「金モウケ」の経済ではなく「シアワセ」の経済の問題

2001年05月23日 | 日々のアブク

 先週末,四級小型船舶免許の更新手続きのため,お隣の平塚市まで出掛けた。ちょうど1年ほど前,やはり平塚市にある税務署まで自宅から遠路はるばるマウンテンバイクに乗って出掛けたことがあったが(2000/6/16参照),今回は長い出張から戻ったばかりでやや疲れていたこともあり,往路・復路とも路線バスを乗り継いで行くことにした。

 実はこの春,我が家のすぐ近くを経由する新しいバス路線が開通したので,初めてそれを利用した次第である。今までバスが通っていなかったのが奇妙に思えるくらいの立派な道路なのだが,その昔バス会社の経営戦略か何かで振り落とされたのか,あるいは歴代の地元政治家が非力・怠慢であったのか,それとも単にドコニデモアル「田舎の不幸」に過ぎぬのか,ともかく不思議と長い期間にわたり公共交通機関からは見放された地区であった。ジジ・ババ・コドモ,もとい交通弱者にとっては少々辛い土地であった。もっともウチなどはまだいい方で,従来のバス停までは約5~6分ほど歩けばよかった。しかしながら,丹沢山麓の山裾により近いところに住まう人々にとっては,これまではバス停まで10分~20分も歩かなければならなかったわけで,その日々の苦労は察するに余りある。公共交通体系網から漏れ落ちた,いわば忘れられた土地(by日本残酷物語)であったわけで。

 それがおよそ1~2年ほど前からだろうか,地域の自治会連合などの主導による熱心で根気強いバス路線誘致運動ならびに請願署名活動などが展開されるようになり,遂にはその努力が報われて今日の佳き日を迎えることができたわけである。そりゃあ,家のすぐ近くにバス停が出来る(ウチなんぞ徒歩30秒!)なんてぇことは正直なところ誰だって嬉しいもんです。たとえ,そのバスの本数が日中は1時間に1本ポッキリであるとしてもネ。

 何の話だったか。ハイハイ,そんなわけで,そのピッカピカ・バスに乗って平塚まで出掛けたという次第であります。以下は,その折りのちょっとした感想,というかヒマにまかせた単なるメモ書きである。

 ウチのすぐ前のバス停から終点の秦野駅まで,バス停の数は合計9箇所ある(時間は約10分,料金は190円)。また,始発地からウチの所までには6箇所のバス停がある。つまり,この新路線(仮にA路線としておく)全体で計15箇所のバス停があることになる。その日,私がバスに乗車したとき,既に乗っていた客は大人6名であった。その後,3つ目のバス停で大人1人が乗り,4つ目のバス停で1人が降り,残りの乗客はすべて終点の秦野駅で降りた。すなわち,天気の良い土曜日の午前11時台におけるA路線の利用客はトータルで大人8名程度,それによってバス会社が得たであろう営業収入は約2,000円前後と推定された(営業経費は敢えて算出しない)。バスの稼働時間は約20分であるから時給計算にすれば6,000円程になる。要するに,こんなのが座敷ボッコです。じゃなかった,こんなのが地域に強く望まれた挙げ句に新設されたバス路線の実態です。まるで「弱者」の将来を暗示しているかのごときで,ヤレヤレ,先が思い遣られるってもんだ。

 その後,今度は秦野駅から平塚駅までの別の路線バスに乗り換える(こちらはB路線としよう)。このB路線の路線距離はかなり長く,バス停の数は合計33箇所ある(時間は約50分,料金は500円)。以下,分かりやすいように簡単な表にして示す。


バス停No. /乗車人数/下車人数/乗客数
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    1:   14/0/14
    2:   2/0/16
    3:   2/0/18
    4:   0/3/15
    5:   0/2/13
    6:   0/2/11
    7:   0/3/8
    8:   0/0/8
    9:   0/1/7
   10:   0/1/6
   11:   1/0/7
   12:   3/0/10
   13:   1/0/11
   14:   1/0/12
   15:   0/0/12
   16:   2/1/13
   17:   5/0/18
   18:   3/0/21
   19:   0/0/21
   20:   2/0/23
   21:   2/0/25
   22:   0/1/24
   23:   0/0/24
   24:   0/0/24
   25:   1/0/25
   26:   1/0/25
   27:   0/0/25
   28:   0/0/25
   29:   0/1/24
   30:   0/0/24
   31:   0/2/22
   32:   0/7/15
   33:   0/15/0

     合計40名 平均17名


 あ,かえって判りづらいリストになってしまい恐縮です。とまれ,バスの稼働時間は約1時間。利用客は延べ40名。営業収入はヨクワカラナイが10,000~15,000円程度じゃなかろうか。また,バスの乗車定員が50名とすると当該バスの稼働率は約34%,すなわち3分の1程度と推定される。主要幹線道路を経由し比較的利用客が多いと思われるB路線にしてこのテイタラクである。何故か? 端的に申して,それはバス料金が高いからだ。いや,実際の金額云々の話ではなく,利便性・快適性を含めたトータル感覚としての受け取り方の問題である。少なくとも日常的にマイカー依存の強い人々はそう感じているに違いない。ことほどさように今日びにおけるバス会社の経営もなかなか大変である。車内でチョコやオセンベも売りたくなるってもんだ。

 はるかな昔,渡辺一夫先生(仏文学者にあらずして地理学者)に伺った話であるが,イタリアのどっかの都市でのこと,市街化地域内の路線バスなんてどうせ慢性的な赤字を抱えるのが宿命なんだし,けれどその一方で公共性は非常に高いもんだし,だったらいっそのこと全て無料にしちまえ! 町中を縦横に巡る道路は全て無料なんだから,それと同じで路線バスも全て税金でまかなえばいいじゃないか,といった決断をした自治体があったという(ホントかどうかは寡聞にして知らないけれど)。実に正論でありましょう。

 要するに,地域経済の問題である。それも「金モウケ」の経済ではなく「シアワセ」の経済の問題である。そうやってシアワセの視点で町づくりをしてゆけば,ちったあ「長生き」できるかも知れない。いや,ジジババの話ではなく町の話でありますが(なーに言ってんだか)。
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