昨日,赤十字病院で人間ドックを受けた。年に一度の神聖なる祭事,ではないか,神妙なる通過儀礼,ノヨウナモノである。毎年,春先に予約して年末の12月上旬に受診することにしているのだが,今年ばかりは12月中は満杯で予約がとれず,年明けの1月下旬にまでズレ込んでしまった。1990年の人間ドック初受診以来,こんなことは初めてだ。そうか,人間ドックって,昨今チマタで大人気なんですねぇ。あるいは中人気くらいなのかも知れないけれども,この高齢化社会を支える医療システムのなかで,人間ドックという繁盛科目が病院経営の稼ぎ頭の一翼を担っていることは確かだろう(何しろ,ルーチンの流れ作業で大量の受診者を次から次へと高速処理できるし,それというのもドックってヤツは通常の医療とは逆に診療時間が短い方が受診者からは何故か喜ばれるし,そのうえさらに健康保険の適用外だし。。。)
朝,久しぶりに早起きすると,といっても目覚まし時計をセットしたのは6時45分だったが,その時間の室温は6.2℃だった。震えながら布団から出て窓のカーテンを開け,東つ方の空を寝ボケマナコで眺むれば,いまだ日ノ出前の空模様にて,彼方に望む弘法山の稜線の背景には薄墨色のCirrus(巻雲)が暗視野照明を当てられたように暁色に滲んでいた。身の引き締まるような美しい夜明けである。今日もさぞ良い天気になることだろう。窓の下を見れば道行く人がコートの襟を立てて足早に通り過ぎてゆく。その足取りから戸外のキビシイ冷気がいや増して想像される。この時間に家を出るということは東京方面にでも通勤するサラリーマン氏であろうか。毎日のお勤め御苦労様です,などと,寝坊助自営業者は独りごちるのであった。それにしても大寒小寒。冬場の早起きは身体に良くないゾ。
家から約5km離れた病院までは当然ながら自転車に乗って出掛けることにした。そして,この日の朝の寒さに備えて,昨晩,ネックウォーマーなんぞを調達しておいたのです。いえ何,《ホームセンターくろがねや》で買った580円の中国製安物ですけれど。それでも,あるとないとじゃ大違い,だろうと思いまして。
ところで,20年近くも人間ドック人生を送っていると,健診待合室でいろんな人とバッタリ遭遇することがある。だいぶ以前,某小説家(特に名を秘す)と一緒になったことがあった。なかなかに饒舌な方で(ドックの不安を紛らわすためだったか?),ちゃっかり近著の宣伝などもされてしまいましたですよ。 某有名老舗店の社長と一緒になったこともある。こちらは物静かな,とても慇懃な方であった。また,息子の同級生の父親と一緒になったこともある。お互いに少々気まずい思いをした。あるいは,我が家の数軒隣のオジイサンと偶然一緒になったこともある。何だか身体全体ボロボロの御様子で,こちらもさらに気まずい思いでありました。などなど。 幸い,今回の受診者は知らない人ばっかりでした。
結果については約2週間後に送られてくることになっている(それまでの期間は俎の上のコイ状態)。即日判明したこととしては「要経過観察」を2点ばかり指摘されたくらいで,ま,毎度のことであります。
その日の夜,アキラから,病院の結果はどうだったの? と聞かれた。 まぁ,今日のところはボチボチだねぇ。でも,大体からして,カラダのあっちこっちにガタが来てるし,おまけに世の中辛いことばっかりだし,もうあんまり長くないかも知れないなぁ。。。などと,さりげなく弱気な言葉を返した。いや,決して本心ではないのだけれども。
それから少しして,アキラがまた私の部屋にやってきた。そして,長椅子に深く座ると,何となく神妙な面持ちで何も言わずにじっとしたままだった。さて,私の「 iPod touch」 を使いたいのかな? あるいは「元気の素」の催促かな? そこで,そんな彼の気持ちを少しハグラカスために,最近読んだ内田樹の『下流志向』の話などを少しだけした。オトーサンと違って,アキラの人生はまだまだこれからなんだからね,何でもいいから目標を持って,やりたいことをズンズンやっていけば,きっとそのうち,何かが変わるかも知れないよ。。。
