「地理オンチ」のクマさんを案じる

　夜10時近くに，タカシが通う小学校から連絡網の電話があった。何でも近所の山にクマが出たので，明日の祝日はくれぐれも気をつけるようにとのこと（ヲイヲイ，どこなんだ此処は？）。

　電話を置いてから，やおら地図を取り出して広げる。出没したのは弘法山界隈だという。ウチから車でほんの5分程の，山というよりは小高い丘が連なるようなところだ。桜の名所で標高はほんの200m程度，ぐるり周囲の山麓には住宅地が密集し，さらに一部の住宅群はすきあらばと斜面をじわじわ上りかけている。

　もしこの情報がガセネタでないとしたら（多分本当なのでしょうけれど），そのクマさん，はたして一体何処から弘法山までやってきたのだろう。なるほど，弘法山からは善波峠を経て，念仏山，高取山，そして相州大山（雨降山）方面へと尾根筋が通じているので，恐らくそっち方面から（何を血迷ったか）降りてきたのかな。まあ，それしか考えられない。正確な資料情報が今手元にないが，丹沢山塊のツキノワグマ個体群はせいぜい20～30頭程度だったと思うので，これは実に希有な偶然であると考えられる。

　しかし，クマにとって，それはなんとも困難な長い道のりであったろうと想像する。心細い旅路であったろうと同情する。まぁ，どこにも必ずいるんだよね，こういった地理オンチの子が（苦笑）。親のしかるべき教育が必要な所以であります。

　そして今夜，そのクマさんは，一体どこで心細い一夜を過ごしているのであろうか。もし私が米田一彦さんのような知識と技量と愛情をもっていたら，すぐにでも弘法山へと駆けつけるのに。そして，早く山へお帰り，と声をかけてあげるのに。残念ながら今の私にそれは叶わず，ただただ手をこまねくのみ。そして，彼もしくは彼女の身を心から案じるのみ。

　とまれ，間違っても猟友会の奴等の毒牙にはかからないように！　ガンバルンダヨ！