カルトーラ,その晩年のライブ

2001年03月29日 | 歌っているのは?
 先日,カルトーラ Cartolaの晩年のライブ録音CDをインターネットの「ヤフー・オークション」で入手した。落札価格は1,000円ポッキリだった。音楽CDの出品物をあれこれ漫然と眺めているとき,洋楽のジャンルで《 CARTOLA/LIVE 》なるタイトルが目に付いたので,ほう,これは珍しいとばかり御祝儀代わりに1,000円入札をしておいたら,その後誰も入札せずに結局私が落札してしまった次第である。「完全限定盤」と帯にあるので今では絶版になっているモノなのかも知れない。なかなか良い買い物をした。それにしても何ですな,チャラチャラ音楽産業華やかなりしこの御時世にあってカルトーラなんてやはり誰も見向きもしないのかネ。まぁオークションに出す方も出す方ですけどネ(人のことを言えた義理ではないが)。ちなみに,出品者は東京都世田谷区在住の女性でありました(年齢不詳)。

 1978年12月,サンパウロ市内のキャバレーでのライブだそうだ。時にカルトーラ70才。CDをセットしてスイッチ・オンすると,私にとってはずっと以前から馴染み深い歌声が,シンプルなギターの音色を背景にシミジミと囁くように呟くように語りかけてくる。目を閉じてそのオジイサンの弾き語りの様子を静かに思い浮かべる。ライブならではの緊密な空気の支配する,しかしあくまで悠々たる時間の流れに,波間を果てもなく漂うプランクトンのように,あるいは葉っぱのフレデリックのように我が身を委ねるその心地よさは何とも言葉にはいい尽くせない。

 ライナーノーツ氏によれば,若い頃のカルトーラは不遇の時代が長く続き,いつだって金にピーピーしていたそうだが,60過ぎてから世間的にも広く認められるようになり,またレコードもかなり売れて,晩年にその絶頂期を迎えたという。「今でも,毎日新しいことを覚える。きっと,これから100才までは,いいことだらけだろう。」 そんな科白を残しながら,けれどその2年後にはアッサリと世を去ってしまった。終わりよければすべてよし,ってわけか。


  モーホの丘の夜明けは美しい
  泣く者はなく 悲しみもなく
  打ちのめされた者もいない
  太陽はとてもきれいで
  生きとし生けるものは すべて微笑み
  その夜明けを染めあげる


 CDの最初の曲,ファヴェーラ(貧民窟)の夜明けを唄った歌だ。明けない夜はない。新しい生のはじまり。優しく,あくまで優しく,心に沁みこむ,沁みこむ。世の中まだまだ捨てたモンじゃないさ。人生の応援歌。抒情的薬局。慈愛はその鍵だ。夢よ,もう一度! (なーに言ってんだか)
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