そしたら急に,涙ぐんだ様子で, 80才くらいまでは生きてね。 などとポツリ言われた。ああ,さっきの人間ドックの話を真に受けたのかい? ゴメンゴメン。 息子を悲しませちゃイカンイカン(汗)
朝,久しぶりに早起きすると,といっても目覚まし時計をセットしたのは6時45分だったが,その時間の室温は6.2℃だった。震えながら布団から出て窓のカーテンを開け,東つ方の空を寝ボケマナコで眺むれば,いまだ日ノ出前の空模様にて,彼方に望む弘法山の稜線の背景には薄墨色のCirrus(巻雲)が暗視野照明を当てられたように暁色に滲んでいた。身の引き締まるような美しい夜明けである。今日もさぞ良い天気になることだろう。窓の下を見れば道行く人がコートの襟を立てて足早に通り過ぎてゆく。その足取りから戸外のキビシイ冷気がいや増して想像される。この時間に家を出るということは東京方面にでも通勤するサラリーマン氏であろうか。毎日のお勤め御苦労様です,などと,寝坊助自営業者は独りごちるのであった。それにしても大寒小寒。冬場の早起きは身体に良くないゾ。
家から約5km離れた病院までは当然ながら自転車に乗って出掛けることにした。そして,この日の朝の寒さに備えて,昨晩,ネックウォーマーなんぞを調達しておいたのです。いえ何,《ホームセンターくろがねや》で買った580円の中国製安物ですけれど。それでも,あるとないとじゃ大違い,だろうと思いまして。
ところで,20年近くも人間ドック人生を送っていると,健診待合室でいろんな人とバッタリ遭遇することがある。だいぶ以前,某小説家(特に名を秘す)と一緒になったことがあった。なかなかに饒舌な方で(ドックの不安を紛らわすためだったか?),ちゃっかり近著の宣伝などもされてしまいましたですよ。 某有名老舗店の社長と一緒になったこともある。こちらは物静かな,とても慇懃な方であった。また,息子の同級生の父親と一緒になったこともある。お互いに少々気まずい思いをした。あるいは,我が家の数軒隣のオジイサンと偶然一緒になったこともある。何だか身体全体ボロボロの御様子で,こちらもさらに気まずい思いでありました。などなど。 幸い,今回の受診者は知らない人ばっかりでした。
結果については約2週間後に送られてくることになっている(それまでの期間は俎の上のコイ状態)。即日判明したこととしては「要経過観察」を2点ばかり指摘されたくらいで,ま,毎度のことであります。
その日の夜,アキラから,病院の結果はどうだったの? と聞かれた。 まぁ,今日のところはボチボチだねぇ。でも,大体からして,カラダのあっちこっちにガタが来てるし,おまけに世の中辛いことばっかりだし,もうあんまり長くないかも知れないなぁ。。。などと,さりげなく弱気な言葉を返した。いや,決して本心ではないのだけれども。
それから少しして,アキラがまた私の部屋にやってきた。そして,長椅子に深く座ると,何となく神妙な面持ちで何も言わずにじっとしたままだった。さて,私の「 iPod touch」 を使いたいのかな? あるいは「元気の素」の催促かな? そこで,そんな彼の気持ちを少しハグラカスために,最近読んだ内田樹の『下流志向』の話などを少しだけした。オトーサンと違って,アキラの人生はまだまだこれからなんだからね,何でもいいから目標を持って,やりたいことをズンズンやっていけば,きっとそのうち,何かが変わるかも知れないよ。。。
そしたら急に,涙ぐんだ様子で, 80才くらいまでは生きてね。 などとポツリ言われた。ああ,さっきの人間ドックの話を真に受けたのかい? ゴメンゴメン。 息子を悲しませちゃイカンイカン(汗)