飛弾高山で「ドリカム」聞いて悪いか!

2000年11月02日 | 歌っているのは?
 先月の下旬,岐阜県及び長野県方面に一週間ほど続けて出張した。どちらも紅葉期の山間地域における渓流魚の調査である。現在私が抱えているそのような境遇というか生業は,しばしば人をして羨みの言葉を投げかけるに相応しいようだ。なかなか結構なお仕事ですな! いやいや,別に物見遊山気分で出掛けているわけでは決してなく,イワナやアマゴの産卵期がちょうど紅葉の時期に一致するため,それを逃しては仕事にならないという次第だ。一応は早朝7時前から場合によっては夜10時過ぎまで,冷たい流れに浸かりながら黙々と額に汗して働いているのですよ。

 1日の仕事が終わって夕刻ないしは夜遅く山中から市街地の宿へと戻る。といっても国道沿いの素っ気ないビジネスホテルである。その町は小京都の異名を持つ飛弾高山市であったりする。天下に名高い第一級の観光都市,しかも秋の観光シーズン真っ盛りとあって,恐らく町の中心部の通りのあちこちには夜遅くまで多数の観光客の群がゾロゾロゾロゾロ右往左往しているに違いない。客層は中高年が主体のようだが若いオネーチャンの「るるぶ旅」(古いか?)も結構多く,さらにガイジン(=欧米人)の姿も少なくない。何せごく小さな町なものだから,例えば京都のように観光客が各所に拡散することがない。上三之町,宮川沿い,陣屋前などは特に顕著な集積度を示す。この時期における当地の人口帰化率,すなわち在来種(原住民)を含めた全人口に対する外来種(観光客)の割合は恐らく30~40%近くになるのではないかな。

 町はずれのビジネスホテルに滞在する身としては,しかしながらそれらの動向とは全く無縁である。周囲の状況はごく普通の地方都市のそれと何ら変わることがない。去年から引き続いての調査で,高山市へ来るのはこれで6回目になるが,現地においてはただひたすらコツコツと仕事に励み,つかのまグッタリと身体を休める,それの繰り返しである。

 この出張ではドリカム Dreams Come Trueの歌をよく聴いていた。たまにはメジャーもいいんではないかい?という訳で。どちらかというと《Ring Ring Ring》とか《決戦は金曜日》とか《LAT. 43°N》なんていうアップ・テンポの曲が好みであるが,《未来予想図Ⅱ》とか《LOVE LOVE LOVE》とかも無論悪くはない。いかにも「元気印のオネエチャン」といった感じの吉田美和の凛とした伸びのある歌声に,日中くまなく川を歩き回って憔悴しきった体は,いっとき新たなるエネルギーを授けられ,脆弱な身体器官の綻びがカリソメながらも修復される。ハイオク満タンOK!といった感じで。それは昨今ハヤリの「癒し系」などという軟弱的装置とは少々異なる心地よい効能をもたらす。


  山へ行こう 次の日曜 昔みたいに
  雨が降れば川底に沈む橋越えて
  胸まである草分けて ぐんぐん進む背中を
  追いかけていた 見失わないように
  抱えられて渡った小川 今はひらり 飛び越えられる
  
  一緒に行こうよ コクワの実 また採ってね
  かなり頼れるナビゲーターになるよ


 彼女の身元履歴などは不詳にして全く与り知らぬが,勝手に想像するに,何となく西日本は瀬戸内地方あたりの小都市で生まれ育った利発で多感な娘,といった印象を受ける(違っていたら御免なさいね)。変に斜に構えたところや暗いところがなく,強さとひたむきさ,時に弱さをも併せ持ち,愛と夢と希望,それらを真っ正直に歌う。そして,そのような背景にはいつも等身大の風景と優しい自然が息づいているように感じられる。なるほど「夢は正夢」とはなかなかに上手いネーミングだ。

 それにしても,例えば高山市を訪れる「るるぶネーチャン」達がこんな歌をMDなんかで聴いてたとしたら,それはそれで少々ガックリしますけどね。ま,メジャーの宿命かな。
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