巨大石鹸箱が街中を徘徊している

2011年02月06日 | 自転車ぐらし
 なにも今にはじまったことではないが,私どもが暮らす町の其処彼処を大きな石鹸箱が日々めまぐるしく右往左往している。もちろん,石鹸箱のみならず,棺桶や魚雷や靴ベラやビーチサンダルや栗キントンやアルマジロ等々も右往左往しているのであるけれども,ここでは特に石鹸箱に着目する。たぶん私自身の加齢現象からくるものなのだろうが,そのことが最近ヤケに鬱陶しく感じるようになっている。

 その石鹸箱は,色はだいたいが白くて,表面はツルツルしていて,サイズは巨大で,しかも不格好だ。具体的な特性を述べると以下のとおりである。

 サイズは,大きいもので縦×横×高さが500cm×200cm×200cm程度だ。なかには中型,小型の石鹸箱も混じっており,小型のサイズは350cm×150cm×150cmくらいだろうか。

 色は白色が多いのだが,しばしば黒色の石鹸箱も混じる。移動時における両者の性格はかなり異なっており,ステレオタイプな言い方をすれば,白色石鹸箱は「魯鈍」,黒色石鹸箱は「剣呑」である。前者はアベル,後者はカインとでも例えたらよろしいか。

 その表面は一様にツルツルしていて一見すると大変キレイである。太陽光をクリアに反射させるその外観は規格工業製品のサッパリとした美を感じさせる。なかにはホコリにまみれ汚れ煤んだものも時折散見されるけれども,それらは業務用石鹸箱であることが多い。遠目にはプラスチッキーな質感であるが,その重量は軽いものでも数100kg,なかには2トンを超えるものも珍しくないという。大地を移動する陸生哺乳類でそれに対抗できるのは長鼻目に属するアフリカゾウLoxodonta africanaとアジアゾウElephas maximus,あるいは奇蹄目に属するシロサイCeratotherium simumくらいではないだろうか。

 それらの石鹸箱のなかには当然ながら石鹸箱そのものを移動させるための石鹸本体,すなわち操縦者の存在が必要とされる。それを仮にC-3POとかR2-D2とかに想定してもよいのだが,現世においてはヒトがその役を務めている。それらの石鹸本体がどんな香りを放っているかはツマビラカでない。多分は千差万別なのだろう。

 石鹸箱の移動時において,その内部に入り込んだ,というか封じ込められた操縦者は,概してノンシャランスでリラックスした,誤解を恐れずに言わせていただけば,いささか無防備で品性に欠ける風貌をしているように外見上は観察される。それがためか,石鹸箱の移動形式には安定性を欠くものがしばしば認められる。そしてこれは街中においては極めて危険な存在である。その具体例を個人的経験から以下に述べておこう。

 昨日,私が幹線道路を自転車で走行中のこと。信号機のある交差点にさしかろうとしたとき,対向の右折車線にいた大型トレーラーがゆっくりと右折をはじめた。それをやり過ごして当方は直進したのだが(もちろん前方は青信号である),その大型トレーラーの尻を慌てて追いかけるようにして,少し離れた後方から白い大きな石鹸箱がスピードを上げて私の直前で右折したのだ。まさか曲がってくるとは思わなかったのでこちらも少し慌てたが,日頃,そのような石鹸箱の理不尽な生態については十分に織り込み済みなので,とっさに回避行動をとって事故には至らなかった。ケド,正直かなり危ないところだった。現代クルマ社会において街中が日々戦場であることは今さら言うまでもないことだが,自転車走行時,とりわけ交差点内においては十二分に注意力を働かせる必要があることを改めて痛感した次第である。そもそも,古今東西を問わず,交差点(carrefour)ないし十字路(croisement)というエリアが常に拮抗,摩擦,ないし衝突の危険性を孕んだ場所であったことはこれまでに数多の歴史が示してきた訳でして。。。

 ちなみに,そのときの白い石鹸箱の操縦士は御年30~40代?の女性で,曲がりざまに一瞬,アチャッ!といった顔つきをした。さらに申せば,何よ,アブナイ自転車ねぇ!といった顔つきにも見えた。交通弱者の立場から敢えて言わせていただくと,それは不敵な,醜い面構えといってもいいくらいだった。ユーメージン(=公人)に喩えれば,そうさな,外面的弱点をアカラサマに指摘されてとたんに不機嫌になったハヤシマリコ,あるいは金銭的問題を鋭く追求されて急にフテ腐れるオオタフサエ,そんな感じでありました。石鹸箱に入ったハヤシマリコ。いくらなんでもこれはチョット御勘弁願いたい。最近ではこういう手合いをスイーツ(笑)と称するらしいが,私からすれば,粗悪な石鹸箱に入った粗悪な石鹸,くらいに指摘しておきたい。見た目ツルツルだけど極めて粗悪。そのカオリは。。。 想像するのもオゾマシイ。

 それにしても,最大不幸社会の源泉たるこのような石鹸箱が絶滅する日が,やがていつかは訪れるのだろうか? ダロウカ?
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