父子並んで黙々と,ジュズダマの藁取り作業をおこなう

1999年06月28日 | タカシ
 唐突な話で恐縮ですが,実は父には時々一人だけで行う“密やかな楽しみ事”がある。それは何かと申しますると『ジュズダマの藁取り』であります。何じゃそれは?などと言われれば返す言葉もない。知っている方もおりましょうが一応説明しておくと,それはジュズダマ(イネ科の多年草)の硬く熟した苞の中に詰っている藁(というか内皮)をきれいに取り出すことです。単にそれだけ。そうさな,ちょうど“耳垢取り”のような感じだ。

 仕事に行き詰まって少々気が滅入ってきたとき,あるいは思考上の迷宮に迷いこんでこの先何をすべきか判断不能になってしまったときなど,ふと思い付いて机の引き出しのなかに大量にストックしてあるジュズダマの一つをやおら取り出して,クリップのピン先で中の藁をていねいに掻き出し始めたりする。何も考えず,ただただひたすらジュズダマに一点集中するわけで,作業中はほとんど無心の境地となる(生態学的に見れば,狩りに失敗したことを踊って誤魔化すミーシャみたいなものか)。当然ながら個々のジュズダマには個体差があるため,比較的簡単にキレイに取れるもの,なかなか上手く取れないものなど様々だ。いや,それなりに奥深い作業である。そうして暫くのあいだ沈黙の時を過ごした後,再び日常へと戻ってゆく訳であります。なお,そのようにして内部をキレイに仕上げられたジュズダマは,沢山ストックした後で糸を通して数珠を作るという訳では残念ながらない。キレイにしたらそれで,ハイおしまい。

 ところで先日,タカシが父の机の引き出しをあれこれ漁っているとき,このジュズダマを見付けた。そして「オトウサン,何これ?」などと尋ねてきたので,一応,正直に説明してやって,ついでに若干の模範演技なども(得意げに)見せてあげた。すると,タカシはそれに大変興味を覚えたようだ。

 その後時々,父の仕事場に入ってきては一人で勝手にジュズダマを取り出し,中の藁を苦心して取り出している。その有様を父は別に邪険にしたりもせず傍らで目を細めて眺めていたりする。終日雨降りだった昨日の午後など,仕事机の前に二人仲良く並んで黙々とジュズダマの藁取り作業を行っていた。時折父がタカシに作業のコツを指導する。そんな時のタカシは非常に素直な子である。

 ま,確かに変な親子に違いあるまい(他の2名はこんな我らをまったく鼻にもかけない)。性格というものは多分に先天的であり,顔や身体の造作などと同じく親から子へと遺伝しているものなんだなぁ,などとシミジミと感じ入る次第であります。
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