくい。成果が見えてこない。継続的な取り組みと指導、科学的な成果判定が必要だ。そこに市民が参加してほしい。私たちは居ながらにして宝を持っている。ぜひそれを健康づくりに結びつけて行きたい。
結城院長は議会でもご挨拶いただきましたが、お話をお伺いするのは初めてでした。これからの地域医療のあり方についてとても示唆に富んだお話でした。いま病院会計への持ち出しも大きな金額になっており、赤字額も膨れ上がっています。しかし病院であればある程度の赤字はやむを得ないところだと思います。赤字削減をするあまり市民サービスが後退しては本末転倒です。サービスの向上と赤字削減を目指していってほしいと思います。