26日に憲法を学ぶ会と東御市九条の会の共催で原発問題を考える講演会がありました。講師は信州大学名誉教授の渋谷泰一さんでした。私は原発問題は市民の中でそんなに関心もなくあまり集まらないんではないかと思っていました。
ところが会場は超満員、最終的には50名を越える方々にお集まりいただきました。まわりの方を見ても知っている方の方が少ないくらいでした。中には遠くから参加されたかたもいらっしゃいました。
渋谷先生が原発問題についてわかりやすくお話しいただき、その後は出席者を交えての話し合いになりました。司会者の方からもインターネットによる情報もご披露いただき、活発な意見交換が行なわれました。
その中で印象的だったことは3つありました。ひとつは原子炉を閉じ込めることはできないということです。あれだけの水を注入しても使用済み核燃料を収めたプールが一杯にならないということはあちこちで水漏れが発生しているということです。東京電力は水漏れ箇所を発見し補修してから作業にかかると言っていますが、専門家のお話では水漏れ箇所を発見することは不可能だとのことです。
原子炉を構成している配管や器具、溶接箇所は何万点にも及ぶそうです。それをひとつ一つ点検し補修するという作業はとてもできるものではないとのことでした。漏れているのは何十ヶ所、何百ヶ所にも及ぶのではないでしょうか。
作業には何ヶ月もかかることになります。その間水の注入を続けなければならず、放射能で汚染された大量の水が出続けることになります。その処理もどうしたらいいのでしょうか。
さらに点検しなければならない場所は高濃度の放射能で汚染されているのです。作業は困難を極めるでしょう。いったい誰がそれをやるのでしょうか。司会者は最終的に決死隊を募って被爆を覚悟でやるようになるのではないかと、悲観的な見解を口にされていました。
印象的だった二つ目の点は、第二の安全神話が語られつつあるとのことです。「被爆しても今のところ健康に影響を与えるものではありません」-こうしたフレーズが最近良く聞くようになりました。ついつい「今のところ」っていつまで?、「健康に影響を与える」程度とはどのような状態?、などと突っ込みを入れたくなります。「安全です、安全です」という言葉が多用されすぎないかと懸念しています。
市民に心配をかけたくないからかもしれませんが、必要な情報も開示していない中での安全という言葉はいかがなものでしょうか。福島原発の放射能の汚染状態を表すデータがやっと昨日公表されました。第二の安全神話がはびこらないように見てゆく必要があります。
三つ目の点は、これだけ原発の問題が深刻化し世界からも注目されているにもかかわらず国民の中から「原発を止めるべきだ」という声があがってこないということです。原発被害に目が奪われ、これから原発をどうすべきかという一番大切な問題がなおざりにされているのではないかということです。
「東日本大震災を受けて、東京新聞は東京都内の有権者を対象に緊急世論調査を実施した。福島第一原発の事故について『非常に不安』55・3%、『ある程度は不安』32・8%と答え、『不安』が88・1%にのぼった。 『国内にある原発は今後、どうすべきだと思うか』と聞いたところ『運転しながら安全対策を強化していく』が56・2%と半数を超えた。『いったん止め、対応を検討する』は25・2%、『やめて、別の発電方法をとる』は14・1%だった」(東京新聞)
最後に参加された方から、いま上田のでんき館で上映している「ミツバチの羽音と地球の回転」など鎌仲ひとみさんの原発を考える映画の紹介がありました。
とても考えさせられる講演会でした。この講演会は次回は5月19日(木)夜7時から中央公民館で行なわれます。